んがお工房の桜めぐり


2017年桜追いB
須坂の桜たち

2017年は、当初桜は早いと予想していた。
しかし、ことごとく裏切られ、今年は例年より遅いじゃん、と、4月も終盤になって気がついた。
そんなわけで、例年ならもう葉桜が目立つゴールデンウィークの前半でも近隣の桜を追うことができた。
4月30日。いよいよ今年の桜追いもここまでだ、という日、ダンナがぜひ行ってみたい桜があると言う。ちょうどこの日が満開という情報もある。
素桜神社の神代桜。10年以上も前に訪れたことのある桜ではあるが、満開の姿は見たことがない。
神代の名がつく桜はいくつかあるが、もっとも近い素桜は今どうなっているのだろうか。



素桜神代桜
樹齢約1200年のエドヒガン。
国の指定天然記念物。
桜の近くに恐ろしく古びた文部省の看板があった。
指定が昭和10年というから、
本当に古くからの国天である。


スサノオノミコトが使っていた
桜の杖をこの地に刺したら
根付いたという伝説があるとか。
そりゃ、古いわ。


入口にはこの素桜を題材にした
謡曲「素桜」の説明もあり、
ご神体は「八坂刀売命」だそうな。


それにつけても、枝張りも見事。
とても1200年の老木に見えない。


すぐそばまで満開の枝が下がっている。

4月30日
以前、素桜の神代桜を見に長野を訪れたのは2004年のことである。まだナビはなく、ざっくりとした地図と道端にある案内看板だけを頼りにたどり着いた。
今回はナビに案内をまかせたところ、こんな場所だったっけ〜?という道を進んで行くことになった。
以前はたしか県道76号線の桜という集落から行ったと思うのだが、今回ナビは長野市内から戸隠バードラインがわから入る道を案内したらしい。
ほぼ自動車1台くらいしか通れない斜面にくっついているような道を走って行くと、いきなり大きなのぼりが見えて、満開の桜が迎えてくれた。
おお、素桜さまはご機嫌麗しいぞ。
満開だからのぼりが立てられているのか、それとも神社の祭礼の時だったのかはよくわからない。
2004年に来たときは閑散としていた桜のまわりにたくさんの人がいてちょっとびっくりした。
道が広くなっている場所に路駐する。人の数のわりに道路にとまっている自動車の数が少ないのが助かった。
神代桜は道路からちょっと高い場所にある神社の前にいらっしゃる。というか、素桜神社というから、神代桜がそもそもご神体なのかもしれない。
見上げると、青空のなか、満開の花が音をたてそうなほどみっしりと咲いていた。
とにかく、前に来たときは満開ではなかったので、さみしい印象しかなかった。せっかくの樹齢千年を超える桜なのに、だれも見なくてもったいないなぁと思ったものだ。
が、今は賑やか。
別段屋台が出ているわけでも、根元で宴会が繰り広げられているわけでもないが、ひきもきらず人々が神社にお参りして、神代桜を見上げていた。
前に来た時には気がつかなかったが、桜の回りをぐるりと一周回ることができる。祠の横がわには桃の畑などがあり、本当にのどかだ。近隣の人が植えたのか、チューリップなども咲いている。
華美でも騒々しくもない桜の愛で方が、神代桜と呼ばれる老木にふさわしいような気がした。

  
  
たくさんの支柱に支えられている。

  
  
祠にお参りする人もたくさんいた。

  
  
どうよ、この満開の花たち。

 
 時々、奇形花がつくのも珍しいんだって。
   

つづいて、この日にまだ見頃の桜を探したところ、25日にたまたま通っていいシダレザクラを見られた須坂市にあることが判明。須坂であれば、ほかにもまだ桜が見られるかもしれない。
国道18号をまっすぐ東に向かえばすぐに須坂市に入る。
今回は迷いもせずに楽勝で桜めぐりができそうだ。



