2011年氷瀑を求めて
(玉簾の滝、二の滝、一の滝)
 






玉簾の滝
山水画の世界だ。
落差63メートルなのだが、
下の方に氷の山ができていて、
さらにそこに雪が積もっているので
それほど無いように見えている。



と、いうことで、グッと引いた図。
人が立っているのが滝つぼのレベル。




こちらは、その滝つぼの上に立って撮影。
真冬でもない限り、ここまで近づけない。




氷は青いのだが、
雪化粧のために白くなっている。







二の滝
氷瀑というよりは、雪瀑になっている。
氷の上に積雪してしまったせいだ。
向かって右側の水流が噴出している。
つい先週までは凍っていたそうだ。



こちらは橋の上から撮影した二の滝。
とにかく雪がもっこもこ。
雪が無い時の滝は
観光客の目もあるのでこの橋から見るしかない。



雪で河原が埋まっているので、
こんなに近づいて見られる。
これはほぼ滝つぼから見上げた。




ドバドバと落ちている水流。
確かに上と下がくっつくと1本の氷柱になる。




ドバドバの受け口。



大きさ比較。



大きさ比較の2。
この日の最も滝に近づける場所まで行った。




幾重にも下がったツララが綺麗だ。



大きさ比較3。
ここから滝の横顔が見られる。
向かって左側の氷柱も中からコロコロと
水の流れる音がしたので、
完全には凍っていないらしい。




向かって左側のダンナの立っている位置からは
滝の裏側のこんな図が見られる。






一の滝
神社の裏側からかろうじて見えたもの。
けっこう凍っていた。




落ち口。
覆いかぶさるように氷が形成されている。




滝つぼ。
このままこの氷が上に成長すれば、
かなり立派な氷瀑になりそう。


2011/2/12 玉簾の滝(63M) 山形県酒田市
          一の滝(15M?)、二の滝(25M) 遊佐町

2011年に入って、日本海側はとんでもない大雪に見舞われていた。我々の住む新潟県でも、10年以上ぶりに積雪4メートルを超えたという地方もあって、すっかり閉じこもりを余儀なくされていた。
しかし、積雪も多いが、例年に無く寒い年でもあった。これならきっと滝も凍り付いているに違いない。どこかの氷瀑に行きたいなぁ。できれば初めて行く氷瀑がいいなぁ。
そんなこんなで、今年は北に目を向けてみた。
例年であれば、ほぼ氷点下になることのない新潟でも、しばらく氷点下になる日が続いている。だとしたら、日本海側の滝でも凍っているんじゃなかろうか。しかし、積雪が多いために、近づくことができる滝にも限りがある。唯一、凍る滝で通行可能な場所にあるのが玉簾の滝だ。
あとは、遊佐町が毎年2月に氷柱探勝会を開く二の滝がある。ただし、この滝に行くには1時間以上雪の林道を歩いて行く必要があるので、行ったことのない素人が行くのは難しいだろう。
となると、玉簾の滝を見て、観光滝である秋田の奈曽の白滝、元滝湧水まで足を伸ばせば、滝を見たという満足も得られるんじゃなかろうか。と、計画を立てた。
さて、当日。
実は大雪になるかもしれない、と天気予報では警告されていた週末である。あまりに雪がひどすぎれば行くのはやめておこうかと話していたのだが、起きてみたらそれほどの雪でもない。毎日出勤するのと同じくらいの時間に起きて、出勤するのと同じくらいの時間に出発。山形が大雪だったら、玉簾の滝だけ見てすごすごと戻るくらいのスロースタートだ。
無料実験中の日本海東北自動車道をただ今開通中の荒川胎内ICまで利用して、さらに山形自動車道の鶴岡から酒田みなとも無料実験の恩恵をありがたく受け、かなり時間を短縮できた。
高速道路の上から鳥海山がよく見えて、山形に来たのだと実感する。
  
おお、鳥海山だ。
このあたりでは積雪はほとんど無く、インターを下りた時点で、本当に滝が凍っているのかしらん、と不思議になるくらいだったが、県道を玉簾の滝に向かって進んでいくにつれ、だんだんと道脇の雪の量が増えて行った。湯ノ台温泉の道を左に分けたあたりから、ズン、と雪の量が増え、それまでアスファルトが見えていた道路も雪の白さが目立つようになる。ただ、しっかり除雪はされているので、スタットレスなら心配することはない。
道案内にしたがって、玉簾の滝の駐車場に着くと、自動車が3,4台とまっていた。売店は閉まっていたが、トイレは利用可能だった。
長靴に履き替えて出発。おやまあ、子供が作ったのかしら、ちっちゃな雪だるまがお出迎えだ。
  
