んがお工房の桜めぐり
2008年新潟の桜
2008年4月13日(日) 小山田彼岸桜樹林 六木山登山口の山野草 4月19日(土)、4月29日(祝) 弥彦桜、角田山の桜 新潟県には桜の国指定天然記念物が5つある。小山田彼岸桜樹林(五泉市)、橡平桜樹林(新発田市)、数珠掛桜(阿賀野市)、極楽寺の野中桜(阿賀町)、御所桜(佐渡市)。 こう並べると、新潟は桜の綺麗な県だという印象になってしまうが、実は桜の名木は少ない。 もともと「潟」というだけあって、平野部は沼地のような土地だったことが原因なのか、桜の古木は数えるほどしかないのである。 しかも、長野県と福島県という桜の二大名所に挟まれていながら、長野、福島両県によく見られる墓守の桜の存在もない。なんで新潟を飛び越えてしまったのかは、まったく推察もできない。 そんななか、唯一我々の耳に届いた樹齢200年の古木が弥彦桜である。弥彦山山頂近くに咲くこの木は樹齢200年。恐らく、県を代表する桜の名木だ。 今年は遠出できない理由があるので(飼い猫の介護です)県内の桜を狙ってみることにした。 |
小山田彼岸桜樹林 国の天然記念物である。 市のホームページによれば、 山道沿いの桜並木は寛永年間(1850年頃) 斉藤源左エ門という人が植えたらしい。 とすると、樹齢150年以上の木々ということになる。 これがその桜並木。 どっしりとした巨木が並ぶ様は、 圧巻である。 並木を上り詰めた先にある広場。 下草が芝生のように見える。 すみれが一面に咲いていて、 上のピンク、下の紫といった感じだった。。 幾種類かの木があるらしく、 散っているものも、まだ蕾のものもあった。 広場からさらに上に登って、 桜の枝々の中に突入することもできる。 ソメイヨシノのような華やかさはないが 実に風情のあるピンク色だ。 |
4月13日、新潟の平地の桜は満開の状態だった。 きっとあちこちで宴会が開かれているだろう日曜日、我々はちょっと渋めの桜の名所に行くことにした。 小山田彼岸桜樹林。 国の指定天然記念物であるわりには、身動き取れないほどの花見客が来るわけでもなく、実にひっそりとした場所である。 この場所にはほぼ毎年来ているのだが、いつも花が終わったあとで、なかなか咲いている時期に来ることができなかった。 と、いうのも、市内の桜よりも少し遅めに咲くという情報がホームページにあるのだが、実は一緒か、もしかしたら早い開花なのである。 いや、確かに遠目から見ると少し遅いくらいでも充分に咲いているように見える。 ところが、このヒガンサクラというのは、すぐそばの下から見上げるとあんまり花のつきがよくないのだ。 遠くからピンクに見えたのでそばに寄ってみると、あらららら、ということになりかねない。 むしろ少し蕾があるくらいがピンクが濃くて咲いている感じがするのである。 ちょうど平地の桜が満開になり、日曜日とも重なったので、今度こそはと行ってみた。 着いたのが午前11時少し前。ちょっと出遅れた。 2箇所あわせて50台くらいはとめられそうな駐車場はすでに満車。ここの駐車場が満車なのに出会ったことがないのでちょっとびっくりした。 さすがに人々は花の時期を逃さないということである。 駐車場には入れられなかったがすぐそばの林道脇にとめることができたので、長靴を履いて出発。 前日が雨っぽかったので、泥道になっている可能性がある。 次から次へと人が山道を登って行く。 決して楽な道ではないのだが、けっこうなお年寄りも登る。 さすが桜の威力はすごい。 むしろ、ちょっと噂で来てしまった若者が山を登るのだと知って引き返している。花を見るなら少しくらい苦労したまえ。 彼岸桜樹林入り口。川を渡ってすぐに登りが始まる。 10分後、ようやく桜の巨木が並ぶ回廊に到着。でも、まだ登る。 よく整備された道。新しい道も作られている。 阿賀野川が見晴らせる場所もある。 