弁天さんのしだれ桜
樹齢約250年のシダレザクラ。
須坂市指定天然記念物。
どう、カッコいいでしょう、この角度。


池に写る姿を撮りたかったんだけど。


池がわの角度はちょっとかっこよくない。


さらに上に登って、後ろ側から撮影。
この角度もいいなぁ。



やっぱりこの角度が一番いい。
とにかくカッコイイ桜だ。

須坂市に入って、目指すのは弁天さんのしだれ桜だ。
さすがに4月30日では市内の桜のほとんどが見ごろを追えているが、やや標高の高い場所にあるこの木は今が満開らしかった。
県道346号線沿いには大きな桜の木がいくつかあり、「豊丘五大桜」があると須坂市のホームページで伝えている。とりあえず、今回はその5本は押さえておきたいと思っていた。
で、まず一番奥の弁天さんのしだれ桜に行こうと思い、県道をずんずん進んで行ったら、目印の豊丘小学校のあたりにちゃんと道案内があった。
それがなかったら多分たどり着けなかったんじゃなかろうか。
というくらい、細い道を山の上のほうに向かって進んでいかなくてはならない。
なんか、先週もこんな感じの道、通ったよな〜という長野の山の斜面の畑の間をぐねぐねと標高をあげて行く。
あれ、前方がなんだかピンクの花が多い場所があるぞ、と思ったら、そこが弁天さんのしだれ桜のある場所だった。
かなりたくさん駐車できるスペースが駐車場になっていて、地元の人だろうか、お土産などを売っていたらしいテントも出ていた。ただ、もうお店はしまいかけていて、お茶だけサービスしてくれた。
駐車スペースから歩いてすぐに弁天さんのしだれ桜になる。
ちょうどこの方向からだと真横から見る感じになるのだが、この角度がいい。
歌舞伎役者を見栄を切っているような恰好なのだ。
どうよ、この咲き誇った私を見てよ。
そんなふうに桜が言っているように見えた。
すごいなぁ、長野。まだこんなとんでもなくきれいな桜を隠していたか。
ものすごく桜好きでもなければアンテナにひっかからない桜である。が、これは本当に見栄えのする桜だ。
周辺が公園というほどではないにしても、綺麗に整備されて、手厚く守られているのがわかる。
手前に弁天池があり、この池は湧水なのだそうだ。
池のほとりまで行ってみると、本当に小さな水神様が祭られていた。池も小さな池で、水面に写る桜が撮影できるかしらん、と思ったが、ちょっと角度が悪いようだった。
  
  
小さい水神様が祭られている。

弁天さんのシダレザクラは斜面に立っていて、さらに標高の高い方向にはもう1本シダレザクラがある。こちらはもっと若い木らしい。

  
  
上の方に立つ若いシダレザクラ。

  
  
若いが、ふわっと咲いていて、とてもきれいだ。

そこまで登ってみると、桜の枝ごしに弁天さんのシダレザクラが見下ろせる。そして、そのシダレザクラの向こう側に広がる山々と田園風景も見渡せる。
下草がきれいに刈られていて、宴会するにはもってこいの状態だが、この桜の木の下でもお花見のシートを広げる人はいなかった。
桜見学の我々には実にありがたい話だ。
池の周りには鳥居などもあり、何種類もの桜の木が植えられていて、実に華やかだ。
あとあと考えると、今シーズンで一番の拾い物の桜だった。
いい桜に出会えたなぁ。

  