鳥海山は雲の中。
遊歩道は入り口からもうかなりの積雪で、獣道のような踏み跡をたどる形になる。よく踏まれているので、雪にもぐることはないが、この道を外れるとたぶん腰まで埋まる。その証拠が下の写真。なんと鳥居がこのありさまである。
  
鳥居の上に手が届く。
酒田みなとのインターから30分も自動車で走っていないというのに、こんなに積雪が違うというのは、我々の住む新潟県の平野部から山沿いに向かう感じとよく似ている。
途中、地元の人らしい男性とすれ違ったら「今日の滝は最高だよ」と教えてくれた。そうか、そんなにいいのか。
雪で作られた燈籠なんかもあって、真冬の滝を見てもらう体制は整っているなぁという感じだ。
  
こんな踏み跡を行く。
10分も歩かずにもう一つの鳥居をくぐって、玉簾の滝が現れた。
おおお、凍っている。
そりゃまあ、落差63メートルもある滝が全部凍るのは無理として、両側にかなりのツララを従えて、厳冬の姿を見せてくれていた。
数人の人が滝の姿を眺めている。
夏場の滝つぼの上まで雪で覆われていて、踏み跡がついていた。踏み跡がある場所は大丈夫だろうということで、滝のそばまで近寄ってみた。
凍っては落ち、凍っては落ちといった具合に積もっていった氷が山になっている。そこに雪が積もって、なんだかもっさりとして見えた。このせいで滝の落差も感じられないでいる。
だが、夏場ではまず立てない位置に立って滝を見上げることができた。

この先の行程もあるので、あまり長居はしないで滝を後にした。
それにしてもおだやかな天気だ。
駐車場に戻るまでには青空まで見え始めていた。
これは、もしかしたら、行けるかもしれない。
どこに?二の滝に、である。
実は遊佐町が開催する二の滝の氷柱鑑賞会は我々が行った前の週に行われている。50人近い人が行くらしいので、おそらくきっちりと踏み跡がついているはずだ。この一週間の間に大量の積雪が無いかぎり、その踏み跡をトレースすれば二の滝に行くのは素人でも難しいことではないだろう。
風力発電の風車がいくつもある酒田市街への道を戻りながら、その風車でさえとまっている無風の、しかも青空のこの時、山形にいるというのに行かない手は無いんじゃなかろうか。
迷うまでもなく、自動車を二の滝方面に進めていた。
一応、行きたい氷瀑ではあったので、二の滝についても調べてはあった。自動車で行けるのは胴腹清水まで。そこから1時間で一の滝への遊歩道入り口の駐車場。そこから30分で二の滝。二の滝へは一の滝経由ではなく、林道から直接下るらしい。
問題は普通の自動車で胴腹清水まで行けるかどうかだったが、集落が終わって県道の道幅がきゅっと狭まったあたりで積雪も増えたのだが除雪はきちんとされていたし、ゲートもなかった。
とにかく行ける場所まで行こう、と進めて行ったら、自動車が道路わきに4台ほどとめられている場所に出た。カーブの先はゲートであり、除雪は全くされていなかった。そうか、ここが胴腹清水か。
我々も他の自動車の邪魔にならないように道のわきに自動車をとめた。
時刻はちょうど正午あたりだったので、とりあえず自動車で昼食を食べて腹ごしらえ。
それにしても、このあたりはただの道路だ。胴腹清水というと、たしかお地蔵さんがあったんじゃなかったっけ。で、その清水は滝になっていたはずだ。前回5月に来た時に胴腹の滝を見落として、次に来た時に見るつもりでいた。
ここにはお地蔵さんも清水に向かうらしい踏み跡も無い。ここは胴腹清水じゃないのかしらん。あまりに雪が多いから途中で除雪やめちゃったんじゃないかしらん。
ちょっと不安だったが、ここまで来たからには滝まで行かないわけにはいかない。
12時30分、ゲートを越えて出発。
  
ゲート前。道路は圧雪。

  
ここから徒歩。
踏み跡はしっかりついている。もとより、林道をたどって歩けばいいので、一の滝の駐車場までは迷わないとは思うけど。
雪の上には無数のうさぎの足跡があった。うさぎが出てきてくれれば楽しかったのだが、ついに見なかった。
空はいよいよ晴れて、いったいどこが大雪の恐れのある週末なんだと思うくらいである。歩いていると暑くなるくらいだった。
  
