2008年冬の乗鞍
前川渡の滝、善五郎の滝、番所大滝
 





前川渡の滝
この写真は滝の一部である。
一番水量が多い場所だ。
とにかく豊富な湧き水が勢いよく噴出している。
サラサラと自然落下している湧き水を想像すると
かなりイメージが違う。


上の写真はシャッター速度を遅くしているが、
見た目はこの写真みたいな感じ。
ホースがやぶれたのか、という箇所が
何箇所かあって、ドバドバ出ている。



すぐ下は落石の積み重なる斜面。


大きさ比較。
落差3メートルとあるが、それほど無いかも。
その代わりに幅はとてつもなく長い。





善五郎の滝
凍りつき具合は今ひとつだが、
それでも乗鞍の冬の厳しさを感じさせる。



右に回りこんで滝の横顔を撮影。
この時、ゴゴっと音がして、
氷が崩れた様子だったので、
ものすごく怖かった。



凍りきっていないので、滝つぼが見える。
ここに落ちたら間違いなく命はない。
この世のものとは思えない色をしていた。



大きさ比較。
もとい、危険ま真似をしている人。
彼のすぐ足元にひび割れがあるのが
分かるだろうか。
この時は割れなかったか、
氷瀑を訪れる時には充分に注意してほしい。



氷の衣装をまとった木々が
遊歩道のあちこちにあった。





番所大滝
2006年に訪れた時よりも
実は氷が多かったりする。
あの時は積雪があったのだが、暖かかったので
薄い氷が落ちた後だったのだろう。
なんとも不思議な姿だ。


装飾額縁の中の滝。


凍りついた木々も滝を見ている。




八坂大滝
オマケです。
凍っていないと、こんなに細長い滝。
ここまで見事な直瀑も珍しいかも。



県道の橋の上から撮影。
こうやって見ると、滝のすぐ下も崖になっている。
2004年の氷瀑の様子はこちら
2006年の氷瀑の様子はこちら
2008/1/13   前川渡の滝 (落差3m) 
             善五郎の滝 (落差22m)
              番所大滝 (落差40m) 長野県松本市
                      
氷瀑が見たい。
2007年の冬は暖冬で、氷瀑らしい滝はほとんど見られなかった。氷瀑の感動をいいかげんに忘れそうになっている。
そんなこんなで、適当な寒気が来た2008年、三連休ということもあって、もうそろそろ凍っているんじゃないかと長野の氷瀑に行く計画をたてた。
氷瀑といえば、三滝である。あの大禅の滝のまつぼっくり状の造形は何度見てもいい。ところが、前もって北相木村に問い合わせたところ、まだまだ5分の1ねも凍っていないとのこと。それでは見に行く甲斐も無い。
では、どこに行く?あの北相木の滝が凍っていないとしたら、たぶんどこの滝も凍っていないだろう。氷瀑は諦めるか?
本当に前日の夜まで行く滝がきめられないでいた。どうせ遠征するなら大きな滝がいい。ついでに言えば、どうせなら行ったことのない滝に行きたい。そんな贅沢な希望を入れていくと、本当に決められないのである。で、行ったことの無い滝という条件をはずして決定したのが乗鞍の滝だった。
ま、凍っていないとしても、あの滝たちは見た甲斐のある滝だし、もし上手いこと凍っていたら儲けもんだし、それに三本滝の駐車場まで行けたとしたら、で、雪がコチコチに凍っていたとしたら、三本滝まで行っちゃうってこともできるじゃないか。かなりスケベ根性丸出しの決定で、1月13日は乗鞍に向かうことになった。

