んがお工房の桜めぐり


2017年桜追いA
長野の桜たち

4月に入ると毎週桜を追う我々。しかし、今年は一番桜の見頃の15日頃を私の母と姉との母娘バス旅行に充ててしまった。これが見事に咲いていなくて、大ハズレだったのだが、事前に予約するバスツアーだから仕方がない。
すっかり傷心の私に翌週の桜のプランを練ってくれていたのはダンナである。
4月も後半ともなると、桜の見頃の地域は東北と思われがちだが、今年はどうも桜の開花が遅い。今見頃の桜が近くにあるんじゃないのか。
あった。長野県飯綱町。我々の住む新潟からは本当に近い北信州である。そもそも桜の名所ぞろいの長野県だ。きっとまだ見ていない素晴らしい桜があるぞ。



塩生のエドヒガン
(巡礼桜)
)樹齢約700年のエドヒガン。
長野市指定天然記念物。
この道は戸隠神社に至る道であったことから
巡礼桜という名前になったのじゃないか、
と推測されている。



説明看板によりば、
4本の株立になっていて、
そばに古い株もあることから、
その昔はもっと大きな樹木だったと
推定される。
それも入れると樹齢は1500年だそうだ。
いや、枯死した親株の年齢は別だろう〜。



小ぶりの淡いピンクの花がみっちりと咲いている。
まさに満開だった。
4月23日
須坂長野東インターを降りて、まず向かったのは、塩生のエドヒガンである。この週末に満開の桜を探してヒットしたのがこの古木だ。
ショウブと読むこの地名は長野の地図にも出ているので、そんなに探すのに苦労はしないだろう、と思っていた。
とりあえずナビに塩生の代表地点を入れる。
長野市内から国道19号の旧道、大町街道を通り、左にそれて行く。たった数分国道からそれただけで、あっという間に山間部になってしまう。
一応県道406号で、坂を上る途中にはゴルフの打ちっぱなし場もあった。このあたりはまだ道が広くて、左に流れる川沿いに桜などが満開に咲いていてとてもきれいだったが、どんどんと山を登って、道はどんどんと細くなっていく。
ものすごく心細い。
なにせ、まったく案内が無いのである。
桜の古木となると、今の桜めぐりのプチブームのなか、必ず看板があるはずなのだが。
住所の塩生というのだけを頼りに来ているので、本当にこの道なのかどうかも分からない。
かなり進んで、塩生の集落であるとナビが言い張るあたりをウロウロしたが桜はない。
県道406号をさらに先に進むと、ついに地名が塩生ではなくなってしまった。
ここじゃないのかもしれない。
塩生は甲と乙がある。結構広いのだ。
何かヒントがないかと戻ることにした。
戻る途中、ダンナがたしか途中に地図があったと言い出した。ちょっと路肩が広くなり、バスの回転場所かなにかのような広場になっている場所だ。そこに本当に小さくて目立たない、ざっくりとした地図があった。
おおおお、あったぞ、巡礼桜の文字。
どうやら、この道の先にあるのは間違いないらしい。戻った場所よりももう少し先のようだ。
と、いうことで逆戻り。またしてもうねうねした細い道を登って行く。
塩生甲の集落を過ぎて、もうちょっと登り大きく右にカーブすると、左側が開けて「日方」へ続く道が分岐している。そこの右側にこんもりと咲いているのが塩生のエドヒガンだ。
桜が咲いていれば、見落とさないと思う。とにかく県道406号沿いの右側で、小田切郵便局まで行ってしまったら行き過ぎ。
桜のもとにはあずまやもあり、駐車スペースも3台くらいならある。
我々が行った時にも、長野ナンバーの先客がいた。
小さな子供をつれた母娘で、子供が自分の背丈くらいまで伸びている桜の枝の間を走り回ってとてもかわいかった。

  

木の回りをぐるりと回ることもできる。
枝と枝の間から真っ白な山々が肉眼では見えたが写真では無理だった。戸隠かしらん、と調べてみたら、どうも方向的には北アルプスらしい。


ところで、県道406号に入ってすぐのゴルフ練習場の下に見事な滝を発見。地図上でも滝になっていないし、よくよく見たら人口の溝のようなものが上流にあるのだが、滝好きの目には滝に見えましたとさ。
桜が前景になって、本当にきれいだったよ。何かしら名前をつけてあげれば、もっと見栄えがするように道路脇を片付けてもらえるのになぁ。

  

   

今回は今見頃の桜にターゲットを絞っての桜めぐりである。なにせ、前週の母娘バスツアーの痛手が私の心に重い。
どうしても満開の桜で気持ちを晴れさせたい。
ということで選んだ場所は飯綱町。
長野市の巡礼桜を後にして、ナビの案内で善光寺の真ん前を通り過ぎ、飯綱町に入った。