いいお天気でした。

  
カーブミラーも半分埋まっている。

  
雪のロールケーキ。
しばらく歩くと単独で歩いて来る年配の男性とすれ違った。滝は凍っていたかと訪ねたら、先週まで2本氷柱があったそうなのだが、今日は1本になっていた、と教えてくれた。この先2時間くらい歩きますかと聞いてみたら、あなたたちなら1時間くらいで着きますよ、とのこと。山には猟師さんが3人、山歩きの人が2人入ってますよ、と情報をくれた。そうか、猟師も入る山なのか。
道は、自動車も通る林道なので、傾斜はそれほどきつくない。いつのまにかゆるゆると登っているといった感じだ。踏み跡もしっかりと続いている。
しかし、長い。
もういいかげん一の滝の駐車場に着いてもいいんじゃないかなぁと思ったあたりで2人組みの男性とすれ違った。
林道から滝に下りる道が不案内だったので、分かりやすいかと訪ねてみたら、踏み跡どおりに行けば大丈夫だと教えてくれた。
そこからちょっと歩くと、おお、赤い物体。あれは鳥居じゃありませんか?
  
前方に赤い鳥居。

  
鳥居の頭とツーショット。
わはは、鳥居に楽々とよじ登れるくらいの積雪だ。
ようやく一の滝の駐車場に到着した。ホントに丸々1時間かかった。
鑑賞会の折には、ここでトイレ休憩などするようだが、どうもトイレは開いてはいない様子だった。ってか、雪でどうやってトイレにたどり着くのかよく分からない。もともと当てにはしていなかったので、我々は休まずに先に進むことにした。
駐車場からそのまま林道へ進む。かぼそい踏み跡は鳥居方面、つまり一の滝方面にも向かっていたが、そちらには行かない。
林道に進む場所には、冬の一の滝、二の滝二の滝は気象の変化で危険な状態で、事故が起きた場合の責任は負いかねるとの遊佐町の注意喚起があった。
そこから5分ほど歩くと、また同じ看板があった。
なーるほど、ここから林道を離れて滝に下りて行くのか、と、はっきりとした目印になってしまっている。
  
駐車場のそばの看板を通り越す。

  
林道終点の看板が下り口。
ここまでは林道歩きで、体力と根性さえあればなんとかなるのだが、この先は斜面にへばりつくようについた踏み跡をたどらなければならない。
左は急斜面、右は渓谷。足を踏み外したら川に転落という場所もある。
また、雪がゆるんだ場合には雪崩になりかねない地形なので、遊佐町の注意喚起の看板は決して脅しではないと分かる。
とにかく自己責任で突き進む。
  
斜面にへばりつく踏み跡。
ちなみに我々の装備はスパイクつき長靴だ。私は一応ストックを持って行ったが無くても困らなかったと思う。
10分ほどそんな道を下っていくと、前方に何か建物みたいなのが見えてきた。はっきり分からなかったのは積雪のためで、コンクリートブロックの建物の上にどっかりと雪が積もっている。こりゃ、コンクリートでもないかぎりつぶれている。
    
  
杉の向こうに建物。で、建物の上はこんな雪。
建物の向こう側に橋が見えたが、それも雪のために橋なんだか何なんだかさっぱりわからない。その橋の上流にめざす二の滝が見えた。
わぁ、凍っている。
でも、確かにおじいさんが言ったとおり、向かって右側の1本が結氷していなくて、水が噴出している。
でも、そのおかげで今まで渓谷なのにシンとして音が無かったのだが、滝らしい音があたりに響いていた。
雪が無い時には橋の上からしか滝を見られないのだが、今の季節は橋はむしろ滝から遠い。
踏み跡は滝の直下までついているので、それにしたがって進む。
カチっと凍る時には二本の氷柱になり、その間によじ登ったりできるらしいが、今日はちょっとそれはできそうもなかった。
しかし、滝の右からも左からも見ることができて、なかなか楽しい。
15分ほど滝前で過ごして、コンクリートの建物の中に入って缶コーヒーで休憩してから、また雪の踏み跡に戻った。
さて、このまま登ればあとは林道を1時間下るだけだ。
ふと、見ると、どうやら一の滝に向かった人のものらしい踏み跡が林道に復帰する踏み跡から分かれている。実にかぼそい踏み跡でどーも1人かもしくは2人かそれくらいのものでしかない。うーむ、危険だ。
でも、林道に復帰するのに、けっこう登る。危険はどっちも同じだし、どうせなら一の滝も見てみたいじゃないの。
行ってしまいました。
踏み跡があるので、新雪をラッセルするよりはるかに楽だ。
途中、この先人はホントに一の滝まで行ったのかしらん、と不安になるシーンもあったが、左手の渓谷から離れなければ間違いなく一の滝には着く。その先に踏み跡がなくなっていたら、時間は大幅にかかってしまうが戻ればすむことである。
10分強、か細い踏み跡をトレースして、一の滝神社が見えた。
  