新潟から乗鞍は、実は遠い。なにせ松本までが遠い。そこからさらに国道158号野麦街道が長い。前日、風邪でダウンしていた私はほとんど自動車の中で朦朧とした状態でいた。新潟から長野に出るまで、上信越自動車道はばさばさ雪の降る状態で、長野の好天の予報が信じられなかったが、長野インターを越えるあたりから空が明るくなってきた。高速道路を下りて、いよいよ乗鞍に入る県道84号に乗ったあたりではもうすっかり晴れ渡っていた。
さて、この県道に入ってすぐの場所に前川渡の滝があると山と渓谷社の「日本の滝@」(北中康文)に紹介があった。本日最初の滝はそれと決めていた。
前日に詳しい場所を調べようとネットで検索してみたら、どうも今年の元日にテレビ東京の系列の「水百景」という番組で紹介されたらしく、その番組のページかそれを見た人のブログくらいしか出てこない。ちっとも詳しい場所がわからない。
でも、まあ、「日本の滝@」に文字で説明されているし、行けばわかるだろうと思っていた。それに、何度か乗鞍に行っている間に、あれは滝なんじゃなかろうか、と思っていた場所があるのである。
道から前川渡の滝は見えない、と書いてあったが、滝は見えなくても、滝の下の流れが道に届いているはずなのである。
現地に行ってみて、その怪しい場所と本の記述の場所が一致したので、間違いなくその流れの上流に前川渡の滝があると分かった。
が、これがまあ、すごいこと。入り口は金網が張り巡らされ、流れを横切るようにロープが何本も渡されて、「落石の危険があるので立ち入り禁止」とある。とにかく、絶対に入って欲しくないのだという意思表示がしっかりしている。
  
金網と立ち入り禁止看板。

  
綺麗な苔むした岩と湧水の流れ。
この金網をよじ登って行くやつはそういないだろう。
我々もやめようか、と話し合った。うっすらと雪も積もっているし、なにしろ、流れの角度が急なのだ。
だが、金網をたどって行くと、なんと斜面に取り付ける場所があるではないか。
「どうする〜?」
と、言いながら手袋をはめている私。
「行く気満々じゃないか」
と、突入するダンナ。
決して真似はしてはいけません。
  
いざ、突入。
斜面は下から見たとおり、かなり急で、しかも角張った一抱えほどの石がゴロゴロした状態だ。その上にうっすら雪が積もっていて、足場の選択に困る。
それでも、むしろ雪が覆っているおかげで怖さ半減、ジャングルジムよろしく登って行く。しばらく登ると、湧水という前川渡の滝の水のせいか、むしろ雪はなくなって、苔むした岩の間を水が流れる場所になった。
    
  
急な斜面を登る。時々塩ビ管で取水していたらしい跡がある。
    
  
岩の間から水が流れて行く。岩の斜面は続く。
  
  
岩の途切れた突き当たりが前川渡の滝である。
突き当たりに水が垂直に落ちているのが見える。
前川渡の滝だ。
少し岩が細かくなって、登り辛くなったが、なんとかその水の場所までたどり着いた。
おお、本当に滝がいきなり岩盤から出ている。
なんだか、群馬の白糸の滝を思い出す。あの滝はとりあえず滝つぼというか水の溜まりの中に落ちていたが、この滝はそのまま急な落石だらけの斜面が下り落ちる。
  
水は斜面を流れ落ちる。
それにしても、なんて横に長い湧水だろう。ざっと見て20メートル以上はある。(一番下に横長の写真をはりました)
岩盤をちょっとくりぬいて、上のほうに20メートルの穴あきホースを渡して水道の蛇口をひねったみたいな落ち方をしている。
一部はビュービューと噴出しているくらいだ。
しばらく写真を撮影して、さて戻ろうと下を見た。げ、登って来た時よりも斜面が急だと感じる。しかも、落石の危険がものすごくひしひしと迫って来る風景だ。はるか下に県道が見える。よく登った、この私。
落石が怖いので、私とダンナは別々の離れたルートを下りることにした。上の人が石を落として下の人がつぶれたら大変だ。
幸いなことに自分が転げ落ちることも、石を転がり落とすこともなく県道に復帰することができた。
近くのチェーン着脱スペースに止めておいた自動車に戻り、他の自動車が見咎める前にさっさと乗鞍方面に退散した。

とにかく、県道84号を行けるところまで行ってみよう。自動車をどんどんと進めた。真冬ではあるが、スキー場があるので、けっこう自動車の数が多い。番所大滝の駐車場の前を通り過ぎ、道がぐっと細くなって、善五郎の滝入り口を通り過ぎると、いきなりその自動車が渋滞した。え、何、と思っているとスキー場の駐車場だった。除雪はここまでか、と思ったが、さらに先がある。行けるじゃん、と進めて行くと、すぐそばの休暇村でぶっつりと道が無くなっていた。うーむ、さすがに三本滝までは除雪されていなかったか。
そんなわけで真冬の三本滝はあっさり諦め、すぐ下の善五郎の滝入り口の駐車スペースに行く。来る時にすでに見ていたのだが、5台ほどとめられるスペースにはきっちり自動車が止められて一杯だった。こんなに善五郎の滝まで行っているのか。カーブ近くの路肩のスペースがあったのでそこに入れる。同時に駐車した人がスノーシューの準備をして滝に向かうのが見えた。そうか、スノーシューハイクか。
とりあえず、お昼も回っていたので、コンビニで買ったパンだけ食べて腹ごしらえしてから、我々も長靴に簡易スパイクをつけて遊歩道に向かった。
  
