んがお工房の桜めぐり


2015年あちこち桜追い@
新潟の桜たち

2015年の春はいきなりやって来た。
そもそも、この冬は平野部は極端に雪が少なく、ほとんど積雪しなかった。気温も比較的高く、時々氷点下になるものの真冬らしからぬ気温が続いたりしたのである。
2014年のように寒の戻りがあって春が来るのが足踏みするような状態にもならず、わっという音をたてて春がやってきた。
さて、春と言えば桜を追う我々。さりとて、新潟の桜はだいたい4月の中ごろに開花するのが常だ。いくら気温が高い日が続いてるからといって、3月から桜が咲くことはあり得ない。
しかし、今年、2015年だけは特別だった。
県内で、3月からの桜追いが可能だったのだ。
理由は北陸新幹線。
北陸新幹線の開業は、新潟の桜を3月に咲かせた。



越五夢サクラ
上越市、妙高市、十日町市
柏崎市、佐渡市
五市の桜である。
綺麗に咲きそろっているのだが、
照明がオレンジ色で、
写真ではよく分からなくて残念。



これが調節してみた色。
人の目で見ると、綺麗なピンクや白だった。


こんなに高い天井で、
照明は間接的なものと、
下からのものしかなかった。


でも、見上げると、その天井の木組みが
とてもよく調和していた。


ぐるりと周りを見ることができた。


イベントのある通路方向は
ちょっと照明の質が違って、
わずかに色味が分かる。


最初で最後の越五夢サクラ。
よい春を迎えられそうだ。
3月14日
この日、ついに北陸新幹線が開業した。
とはいえ、我々にこの新幹線はあまり必要がある路線ではない。
というのも、我々は新潟市に住んでいるので、長野から上越、糸魚川を通って金沢に行く新幹線に乗るよりは、高速道路で行ったほうがはるかに時間が短いのだ。
しかし、前々から私はこの開業を心待ちにしていた。
というのも、新潟県内にある2つの北陸新幹線の駅のうちの一つ、上越高田駅のデザインコンセプトは「さくらと雪の平原」で、そのコンセプトにそった開業イベントがあるのである。
中でも魅力的なのが、世界的なプラントハンターである西畠清順氏が県内の五か所で採取して開業時に満開になるように管理した桜のお披露目だ。越五「夢サクラ」という。
このニュースを聞いて、必ず見に行くぞその桜、と思った。
ちなみに、私はちっとも鉄道には興味はない。だもんで、上越妙高駅に開業当日に行っても、青と白の北陸新幹線の車両を見たいとはちっとも思わない。ただひたすら、桜を見たいのである。
開業の3月14日は土曜日。開業日に満開を合わせた桜の見ごろはせいぜい1週間だろう。とすると、仕事のない日は翌日の日曜日しかない。ところが、この日曜日に私が用事があって出かけられない。
どうする。
悩んだ結果、新幹線の駅であれば、終電まで開いているから、土曜の夜に行けばいいじゃないか、ということになった。
ダンナの仕事が終わって、速攻で上越市に向かう。
新しくできた駅なので、ナビにも場所は入っていないのだが、だいたいあの辺だろうと進めて行ったら道案内があった。
駅のすぐ前の駐車場はいっぱいだったが、さすがに開業当日、警備員がいて、別の駐車場を案内してくれた。
別とはいえ、ちゃんと駅の駐車場で、すぐ横にある。これが日中だったら、駐車場難民しただろうが、午後7時を過ぎていたので、ふらふら遊びに来る人もそんなにいないとみえた。すんなり駐車する。ちなみに、30分だったか、1時間だったかは無料である。
駐車場から出ると、あたりはまだ積雪があった。上越市内から少し妙高市に近づいたあたりなので、思っていたよりも雪が深い。
駅前の広場らしい場所は一面の雪で、そこに小さなかまくらが作られていて、中にろうそくが灯されていた。いくつもの小さなオレンジ色の光が揺れていて、なかなか綺麗だ。
  