下りは別の道を選べる。こちらにはイカリソウがたくさん咲いていた。 駐車場の混雑のわりには、樹林にそれぞれ人が散っているために、人だらけとも感じずにゆったり散策できた。 ただ、カメラマンは多かった。 小山田彼岸桜樹林 最寄ICは、磐越自動車道安田IC。 ここから、県道41号を経て国道49号に出て福島方向に向かう。咲花温泉に向かって進むつもりでよい。阿賀野川を右にみながらやや進むと、馬下(まおろし)橋に出る交差点になる。川は右がわだが、道は左折。今来た道の上を通って橋を渡る形になる。橋を渡るとすぐ左折だと咲花温泉だが、ここは曲がらずに坂を下りる感じで進む。するとすぐに馬下駅方面に行く踏切があるので、そちらへ。とても狭い道だが、そのまま集落に入る感じでどんどん進む。がんばって狭い道をかなり進んでものすごく注意深く左側を見ていると小さく彼岸桜樹林の案内看板があるので左折。左折した道もものすごく細い林道なので注意が必要だ。 詳しい場所は、五泉市のHPで確認してください。 |
*小山田に行ったついでに、新潟の早春の花を求めて、同じ五泉市の杉川上流まで行って来た。木六山という山の登山口で、ここにはカタクリの群生があるのを知っていたのである。やはり小山田と同じくほぼ毎年来ているが、いつもカタクリには遅かった。今年はどうだろう。 入り口にキャンプ場のチャレンジランド杉川というのがある。ここから先は登山口まで林道になっているが、今年はこの林道が荒れていた。 いたる所に倒木がある。まずキャンプ場のすぐそばでもはやとうせんぼ状態。登山道に入っても倒木だらけ。 橋を渡ってすぐの道もなんだか崩れっぽくて怖かったが、その先にカタクリの群生がある。 やや遅いかな〜っという感じだが、見事に咲いていてくれたカタクリ。途中にはイチゲの姿も。 カタクリの場所よりも手前に出現するイワウチワ。今年は例年よりも多い気がした。道が荒れているせいか。 はなびらがやたら大きな感じがするんですが、ここのイワウチワは。 山菜を採りに来た人や登山の人とすれ違った。 がんばって来ましたねぇ、なんて言われてしまった。 あの橋を渡ってすぐの崖っぽい登りさえなければ、気軽に早春の花が楽しめる場所なんだけどなぁ。 |
弥彦桜 弥彦村指定天然記念物。 樹齢約200年のヤマザクラの変種。 山頂公園のレストランの脇にある。 頂上付近にあるので、 実に見晴らしがいい場所だ。 弥彦桜が見下ろすのは、新潟平野。 赤い若葉と同時に開花する、 風情あるヤマザクラだ。 花は白っぽいのだが、 葉っぱが赤いので全体にピンクに見える。 幹はそれほど太くはない。 が、弥彦の桜の中で最大の桜だそうだ。 一部折れていたが、風雪のためだろうか。 4月19日の山頂から見た風景。 こちらは、国上山方面。 大河津分水が見える。 こちらは寺泊方面。 遠く、米山も望めたが、 写真ではよくわからない。 4月19日は空が澄んでいて、 佐渡がてともよく見えた。 4月19日の弥彦スカイラインでみつけた ニリンソウの大群落。 奥の奥までずーっとニリンソウ。 車道のすぐ脇でこの状態。 ホント、弥彦山はすごい山です。 |
4月19日 平地の桜がほとんど葉桜になり、八重桜にバトンタッチする頃になった。桜好きはぼちぼち東北の桜に目を向ける時期である。 さて、そろそろ弥彦桜が咲いたんじゃなかろうか。単純に平地よりもちょっと遅いくらいだろうと考えて弥彦山に向かった。 幸い、4月1日から弥彦スカイラインがオープンしているので、山頂直下まで自動車で行ける。 つい数週間前、雪割草を求めて田ノ浦コースをヘロヘロになって登り、駐車場で昼食をとったのがウソみたいに楽々到着。ここから山頂までは遊歩道を歩くことになる。 実は大人往復350円のクライミングカーなるケーブルカーの小型のものでたった1分で山頂公園に着くことができるのだが、その350円を惜しんで歩く。 