よく晴れた青い空に白い雪と白樺。
思ったとおり、雪は寒さで固まっていて、長靴でも全然もぐらない。ただ、踏み跡からはずれると、ズボッと深々とした穴が開いているので、道ははずれないように歩いた。
少しすると、子供を数人つれたスノーシューの人たちが戻って来た。この道は子連れのスノーシューには実にちょうどいい道と言えるだろう。
前日から風邪だった私には氷点下7度の風が冷たいというよりは痛い。大判のマスクを用意していたのだが、これがメガネをしている身にはまったく不都合にできていて、あっという間にメガネが雲って前が見えなくなるのである。息を口で吸って鼻で吐けばそれほど曇らないと気がついたか、そんなことしたこともないので、かえって呼吸困難になってマスクをはずしてしまった。ああ、鼻痛い。
雪というよりは冷たい空気に四苦八苦しながら、なんとか滝前の橋に到着。ここから滝まで行くのに鉄製の階段を登るが、その上で渋滞していた。階段を下りたいスノーシューの子供達を大人が補助しているようだった。いっしスノーシューを脱いだほうがその階段は下りやすいと思うのだが、だいぶ長い時間をかけて一人一人下ろしていた。
途中で我々は登らせてもらい、滝前に行く。
  
雪で埋まった階段を下る。

  
木の枝も氷の花をつけている。
あらまあ、全く凍っていないと予想していたのに、割と凍っているじゃないの。そりゃあまあ、前に来た時よりは水流の部分が多いし、滝前の氷がゆるそうで、とてもその上に乗って前まで行くつもりにはなれない。(2006年の冬のレポはこちら)
でも、厳冬期に善五郎の滝に来たのだ、という感じにはなれた。
ビデオで滝を撮影していた人がいたので、とにかく静かに滝を堪能。
滝水が舞い上がり、冷たい空気に凍って細かい粒になって光っているのが綺麗だ。滝の周りの木々は、全て凍りついた感じになっていた。
帰り際、あとから来たカップルが滝前に進んで行くのが見えた。我々は橋の上から見ているので、滝前のひび割れた状況が見てとれて、ものすごく危険だと思った。が、幸いなことに滝前の氷は割れずにいた。何事もなかったのでよかったのだが、冬に限らず毎年無謀な観光客が滝で事故を起こしている。前川渡の滝に無理やり行った自分達が言っても説得力は無いだろうが、自分の命は自分できっちり守って欲しい。たとえ滝前で死んでも、それは滝のせいではなく、無茶をした自分自身のせいである。

腹も減ったので自動車に戻り、今度は番所大滝を目指した。あそこの滝前のあずまやで前回も昼食にした。滝を愛でながらラーメンを食べよう。あ、いや、コーヒーを飲もう。
番所大滝の駐車場に着くと、ここにも一台の自動車が。
ここはスノーシューで行くような場所じゃないので、滝好きかしらん。
自動車をおりて、遊歩道のほうに行くと、冬季閉鎖の文字。げっと思っていると、それは番所小滝方面に行く道だった。思えば乗鞍の滝は今度で3度目だが、番所小滝は見たことがない。ま、真冬に行く滝でもないだろう。
我々は番所大滝方面の階段へ行く。
    
  
小滝方面は冬季通行止め。大滝に続く九十九折の階段。
前に来た時ほど滝に下って行く階段は凍りついていなかったが、それでも手すりにつかまりながらのろのろと下って行った。だいぶ下った場所でカメラをかついだ人とすれ違った。彼が駐車場の自動車の持ち主か。
滝見台まで行くと、先に着いていたダンナがどういうワケか滝に背を向けて写真を撮っていた。
「何があるの?」
「凍ってる」
何が凍っているかって、あずまやにあるテーブルと椅子が凍っているのだ。
コンクリートで作った木の切り株を模したテーブルの上に厚さ1センチはあろうかという氷のテーブルクロスがかかっていた。椅子には氷のクッションである。冷たくて固いクッションだ。
   