さて、桜。
正面から入ると、まさに目の前に桜があった。
前日のニュースで見たのだが、切った枝をでっかい壺に活ける感じの作業だったので、もう少し小さいイメージがあったのだが、見上げるくらい大きな桜だった。
ただ、悲しいかな、夜である。
天井の高い駅のコンコースで、照明が写真を撮るほど明るくないのだ。全体的にオレンジ色の明かりで、桜本来のピンク色がよくわからない。
あーあ、失敗。桜を見るなら明るい日中にしなくちゃならなかった。
しかし、目で見る限りでは、巨大な活け花の迫力はすごいものがあった。
5種類ある桜もよくもこの雪の中で咲いている、と感心するほど咲き誇っていた。
ちなみに、5種類の桜は、上越市、妙高市、十日町市、柏崎市、佐渡市の人たちの協力で収集された。
前々からニュースで西畠氏が採取している映像を流していたが、どこもみな、雪の中、固い蕾の状態だった。
これを冷蔵室や温室で管理して満開の状態にしたのである。
プラントハンターの西畠氏については、どういうワケか見るともなしに、彼の出ているTVを見る機会が多かった。世界中を珍しい植物を採取しているスペシャリストが日本にいるんだ、と思っていたが、この夢サクラのプロジェクトが発表になったあとでNHKでも特集された番組があった。
そこで初めて京都の活け花の世界で厚い信頼を得ている歴史ある花・植物生産卸屋の五代目で、とにかく植物に対する愛情の深い人だというのを知った。
それを見ているせいで、目の前の夢サクラがなおのことすごいものだと感じることができた。
白い一重の桜あり、ふっくらしたピンクの八重の桜あり。自然界ではまず一緒に咲かない桜が一つの場所にこんもりと咲いている。
すごいなぁ。
  

  

  
吹き抜けなので、二階からも見られるのだが、意外に見下ろした桜は綺麗じゃなかった。
ああ、ホント、日中に来たかったなぁ。
駅は夜でも色々なイベントがあり、人がたくさん来ていた。上越市民ならもうちょっと楽しみたいところだが、我々はまた高速道路で1時間以上かけて家に戻らなければならない。
ぐるりと一回りだけして、上越妙高駅をあとにした。

  関係ありませんが、駅のポストの横に郵便制度の父、前島密さんのキャラクターが。出身地らしいです。
レルヒさん的出来栄えが秀逸で、私一人でウケてました。

そんなこんなでフライングの桜で今年の桜追いは始まった。
さすがに、自然の状態では4月の中旬まで県内の桜は咲かないが、この年はとにかく春が早くて、4月5日の日曜日あたりには、気の早いソメイヨシノがひとつふたつと開花している状態になっていた。
われわれは、関東の桜に目をむけ、県内の桜が満開になるのを待つ週末を2週間続けた。
(4月5日は埼玉県の石戸蒲桜、4月11日は静岡県の狩宿の下馬桜を見に行って、5大桜を見終えた)