天白社の
シダレザクラ

樹齢約150年のシダレザクラ。
天白社とは何かざっと調べたが、
起源の諸説ある民間信仰らしい。
何より、小さな丘と白い鳥居と
小さな社と腕を広げた桜。
全部含めて、とてもいい風景だ。



八分咲きかな〜。



枝の真下に入り込めるので、
見上げると桜模様の空になる。


飯綱町の桜といえば、地蔵久保のオオヤマザクラと袖之山のシダレザクラが長野県の指定の天然記念物である。
しかし、地蔵久保のオオヤマザクラは事前に調べたらすっかり樹勢が衰えて見るかげもないという。
また、袖之山のシダレザクラはまだ開花して間もなくて見頃ではない。
ということで、どっちもパス。
今見頃の3本の桜をめぐることにした。
しかし、県の指定くらいの桜でないと、詳しい場所がよくわからない。まあ、行けばなんとかなるだろう、というのが我々のやり方だ。
長野市内から県道37号を北上し、地蔵久保や袖之山の地名を通り過ぎつつ、県道366号へと右折する。
飯綱町の黒川という地名だけは分かっているので、ナビがその代表地までは連れて行ってくれる。もうちょっとで黒川というところで、ナビの地図の中に目的の神社の名前が出てきた。
天白社。そこにしだれ桜があるという。
ナビにある神社に向かって県道をそれる。
古き良き農村といった風情の集落をゆっくり走ると、あ、あったあった神社だ。道の左がわの空地を挟んで向こう側のちょっとした高台に石造りの鳥居があり、はっきりと天白社と書かれていた。
桜ももちろんあった。
鳥居の向こう側にふわぁっと両手を広げたような桜が立っている。
その向こうに赤い小さな社がたたずんでいて、なんとものどかな光景だ。
どうやったら天白社の前まで行けるのかわからなかったので、空地のそばに駐車して、空地をつっきって神社まで行った。
空地にはオオイヌノフグリの青い花が咲いていて、ほんとうに雰囲気がいい。
近づくと桜はまだ7分咲きくらいで、満開になったらもっときれいなんだろうなと想像できた。
社は高台なので、そこまで登ると桜の花ごしに集落を見ることができる。
さらには遠くに並ぶ白い山脈も見通せる。
長野はいいなぁ、桜の向こうには必ず雪山が見える。
だれもいないのをいいことに、あっちこっちから桜を堪能した。


  
  
天白社の丘からは桜ごしの集落が見下ろせる。

  

  家々の赤い屋根と青空と桜。絵本のような色彩になる。

  



長谷寺の
シダレサクラ

樹齢不明のシダレザクラ。
何より、鐘楼とのツーショットがいい。



もう少したつと、この枝の花も開くけど。


表に回ると、足元にスイセンなどがあり、
これもまたのどかな風景だ。


続いては長谷寺のシダレザクラだ。
ナビには神社やお寺はきっちりと入っているので、探しやすい。
もっとも、長谷寺は、県道366号に戻ってすぐに青い看板をみつけることができた。
牟礼方向に走っていると見つけづらいのだが、反対がわからだと、民家の塀に青い看板がとりつけられていて、入り口になる小路の目印になっている。
看板の案内通りに小路に入ると、すぐに墓などが見えてお寺の入口が左手にあった。駐車場、と書いてある矢印があるので、ずんずん自動車で入って行ったら、なんとお寺の境内の真ん前まで行ってしまい、そこに住職らしい人がラフないでたちでテントを張ろうとしていた。
桜を見に来たと自動車から告げると、本堂の先に駐車スペースがあるので、そこに駐車してくれ、とのこと。
確かにやや広めの駐車スペースがあった。
先客がいて、今まさに満開のシダレザクラを見上げている。
住職とその人たちが話している間に、桜の回りをぐるぐる回って好きなだけ撮影した。
小さなお寺だが、魅力的な鐘楼があり、桜とよく似合っている。
住職はこの桜がかわいくて仕方ない様子で、ご自慢の桜のようだった。
ちなみに住職はまだお若い。40代かな〜。張ろうとしていたテントも桜を見に来た人のためのものらしく、一人ではなかなか難しくて、と桜見学のダンナたちの手も借りていた。
ちょうどいいので、所在が分かりづらいもう一か所の桜の場所を聞いてみる。目印はないのだが、県道に出て県道がわに曲がらずにまっすぐに山の方に行けばある、とのこと。なるほど。
丁寧に教えてくださった住職に御礼して、長谷寺をあとにした。

  
  
この木も回りをぐるっと回ることができて、下に潜り込むこともできる。

   

  
  
