んがお工房の桜めぐり


2008年北富山の桜めぐり

2008年4月12日(土)

2008年の春は暖かだった。3月が気温が高く、桜も開花が早いと予想された。実際、我々の住む新潟の桜も平年よりも1日2日早めに開花して、あっという間に満開になった。そうなると気持ちが焦るのだが、我々が桜めぐりに利用できるのは週末だけである。
だというのに、この週末はどこもかしこも天候が思わしくなかった。
しかも、桜の名所である福島や長野の桜はまだ開花していない。
今一番桜が見ごろで、しかもお天気にも恵まれる場所ばどこだろう。
さんざん調べまくって、突き当たったのが富山県だった。
しかし、富山県には、実は国の指定の天然記念物になっている桜はない。必ず写真集に登場するような有名桜もない。
だがしかし、青空と満開に勝る桜の艶姿は無いではないか。
とりあえず、富山県のホームページで桜の名木を調べ、我々が日帰りで行ける範囲で回ってみようということになった。
       富山さくらの名所



月訪の桜
「つきとい」の桜、と読む。
越中の国守だった大伴家持が植えた木の
ひこばえだそうだ。
大伴家持が植えたものは、
昭和7年の大風で倒れたという。
もし、倒れていなかったら、
樹齢1300年の桜だったということだ。
この写真は、神社の裏側の道から撮影した
言わば後姿。



こちらが正面の姿なのだが、
逆光になってしまって、
ほとんどシルエットである。


根元にはツバキの木があって、
アクセントになっている。
通勤割引の時間内に高速道路を利用したにもかかわらず、この日の1本目の桜にたどり着いたのはお昼を回ってからだった。
と、いうのも、我々のこと、せっかく県外に来たのだからと名水百選の水やら滝やらにも足を運んでいたのである。(名水百選「穴の谷の霊泉」のレポはこちら)(「岩室の滝」のレポはこちら
この日最初の桜は、「月訪の桜」。つきといのさくら、と読む。
この桜は目印がはっきりしていて、絶対に迷わないと思っていた。
しかし、その目印、「宇奈月小学校」からみごとにはずれて、かなり行き過ぎてしまった。なぜそんなにはっきりした目印を見落としたかというと、この小学校がある県道13号が旧道と新道の2本あって、我々は旧道のほうに入ってしまっていたのだ。
慌ててナビで小学校を検索してナビの案内どおりに行くと、ものすごく近代的な学校があった。
月訪の桜はその裏手にあるという。
探すまでも無い。
やはり、名のある桜というのはオーラが違う。
新道から数百メートル先にある緑の木々の間に見えるこんもりとしたピンク。あれが月訪の桜に違いない。
そのピンクだけを頼りに田んぼの間の道に入ると、どうやら神社らしい場所に出た。しっかりと駐車スペースもある。
だが、なんと神社の下生えを燃やして駆虫しているのか何なのか、境内一面あちこちからもくもくと煙が出ていた。
ありゃりゃりゃりゃ、桜まで煙でかすんでいる。
そうでなくても、天気予報は見事にはずれて、富山県の山沿いは小雨まじりの重い曇りだというのに、白い煙の中では桜がさっぱり見えないではないか。
それでも、せっかく来たとうのに、写真も撮らずに帰るわけにもいかないから、道から桜に近づき、その写真を撮影していた。
すると、火を燃やす作業をしていた人たちが、そっちは裏側で、こっちのほうに石碑があるよ、と教えてくれた。
ちょっとした柵があるのだが、どこからでもいいから入ってくればいいとのこと。
お言葉に甘えて入って行くと、本当に神社の裏側らしく、神社の建物のすぐ後ろに出てしまった。
そこから月訪の桜を見ると、見事に逆光だった。
人間の目には綺麗で堂々とした木と花が見えるのだが、カメラの目だときっとシルエットになってしまうだろう。
だが、背景の田園風景と山々がなかなか絵になっている。

  逆光でなければ、花も綺麗なんだけど。
正面にあった石碑には大伴家持の句が刻まれていた。
「鶏の音も聞こえぬ郷によもすがら月より外に訪う人もなし」
この句から月訪の桜の名まえがついたのだろう。
桜の木から万葉集まで遡れるとは、桜めぐりもなかなか趣深いものがある。

月訪の桜
 最寄ICは、北陸自動車道黒部IC。
 インターを下りて、宇奈月温泉方面に案内に従ってどんどんと進むと、道は県道14号になる。問題はこの道が集落の真ん中を通っている細い道だとすると旧道だ。右手に浦山駅があるあたりでなんとか左折して新道に出よう。田んぼのまんなかの広いまっすぐな道だったら新道である。右手に宇奈月小学校が見えたなら減速。小学校に向かって立って、小学校の左裏のちょっと高い場所に神社がある。その境内裏側に月訪の桜はある。

その後、ここまで来たら宇奈月温泉に入らない手はないでしょう、と宇奈月温泉まで行ったのだが、日帰り施設が冬季休業中だったり、土砂崩れで通行止めになった滝への遊歩道がまだ開いていなかったり、と、宇奈月温泉では収穫するものもなかった。
天候も相変わらずの曇天で、2時を回ったばかりだというのに夕方のような暗さだ。
このままでは、一番見たい桜の木に行くまでに日が暮れてしまう。
ちょっと焦った気分になって、名湯宇奈月に入らずに桜を優先した。