宝光寺門前の桜
勝手に名前をつけました(笑)
若い木ではあるが、とにかく山門に似合った、
見事な桜だと思う。


ちょっと葉っぱが出ていたけど、
綺麗に咲いていました。



城東窟の桜
さすがにこちらは葉桜。
いっそうおばあちゃんっぽくなって見える。



でも、ちょっとだけ咲いていたのよ。

4月19日
ところが、思ったよりもずっと早く県内の春が通り過ぎ、いつもは満開のはずの4月20日前後はどこも遅い状態に。
ただ、4月19日の日曜日は、長岡の悠久山公園などちょっと山に近い場所のお花見桜が満開だった。
うーむ、お花見桜はいいが、混雑は遠慮したい。
いい具合に咲いている1本桜はないかしらん。
新潟には実は1本桜はそれほどないのだ。隣県の長野県や福島県に見事なまでの桜の木がたくさん存在しているのに、なぜか新潟にはない。不思議なくらいない。
1本桜ではないけれど、2本ならあるぞ。
新潟市内よりはかなり寒い阿賀町の夫婦桜である。2本並んだ桜が背景の雪山と手前の田んぼに映える、ここ数年で桜撮影スポットに躍り出た桜である。
ここがたぶん満開だ。
よし、阿賀町に行こう。ほかになんにもない場所だから、混雑もしていないだろうし。
ということで、自動車を県北方面に走らせた。
どうせそちらに行くなら、と、新発田市の城東窟の桜も見ていくことにした。きっと散っているだろうことは予想できたのだが。
お寺の敷地内の駐車スペースに自動車を入れると、あら、月岡温泉の旅館のバスが駐車している。桜を見に来たのかしらん。
とりあえず、門前の八重枝垂れ桜を観賞して、写真を撮っていると、そのバスの運転手さんが寄ってきて、
「有名な桜は・・・」
と、言いかけたので、
「奥の桜ですよね〜、もう遅いですかね〜」
と答えた。どうやら我々がこの桜が城東窟の桜だと勘違いしていると思ったらしいが、ここに来るのは3度目ですってば。
山門をくぐると、バスの乗客らしい人たちが戻ってくる所だった。
見れば、桜はもうほとんど散って葉っぱが出ていた。
これは、一番初めにここに来た2010年よりも葉桜状態である。2010年は4月25日に来ているので、いかに今年の春が早いかがわかる。
それでも、なんだかこの腰の曲がったような桜の木は、うっすらと緑の葉っぱが出ている状態が似合っているような気がした。
おばあちゃんが着飾っていない普通の状態に見える。
これからも長生きしてね、なんて気持ちになりながら、桜を見せてもらって、次の目的地に進んだ。

  

  足元には花びらの絨毯。
            



加治川堤桜
我々は公園のある左岸の堤防を歩いた。
上の写真は下流方向を向いている。


で、この写真は上流側を向いている。
青空であれば、桜と雪をかぶった山が
綺麗だっただろうに。



ちょっと無粋な駐車スペース。
ずーっと桜並木が続いているんだけど、
自動車もずーっと並んでいる。



4月19日
次に向かったのは、加治川沿いの河川敷にある桜並木である。ここも満開だという情報があった。
いつも日本海東北自動車道の上から通り過ぎていたのだが、見事な桜並木が続いている場所である。
行けばわかるだろう、とばかりに、ナビにここじゃないかな〜という河川公園を案内させたら、とんでもなく違う場所に連れていかれて、仕方なしにスマホのナビを使って進んで行ったら道案内があった。ということで、いったいどういうルートでたどり着いたのかさっぱり分からない。もし自動車で行くことがあれば「加治川治水記念公園」で探すか、もしくは、橋を挟んだ反対側に新発田市立米子小学校があるので、そこを目安に行けばたどり着けると思う。
行ってみたら、さすがにお花見の満開真っ最中ということで、ちゃんと警備員さんがいて、道案内をしてくれた。河川敷にかなり広い駐車場があった。
ウロウロしたもんだから、すっかりお昼を過ぎてしまった。
堤防の外側の公園は芝生が敷いてある広場があって、ゆっくりのんびりできる。公園ではイベントが行われていて、出店が出たり仮設のステージで歌謡ショーがあるらしかったが、芝生のあたりは静かなものだった。
家族連れが三々五々シートを広げて外ランチしている。
我々もそれに混ざって、桜の木の下で昼食にした。
空は薄曇りだったのだが、気温が高くぽかぽかしていた。
加治川記念公園の桜はお花見桜ではあるが、なんともファミリー的で、ちっともお酒のニオイがしない。のんびりぽかぽかの春のお昼にちょうどいい場所だ。
加治川から用水を引きこんでいるらしい場所に石造りの橋があり、そこにコイノボリもあって、いよいよGWっぽい感じでもある。
  