お寺と鐘楼と桜はこんな感じです。
  



黒川 桜林の
エドヒガン

樹齢350年のエドヒガン。
飯綱町指定天然記念物。
この地域ではむしろ枝垂れていないほうが
珍しいかもしれない。
その昔このあたりは桜林と呼ばれていた。
その由来は名所になるほどの
桜の林があったとか。
この木はその生き残りと言われる。



360度から眺めることができる。
角度によって表情が違う。



これは来た方向を振り返る感じで撮影。
横に大きく広がって見える。



小ぶりの花がたくさんついていた。
まだ満開ではなかった。



山々を中心にしたら桜が目立たなくなってしまった。
でも、信州の桜っぽくて、好きだなぁ、
この風景。

長谷寺を出て小路を通り県道366号に出る。長谷寺を背にすると、右手が国道18号、左手が県道37号、ということになる。
で、ちょっとだけ左に行く。自動販売機が数台並んだ場所があり、その向かいに道路がある。その道路に入る。あとは山に向かってずんずん進む。
やがて右側が広々と田んぼが広がる場所になり、左側に開花時ならはっきりとわかる桜の木がある。それが桜林のエドヒガンだ。
説明看板が足元にあるのでよくわかる。
ナビ上で目印になるのは、大宮神社だ。
我々が行った日は八分咲きといった感じだった。
まわりが田んぼだけなので、スコンと晴れた青空にこの桜はとてもよく目立つ。満開だったら、さぞやきれいだっただろう。
遠くに見える山々はどこの山だろう。山の名前に詳しかったら、けっこうわくわくする光景かもしれない。
県道が狭いので、路駐するスペースがなく、桜の後方の道に自動車をとめたのだが、その奥にもなんだか桜っぽいピンクがある。
徒歩で1分もない場所の神社、大宮神社の中にもシダレサクラが咲いていた。ただ、こちらの桜はもう終わりかかっている。
小さいが趣のある大宮神社の赤い社に桜のピンクが似合っていた。
信州はいいなぁ。
どの桜も、どの桜もとても風情があって絵になるんだもの。

   
   
道から大宮神社方向に向かって撮影。わが愛車きゃっちゃんが写っている。

  
  
で、これが大宮神社。桜のピンクが見えるが散りかげんだった。

  
  
きゃっちゃん、出まくり。山々と桜とわが愛車。

ところで、飯綱町にカタクリの群生地がある、しかも今が見ごろだというので立ち寄ることにした。
ダンナがざっくりとした住所を調べていたので、ナビに案内してもらったら、あれれ〜、思い切り住宅地に案内されちゃったぞ。
どう考えてもカタクリの咲きそうな場所ではない。
しかし、ここは長野県。高低差があるのだ。
地図上で隣でも、崖の上と下ということがある。見た目では分からないのだ。
と、いうことで、とにかくぐるぐるあたりを回ってみた。同じ場所を何度か通った。で、何度目かに、看板を見つけることができた。
何かのイベントの看板だったが、飯綱の名所をウォーキングするようなものだったと思う。そこに矢印があり、その矢印方向に行ってみると、飯綱町花めぐりののぼりがあった。
こののぼり、天白社のシダレザクラにも桜林のエドヒガンにもあったやつだ。
行ってみると、仮設の駐車スペースがあって、カタクリ→の文字があった。
もう、どうやってたどり着いたのか、さっぱりわからないが、とにかくたどりついた。
徒歩で杉林を歩いて行く。10分ほど歩くと、カタクリの花が見え始めた。
ここか、と思った場所はすり鉢状になった窪地で、たしかにカタクリが咲いていた。その窪地にはあまり樹木がなくて、明るい。明るいので、なんだかカタクリはパサパサした感じだった。
うーむ、新潟の山々のカタクリを見ている身には、たしかに群生しているけどな〜と思える程度の群生地である。なんか、こう、弱弱しいのよね、カタクリが。きっとやや見頃を過ぎていたせいだと思う。一番いい時であれば、このすり鉢状の土地すべて紫になり、きっと圧巻なのだろう。
カタクリの大群生地を地元に持っている人間が他県に見に来るこたぁないだろう。
なんとなく、それを確認しただけだった。

  
緑色ののぼりは、飯綱花まつりと書かれている。これは桜の目印にもなる。

  
  