明日の大桜
樹齢約400年のエドヒガン。
お寺まで来ると、民家は途切れて、
周りは杉の林になる。
開けた場所にこの木だけが立っているので、
イヤでも目立つ。



四方に枝を伸ばして
形よく広がっている
しかし、枝々は支柱で支えられている。



幹のアップ。
さすが老木。
苔むしていて、ゴツゴツしている。。

この日のメインイベントと位置づけていたのが、明日の大桜である。明日、と書いて、「あけび」と読む。桜のあるあたりの地名である。
明日の大桜は、法福寺というお寺の境内にあるので、ナビで一発で探し当てられた。
県道14号を宇奈月温泉方面に進み、トンネルの手前左手に見える赤い愛本橋を渡るとすぐに明日地区になる。
え、ここに入るの?といった感じの住宅街の細い道へと左折して、家並みが切れたあたりに古そうな山門が見える。それが法福寺。
山門の手前に法福寺の稚児舞いと大桜についての説明板があった。
山門をくぐって左手がお寺で、大桜は探すまでも無くすぐに目に入った。
ただし、さすがにお寺さまの桜だけあって、背後お墓が並んでいる。
ただ、境内には人気が無く、本堂も締め切られていて、本堂側に登って行くとお墓は見えなくなる。
障害物が無いので、桜の周りをぐるりとまわることができて、あちこちから撮影した。
  正面からだと背景は見事にお墓になってしまう。

  花は、付近の山桜に比べると、やや白っぽい。

  鐘楼の屋根に大桜の花がかかる。
さすがに樹齢400年ともなると、なんというか威厳が違う。木の持つオーラが一段階違って見えるのである。
我々は15分ほどその場にいたと思うが、その間に見学者は2組くらいしか無かった。実にもったいない話だ。
さりとて、桜祭りかなんか設定されてお祭り騒ぎをされても困るだろうけど。

明日の大桜
うろ覚えなのだが、桜に関するたて看板は無かった。探すのであれば、法福寺を目標にして探したほうが分かりやすい。
上記のとおり、県道14号を宇奈月温泉方面に進み、トンネルの手前左手に見える赤い愛本橋を渡るとすぐに明日地区だ。
ナビなどが無い場合はそこで地元の人に聞くのが手っ取り早いと思う。
富山県のHPの明日の桜のページに簡単な地図がある。


富山県に来たことは来たのだが、人出の多そうな桜の名所百選である富山市内の松川公園に行くつもりはなかった。
しかし、宇奈月に来るまで高速道路上からでも、あちこちの川べりで見事なまでの桜並木が連続している様子を見ることができた。
その中でも一番近い桜並木である黒部川の並木に行ってみることにした。






黒部川堤防桜堤
昭和42年から町民の手によって植えられて、
現在では170本の桜の堤になっている。
と、説明板にあったが、
たった170本しかないの、と思うくらいに
見事なまでの桜のボリュームだ。
この写真は上流方向を向いて撮影。



左手の緑の向こうが黒部川。
上の写真とは反対側を向いて
撮影している。
どこまで行っても桜だらけ。


公園の水路にかかる枝は
なんとも言えず風情がある。


とても静かな桜の名所だ。
さすがにナビに黒部川というのは無い。だが、愛本橋がかかっている川が黒部川なので、その下流方向に向かって進めばよい。
そう思って、方向だけを頼りに進んで行くと、あからさまにピンクの風景が見えた。よし、あっちに行こう。
しっかりと黒部川の右岸の土手に出た。
ただ、並木というよりは、並木の一番上流側の端っこといった感じの場所だった。しかし、こんもりとしたピンクの木々に人がひきつけられるようにして集まって来ていた。
見ると、「墓の木憩いの水辺」とある。あらまあ、墓の木って地名ですか?
ここは、土手沿いではなく、平らな公園のような場所に形のよいソメイヨシノがぽこんぽこんと植えられている。
今まさに満開で、お花見するにはもってこいの状況だ。
不思議なことに、こんなにいい場所なのにビニールシートを敷いてお花見している団体は全くいなかった。そういえば、富山では花の下の宴会を見なかった。ちょっとお天気が悪かったせいもあるだろうが、満開の桜の下で宴会を開いていてもおかしくないロケーションだったのだが。
  すくっと一本立った、立ち姿が美しい。

  こちらは団体で遊具を守っている。
墓の木憩いの水辺から土手に上がった。自動車で下流に走って行くと、ついに桜堤に出た。
おおおおお、すごい並木だ。
どこまでもどこまでも桜が続いているように見える。
黒部川の隣に土手を挟んで細い用水があるのだが、その用水沿いに桜が整然と並んで咲き誇っている。枝が用水にかぶさってなんとも風情がある。
特に駐車場らしい場所が無かったので、適当に土手沿いに自動車を止めた。
もう午後4時近くになっていて、おりからの曇天も重なってかなり暗い感じになっていたためか、それほど花見客はいなかった。
土手沿いにも三々五々自動車が駐車しているだけで、混乱も全くない。
土手から下りて、用水沿いに行ってみると、本当に素晴らしい桜の並木が見通せた。
少し下流に向かって歩くと、公園のように整備された場所に出た。
浅い水路が設けられていて、桜が覆うようにその上に枝を張り出している。
富山桜の名所50選、黒部川堤防桜堤という看板があり、富山を代表する桜の名所だとわかった。
  整備された水路を花が覆う。
上流側に振り返ると、雪の残った山々が背景になる。
ああ、お天気がよくて、山が見通せて、青空だったら、もっと桜も映えただろうに。そう思ってもせん無いことである。
特に露店なども出ていない、とても静かな桜の名所をしばらくそぞろ歩いて、富山の桜めぐりを締めくくった。
あとは、宇奈月で入れなかった温泉に入って帰ろう。ちょうど明日に温泉施設があるし。(温泉のレポはこちら
ついには晴れてくれなかったが、それでも満足の北富山の桜めぐりになった。


 
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