  
凍りついたテーブル。お湯のやかんを乗せてもまだ氷が溶けきらなかった。
こりゃすごい。
上にカップを置くとすすーーーっと滑って行く。
椅子の上には折りたたみのアウトドアクッションを置いて座ったのだが、これまた座り方が悪いとすすーーーっと滑る。座れない。
なぜかカップラーメンの発泡容器は滑らない。すぐさめないし、発泡容器、すごい発明だ。
あずまやの屋根といわず、手すりといわず、細かいつららがフリルのようについていて、そこから見た滝が装飾の額縁の中に入っているように見える。
水が凍るというのは、面白いことだなぁと、つるつる凍る椅子に座りながら思う。
番所大滝は、これから凍るぞ、という感じで、その分水流の向こう側の氷の表情が多彩で綺麗に見えた。
深い滝つぼの水は完全に0度で、滝底に白い凍った部分も見えたりした。
これで乗鞍の滝は終了。あとは帰り際に安曇野の滝によって近くの温泉に入る予定だ。
最後の目的だった安曇野の大水沢の滝は除雪が滝までさせていないので行き着くことができなかった。仕方がないので温泉だけ入って、本日の滝めぐりは終了である。(温泉のレポはこちら
だが、ちょっと時間が余ったので、寄り道して、八坂村の八坂大滝へ。この滝も冬にはぐずぐずに凍るのだが、多分凍っていないだろう。
滝前に行かずとも、県道の橋から滝の姿は遠望できる。
予想通り、というか、予想以上に凍っていなかった。まったく氷のかけらもなかった。もし、ちょっとでも凍っているみたいなら滝前まで行くつもりだったが、その必要もないだろう。あっさりと自動車に戻り、高速道路まで急ぐことにした。
ここまでは順調だったのだが、ここから高速道路の更埴インターに出るのに一苦労した。(更埴が通勤割引内のインターなのよ)ナビに案内させたら、どうしても麻績インターから高速に乗れというのだ。それでは通割りが使えないじゃないの。国道19号から行けばなんてことはなかったのに、ナビと喧嘩しながら行ったので国道403号の猿ケ馬場峠を越える羽目になってしまった。とんでもない峠でした〜。おかげで帰宅時間が1時間遅くなって、留守を守る猫たちのブーイングを浴びることになった。
連休の中日じゃないとできないことだわね。
そんなわけで、日帰りのわりには、いい滝を堪能できた滝めぐりだった。
交通
  前川渡の滝  あれだけはっきり立ち入り禁止と書かれているので、詳しい場所は伏せます。が、「日本の滝@」をよく読むとだれでも行けます。また、本文中の写真を見れば、特定できてしまいますぅ。
  善五郎の滝、番所大滝  長野自動車道松本ICをおりて、国道158号線で上高地方面に進む。スイカの名産地波田町を通り過ぎると、道の駅「風穴の里」があるので、そこで情報収集をするとよい。
途中、トンネルとトンネルの間で左折して乗鞍高原に向かう道に入る。県道84号である。乗鞍高原、と必ず道案内があるので、見落とさないようにすれば間違わない。
国道158号線がわから行くと、最初に番所大滝に出る。JAなどがある建物が立ち並んだ場所であるが、看板があるのですぐにわかる。一応有料駐車場になっているが、管理人などはいない。トイレはとても綺麗で、暖房が入っているので、冬場はありがたい。ぜひ利用したい。
  
駐車場からは階段で延々と下る。滝見台の下のスペースへは、踏み跡があるので行けるが、大変危険なので、自己責任で行動するように。冬場は行かないほうがよい。
県道84号をさらに進み、いくつかのカーブを曲がったあたりに右側に善五郎の滝の駐車スペースがある。ここから行くと滝前に出られる。もう少し進んで、すずらん橋の手前左がわにもかなり広い駐車スペースがある。ここのすずらん橋がわからも善五郎の滝に行ける。こちらからはかなり高い位置にある滝見台に先に行くことができる。
冬場は休暇村までしか除雪されていない。

これが前川渡の滝のほぼ全部。まだ右側にも湧き出した流れがあるようだったが、見えなかった。
真ん中の赤い○の中にダンナが立っているので、長さの比較ができるかと思う。



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