一の滝神社。よく雪で潰れない。
一の滝は急な階段を下って滝見台に行かないとよく見えない。
しかし、その階段、すっかり雪に埋もれていた。
ダンナは果敢にも雪を蹴散らして滝見台まで下るつもりだったらしいが、それを見て私が悲鳴をあげた。なにせ、手すりよりも雪が上なのが見てとれるのだ。ハタで見ているほうがゾッとする。転げ落ちたら凍った滝つぼの中だ。頼むからやめてくれと制止して、あまり見栄えのしない一の滝の写真だけでガマンすることにした。
とりあえず、来た証拠だけである。
  
これ、滝見台への階段のてすり。
一の滝から先は踏み跡は消えることなくついていて、5分ほどで鳥居に到着した。踏み跡が細くて心配したが、結果的には林道に復帰して一の滝を見ずに戻るのと大差ない時間で済んだと思う。
  
鳥居までもうちょっと。
さて、これから林道を下って行こう。
登る時にはそれほど登ったという感じはしなかったのだが、下る段になって、けっこう坂道だったのだと気がつく。
15時半、出発から3時間で駐車した場所に到着。撮影時間と一の滝に回ったことを考えれば、我々にしてみればがんばって歩いたタイムだ。
  
やっと到着。
その頃には青空だった空もうす曇になり、これから雪が降るのかなぁといった感じになった。
この時間になっては、これから秋田まで回るのは無理である。あっさりと諦めて、帰路に着くことにした。
雪の歩きで使った筋肉を途中のあつみ温泉の共同浴場でほぐして、家に戻ったのは午後8時頃。
真冬の穏やかなお天気という神様が与えてくれたチャンスに、たぶん行けないだろうなぁと思っていた厳冬の二の滝に行くことができた。本当にラッキーだった。
それにつけても、山形、雪が多かったな〜。雪が多くても、滝が見られるんだな〜。
  
交通
  玉簾の滝  山形自動車道酒田みなとIC下車。県道59号から国道345号に出て、さらに県道366号に入る。
道のあちこちに玉簾の滝、とか、湯の台温泉と出ているので、それにしたがって進めば迷わない。
冬季は滝の駐車場までは除雪はきちんとされているが、かなりの積雪のある場所なのでスタットレスタイヤは必要である。
また、滝への遊歩道も雪道になるので、長靴は絶対に必要だ。

  二の滝、一の滝  酒田みなとインターから県道60号を進む。とにかく県道60号の終点まで行けばよい。道のあちこちに二の滝と出ているので迷わない。ただし、途中から冬場はかなりの積雪になり、すれ違いも困難になるので注意が必要だ。
胴腹清水まで除雪がされていて、自動車はこのゲートの近くに路駐。駐車場のようなスペースは無い。
ゲートから1時間、林道を歩いて一の滝の駐車場。さらに5分ほど林道を進んでから二の滝へ下って行く。
林道歩きは雪で踏み跡が無い場合以外はそれほど困難ではないが、踏み跡が見えなくなっていると、標識などが全て雪で埋まっているので林道さえ踏み外す恐れがある。時折ピンクのリボンが木につけられているのだが、これは林業関係の印らしく、林道とは全く別の場所についているので、これをあてにしたら、必ず迷う。踏み跡が見えない場合、また、踏み跡も消すような降雪のある場合は絶対に行かないほうがよい。
林道から二の滝までは斜面にとりつけられた踏み跡をたどるので、滑落の恐れがある。
また、雪がゆるんでいる時などはなだれの恐れもある。
気象をよく読んで、単独では行かないほうがよい。
踏み跡がしっかりついていれば、ただの長靴だけでも充分である。
二月に遊佐町で探勝会が行われるので、それにあわせたほうが無難だ。(1月に予約が終了するので、計画は早めに)(遊佐町HP
一の滝は赤い鳥居の駐車場から雪がなければ5分で行ける。冬場も鳥居から行ったほうが無難。ただし踏み跡は細い。また、滝もよく見えない。


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