堤防に戻って、延々と続く桜並木の下を歩いてみた。
桜並木の入り口にあった看板によると、大正天皇の即位を記念して大正三年に左岸右岸に6千本のソメイヨシノが植えられ、やがて「長堤十里世界一」といわれる素晴らしい桜並木になったそうだ。
しかし、昭和41年と42年の大水害により堤が決壊、桜も伐採を余儀なくされて、すべて失われてしまった。
その後昭和63年から様々な補助、協力の上復活の作業が続けられ、現在では2千本の桜並木になっている。
いや、ホントにすごいです桜並木。
ずーっとずーっと桜が続いている。
左欄の写真の見える範囲がずっと桜なのだが、その先もまだまだ続いているのだ。
左欄上から二枚目の上流に向かっている写真ではまだ先に橋も日本海東北自動車道のも見えていないが、むしろその先のほうが長く並木が続いているのだ。
こんなに長すぎるもんだから、人が歩いていても混雑さえしていない。
これは、むしろ上空から空撮したほうがいいんじゃないか、というくらいの長さである。
遠くに見えるのは、飯豊の山々だそうだ。
6000本の桜にはまだ及ばないが、全国クラスですごいだろうのになぁ。有名じゃないよな〜。
でも、それがむしろファミリー的なほのぼのムードの桜にしてくれているのかもしれない。
子供がスケボーで遊びながら通り過ぎ、お年寄り夫婦が並んでゆっくり散歩する。
ぼんぼりがなくても、それで十分な気がした。
ちなみに、私設らしいが、加治川の桜に関する物語はこちらが詳しい。



黒岩の夫婦桜
ほぼ満開。
春が早い今年だが、
背後の山々はまだまだ雪模様だ。


ね、満開でしょ。。


枝がすぐ目の前まで来ている。
4月19日
お腹も満たされ、本日のメインイベントに向かうことにした。
黒岩の夫婦桜は今年はどうかしらん。
今回は場所もちゃんとわかっているので、迷わずに行くことができた。
  
行ってみて、あらあら、県外ナンバーの自動車が何台か農道の脇に駐車しているぞ。三脚を構えたカメラマンがいるぞ、と驚く。
桜、残雪、田んぼの三点セットがそろっているこの場所はすっかりカメラマンたちの撮影スポットになってしまったようだ。
ただ、今年くらい気温が高ければもう田んぼに水を張っていてくれてもいい感じもしたけど、まだ水のない状態。しかも本日は曇天で桜も残雪も映えない。
我々は桜が見られればそれでいいのだけどね。
さて、2本仲良く並んだ桜は見事に満開状態だった。
田んぼの向こうから、木の足元から、とあちこちから見ることができるので、この桜はなんともお得な感じがする。しかも、枝が低い場所まで来ているので、花に包まれるし。
しかし、見ていて、あれ、と気になった。木の上から半分がなんだか花が少ないのである。あれ〜、上半分が咲いていないみたいじゃん。
ちょっと気になったので、いつもの場所よりも離れて見てみた。

  
ね、半分から下だけピンクでしょ。
どういう理由かは分からないが、2013年もやっぱり上の方は花が寂しい。鳥害かしらねぇ。
地元で大切にしている桜だろうので、あまり木のそばを踏み荒らさないように、やさしく観賞したいものである。
            



風巻神代桜
これだけ見事に葉桜だと、
文句も言いようがない。
せっかく青空になったのに〜。


おくての花が咲き残ってはいたけど。


でも、あいかわらず見事な幹だ。
花がない分、幹のすごさが際立つ。


4月26日
ほぼ蛇足ではあるが、翌週も一応桜を尋ねてみた。
完全に桜は終わっていると分かっていたんだけどね。
この日はカタクリの群生を見に糸魚川市まで行って、結局カタクリはまだ咲いていないのに、ちょっと離れた場所でイカリソウが咲いているのを見て愕然としたという、早春と初夏の混ざった経験をした日である。
春なんだかな〜、夏なんだかな〜、と思いながら、帰りがけなので、旧三和村の風巻神代桜に挨拶してみることにした。
えーと、初夏でした。
桜に着くまでの林道の脇にはイカリソウとチゴユリがどっさり咲いていて、その時点で桜はまず絶対咲いていないと分かる。

    

    

  
それでも、たどり着いた桜の木がものすごく立派で、つくづくよく残してくれていたなぁ、と先人に感謝したくなる。
やや緑の葉っぱが目立つが、むしろそれがうねうねとした枝や幹を際立たせて、この木のすごさを物語る。
木の周りにはエンレイソウやニリンソウが咲いていて、豊かな土地だと教えてくれた。

3月に始まった新潟の桜めぐりだが、この日で終了だ。
また来年、綺麗な姿を見せてほしい。

            


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