以前来た時にここから登れば山頂へいけるという入り口を確認していたので、駐車場よりやや長岡市よりに戻った場所から登り始めた。 が、これがまあ、ものすごい急登で。しかも、ちょっとぬかるんで滑りやすくなっている。だが、驚いたことに、入るなり両側にカタクリ、スミレ、エンレイソウのパレードになって、花だらけになってしまった。 スカイライン駐車場から山頂への道。両脇にカタクリが咲いている。。 緑色の薄いエンレイソウ。濃い色のイチゲ。 濃い色のカタクリもあった。期待のギフチョゥもしっかり飛んでいた。 やがて、その急な登りもスポッという感じで山頂のレストランの少し先に飛び出た。が、飛び出た先に9合目とあった。 げ、てっきり駐車場あたりが9合目で、山頂なんてすぐそこだと思っていたのに。 ちなみに、地元出身の私は小学生の頃に弥彦山には登っている。が、もちろん神社から登る一番楽なコースしか知らない。しかも、記憶も薄れている遠い昔である。 とにかく、山頂付近にあるという弥彦桜を見るために来たのだから、山頂に向かわなくちゃ。 それだけが頭にあった。 飛び出した場所から右に進む。 なだらかな階段が続き、その両側にもカタクリやイチゲが咲いていた。期待していたギフチョウも飛んでいて、弥彦は山頂まで花だらけだ。 その自然豊かな山頂に至る道に、何本もの電波塔が立ち並んでいるのが不思議な感じがした。これほどのものを建てるにあたって、色々な重機が入っただろうに、それでも山頂は花だらけ。なんてすごい山なんだろう。 山頂とスカイライン駐車場を結ぶ道の山頂がわの入り口は実に分かりづらい。 9合目から山頂へはなだらかな階段やゆるやかな斜面が続く。 この階段の両脇にもカタクリが咲いている。アブラチャンも。 弥彦神社奥の院。三角点を探したのだが、みつけられなかった。 気の早いキアゲハも飛んでいた。 電波塔の前を通り過ぎ、いよいよ石の鳥居の見える山頂の神社に着いた。駐車場から写真を撮りつつゆっくり登って20分弱である。 これがまた、素晴らしい眺望だった。 ちょうど前日が雨で、風が強かった。色々なものを吹き飛ばして、いつになく視界が澄んでいたのである。 佐渡はもちろん、米山やその向こうの妙高、越後三山、守門、粟、飯豊の山々も見通せた。 ちょうど神社の神主さんがいらして、ダンナが弥彦桜の場所を訊くと、なんと山頂レストランの脇だとのこと。ええーっ、ってことは、山頂まで登る必要はなかったってことですか〜? でも、まあ、この眺望はここからしか望めないだろうから、よしとするか。 またしても、山頂公園まで戻って、レストラン脇の桜を見ると、あらららら、まだ蕾は固い。この分では、GWも後半でないと開かないだろう。こんなに開花が遅い桜だったんだ。 4月19日の弥彦桜。まだ蕾が固い。 帰り道はスカイラインを反対方向に抜けて、岩室方向から戻った。 途中にニリンソウの大群落を見つけて、またしてもこの山塊の豊かさを思い知ったのだった。 4月29日 さて、GWに入ったとはいえ、飛び石でまとまった時間のとれない昭和の日、弥彦桜が満開だという情報が耳に入った。 え、10日前はあんなに蕾が固かったのに。もう満開ですと? そうなってしまったら、行かないわけにいかない。 またしてもスカイラインを自動車で登って、今度は多宝山がわの遊歩道から山頂公園を目指した。 多宝山側の遊歩道はなだらかで見通しがきく。多宝山もよく見える。 さすがにGWだけあって、10日前よりもずっと家族連れで混雑していた。 弥彦桜の前はカメラを持った人がたくさんいた。確かに満開。ヤマザクラらしく、赤い葉っぱがチラリと覗いていて、なかなか可憐な花姿だった。 この日のスカイラインには、もうニリンソウの姿はチラホラとしか見えなかった。日々表情を変えていく弥彦山に気づくことができた。 |