  たくさん咲き誇って見えるが、実は終盤。ちょっとカサカサしていた。

この後、我々はもう一つスケベ根性を出して須坂市に向かっている。
長野の北部といえば、米子大瀑布があるじゃないか。比較的新潟県から近い百選の滝なのに、この米子大瀑布にはけっこうフラれる機会が多い。一番近くでは、2015年の秋に行こうとして、すっかり紅葉の名所と化して有料のシャトルバスでなければ行けなくなってしまつていたので、長野まで来て行くのをやめてしまった、ということもある。
そもそも、一番最初にこの滝に行こうとした時もゴールデンウィークなのに林道が冬季閉鎖中だった。
ってことは、この4月23日ではまだ冬季閉鎖中なんじゃないか?
いや、雪は少なかったし、何よりあの頃よりずっと観光化されている米子大瀑布じゃないか。行けないってことはないだろう。
・・・・行けなかった。
しっかり冬季閉鎖中でしたとさ。2つも3つも通行止めの看板が立てられていて、絶対通るなよ、行けると思うなよ、と威嚇している。行きませんともさ。そんなにたくさん看板立てるくらいなら、せめて桜の頃くらいまでには除雪してよぉ。
予感はあったが、ちょっとがっかりしてしまった。



亀倉神社の桜
樹齢約200年のシダレザクラ。
須坂市指定天然記念物。

ほぼ満開。
我々が行った日は神社に向かって
左の桜がきれいに咲いていた。




こちらは向かって右の桜。
説明看板によれば一対の桜だそうだが、
こちらのほうが若干開花が早いようだ。
すでに葉っぱが目立っていた。




金毘羅山の桜
樹齢約200年のシダレザクラ。
須坂市指定天然記念物。
2本ある金毘羅山の桜のうちの1本。



萬龍寺の桜
樹齢約300年のシダレザクラ。
この日見た中で、一番見栄えよく
見事に満開だった桜だ。
高い樹高の花々が
信州の青空によく映えていた。

しかし、須坂に行ったのは無駄ではなかった。
米子大瀑布に向かう道に道を覆い隠すほど見事な枝垂れ桜があった。思わず自動車をとめて、撮影。
すると、その神社にはもう1本シダレザクラがあり、説明看板が設けられていた。
「亀倉神社の桜」。
綺麗に咲き誇っている桜とやや散りかけた桜2本で一対になって、須坂市の指定天然記念物になっているらしい。

  
  亀倉神社を萬龍寺がわから見る。杉林を背景に一対の桜が見える。

この桜を撮影するために自動車を降りて、ぐるりと見回すと、あらまあ、あっちにもきれいな桜がある。
田んぼを挟んで向こう側の墓地にもふわっとした桜が見える。
シダレザクラではあるが樹高の高い桜だ。

  
  これはたぶん、金毘羅山の桜のうちの一つ。こっちのほうが満開状態だった。

誘われるようにそちらに行くと、その桜は田んぼの向こうで近づけなかったのだが、続く墓地の傍らにも桜があり、そこにも説明看板があった。
「金毘羅山の桜」。
墓地に立っているだけあって、なんだか幽玄な感じのする桜である。最初に見えた桜と2本が金毘羅山の桜ということらしい。
金毘羅山は山頂に金毘羅神社のある標高727メートルの山だそうだが、どこが山なんだやら。とにかくこのあたりは、その神社の参道にあたるらしい。
ここまで来て、また首をめぐらすと、もっとすごい桜が見えた。
うわわわ、まるで芋づる式。桜が桜をつなげている。
ふらふらとそちらに向かって歩いて行くと、お寺の境内だった。
大きく高い桜の木の根元にも説明看板がある。
「萬龍寺の桜」。
近寄って首を大きくそらして見上げると、青い空にちりばめられた桜の花々がとんでもなく高い位置にある。そこに黒々とした幹が伸びていて、なんとも言えず美しかった。
実は米子大瀑布の通行止めを知る前にここに来たので、ゆっくりせずにばたばたと写真撮影だけして、この場所を後にした。
が、よくよく家に戻って説明看板を読んでみると、この場所は萬龍寺を核とした中世信仰遺跡にちなんだシダレザクラ群の場所だそうで、まだたくさん桜があったようだ。
そうとは知らずに、遠くの桜をカメラにだけ納めて、あとで見て、そうだったかもしれない、と見返してみても、すでにどれがどこにあった桜かよくわからないでいる。
もうちょっとゆっくり見てみるべきだったなぁ。どうせ、米子大瀑布には行けなかったんだから。
と、ちょっとだけ後悔だ。
まあ、須坂は近いので、またいつか、よく調べて来てみたいものである。

  
  萬龍寺にはさらに樹齢350年の桜があると説明看板にあったのだが、たぶんこれじゃいかなぁ。
  あとから知って、写っている桜を検証してみた。
  しかし、これ、たぶん上の樹齢300年の桜からめいっぱいズームで撮った遠くの桜なの だと思う。ちゃんと近づいてみればよかった。


結局その後は米子大瀑布に行けず、すっかり意気消沈。そのまま新潟に帰ることにしてしまった。それでも、思いがけない拾い物を須坂市で得ることができたし、飯綱という桜の穴場も知ることができた。
今回の桜旅は大収穫だった。



  
  亀倉神社の桜からは枝の向こう側に妙高山の白い頂が見えた。


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