弥彦桜の花姿を見るためだけのドライブではつまらないので、それより先に角田山に行くことにした。 角田山には雪割草の季節に数度登っていて、桜尾根コースの主たる桜が気になっていた。 一昨年の4月29日に桜まで登ってみたのだが、まだ蕾の状態。この桜が咲くのは、他の桜より遅いのだと知った。だが、今年はどうだろう。 弥彦山の山頂の桜もあっという間に満開になってしまったことだし、きっと角田山の桜も咲いているに違いない。桜のためなら登山もするぞ。 |
角田山の桜 ぱっと見、咲いているように見えない。 だが、上のほうの枝は満開状態。 あまりに登山道に近い場所なので、 うまく写真に納まらない。 これは、少し登って振り返る形で撮影。 上のほうの枝の花。 ピンクが濃くて、固まって咲く。 下のほうの枝の花。 花びらが大きくて白っぽい。 葉も緑だ。 |
*そんなわけで角田山に登った。 もちろん、山頂は目指さない(笑)。桜までの登山である。 雪割草も終わったこの季節、角田山に登る人はそんなにいないだろう、と思っていたら、登り口のすぐそばの駐車スペースは一杯だった。仕方がないので、海岸のトイレ近くに駐車して、そこから出発する。そこの駐車場にも登山らしき人たちがたくさんいた。 我々は山頂は目指さない。桜で引き返す予定である。 1ヶ月前には雪割草があちこちに見えていた登山道の脇は、今はスミレやイカリソウが主役である。 雪割草は葉っぱだけになり、赤っぽかった色が生き生きとした緑色になっている。ようやく2つほど咲き残っている花を見つけたが、もう花の時期は終了していると言っていい。 それでも色々な花が咲いているので、撮影しながらゆっくり進む。 厚い葉っぱの下に白い花が咲き残っている。。 ニリンソウの中にひときわ巨大に見えるイチリンソウ。右の植物は何?。 ヒトリシズカも団体さんだとうるさいかも。入り口すぐそばにアマドコロ。 約1時間かけて、目当ての桜の木に着いた。 あらららら、もしかして、もう終わっている? ちょっと見た感じでは、枝に緑の葉っぱが目立ち、あまりピンクの花が見えないのである。 ここに来るまでの間に、登山道に桜の花びらが散っていたので、あの桜の巨木も花を散らしてしまっている可能性があるとは思っていた。 残念無念と思いながら、木に近づき、見上げてみた。 おや、ずっと高い場所は咲いているじゃないか。低い場所の枝は緑の葉っぱが出ているが、高い場所の枝にはピンクの花がたくさん咲いている。 おやおや、ちょっと待て。そのピンクの花のそばには赤い小さな葉っぱが覗いているじゃないか。え、待て待て、すぐそばに見える緑の葉っぱのそばの花は白っぽくて花弁が大きいぞ。遠くに見える高い枝の花はピンクが濃くて固まって咲いているぞ。 げ、げ。この桜の巨木は、2種類の桜が渾然一体になっているじゃないか。 かなり驚いた。 雪割草の時期には咲いていないので分からない事実だ。 いや、花の時期にしか分からないだろう。葉が緑になってしまったあとでは見分けはつかないはずだ。 もしかしたら2本の木が根元でくっついているのかしらん、とよく調べてみたが、そうではなくて、なんだかわらかない状態で混ざり合っているように見えた。 つまり、この木はいっぺんには満開にならない。実は終わってしまったかに見える今こそ、上の枝は満開なのだ。 もしかしたら弥彦桜より珍しいんじゃないかなぁ、とも思ったが、それを理由に天然記念物にでも指定されて、また角田山に人が押し寄せても困る。雪割草の時期の混雑はこの花の山には似合わない気がする。 とりあえず、気になっていた桜の開花を見ることができたので、満足して山を下りた。 新潟には桜の名木は少ない、と冒頭に書いたが、実はただ発見されていないだけかもしれない。 桜の木は人の生活に密着した場所に多くあるのだが、そうではない自然の中にある場合も少なくないのではないか。 弥彦桜や角田の桜のように、新潟の桜の名木はきっと山の中にあるのだろうな、などと思った一日だった。 |