延命地蔵堂の桜
樹齢約400年のアズマヒガン。
須坂市指定天然記念物。
惜しいかな、すでに蕊桜だった。
しかし、満開ならさぞ見事だろう大きさだ。



説明看板に
色々な縁起を持つ由緒深い桜、とあった。
色々な縁起って何〜。



咲き残っていた花は大振り。
咲いていたら圧巻だっただろうなぁ。

次に目指すのは、延命地蔵堂の桜。
これは、行く時にすでに確認済みだった。なにせ、目標にしていた豊丘小学校の真ん前にある桜なのだ。
もう散っているね、とわかっていたのだが、とりあえず自動車を降りて、撮影する。
何人かの人がやはり桜を見に来ていた。
ところで、桜の木はわかったけど、地蔵堂はどこにあるんだ?
当日は桜しか目に入らなかったが、今になって不思議だ。
高低差のある地形なので、下のほうにでもあったのかしらん。
もうすっかり散って、蕊の目立つ桜の木に野鳥が来て遊んでいた。あとで調べたらコゲラという鳥だそうな。
こういうのも見られるから桜めぐりは楽しい。

  
  
小学校の向かいの坂道の途中に桜は立っている。

  
  
上の写真の反対側から撮影。広く枝を伸ばした木だ。

  
  
コゲラがつついていた。日本最少のキツツキで、一番身近なキツツキだそうだ。




洞入観音堂の桜
樹齢も種類も不明。
こちらもすっかり散っている。



幹の細さから若い木だと思うけど。
背の高い木で、しだれ具合もふわりとして
満開時には優雅で美しいと思う。





長妙寺の桜
たぶん、これがその桜と思う。
うーむ、ほぼミイラ。
只今樹勢回復中。

説明看板によれば、
樹齢400年のシダレザクラ原種。
須坂市指定天然記念物。


須坂市の説明看板はちゃんと
布でぐるぐる巻の木の前に立っている。





馬頭観世音の桜
豊丘五桜でも市の指定天然記念物でも
ありませんです。
須坂市のHPの桜マップにも
載ってません〜。



背の高い木で、
回りを過ぎに囲まれているので
満開時にはきれいかも。

ここまで来て、もうお気づきだろうが、実はこのあとは桜はほぼ散っていた。
標高が700メートル以上の場所にある弁天さんのシダレザクラが満開ということは、その下の地域にあるほかの桜はほぼ散っている状態なのである。
でも、まあ、せっかく豊丘五桜を見るという目標をたてたのだから、行ってみよう、と自動車を走らせた。
次に向かったのは、洞入観音堂の桜。
この桜は五桜のうち唯一市の指定天然記念物ではない桜で、つまり、説明看板のない桜である。ということで、樹齢も何もさっぱり分からない。
どちらかというと、観音堂のすぐ前に立っている銀杏の木が指定天然記念物で、こちらのほうの説明がされていた。

  
  
洞入観音堂の向こうに桜。

  
  
手前にそびえるのが銀杏の木。樹齢約300年だそうだ。

次に長妙寺の桜。ここはお寺さんなので迷わずに行くことができる。なかなか立派な山門のあるお寺で、入るのにちょっと勇気がいる。
が、どこもそうだが、お寺はたいていオールウェルカムである。

  
  
長妙寺の山門。立派だわ〜。

階段を上って、境内に入ると、いくつか桜の木があった。
一番目立つ鐘楼と倉の前にたつ桜をこれだね、と撮影していて、ふと背後に妙な気配を感じた。いや、ホント、感じたのよ。
布でぐるぐる巻きになったほぼ人と同じくらいの背丈の木。
上の方だけ緑の葉っぱの出ている枝がぴょんぴょん伸びている。
え、こいつ。
間違いない、桜の木だった。
布の下にある幹の感じは古くゴツゴツしている。
あ、お前だったんだ、このお寺の老木は。
平成21年に書かれた説明看板には樹高7.5メートルとあるが、バッサリと切られてその面影はない。
これが樹勢回復のための措置で、これから勢いを取り戻してくれることを願うしかない。
我々がこの桜だと勘違いした桜はどうやらこの木の子孫らしい。
そういう意味では新しい命を未来につなげてはいるのだけれど。

  
  
おそらく子孫だろうシダレザクラ。

  
  
根元にはイチリンソウも咲いていた。

さて、最後に残ったのは、大日向観音堂のシダレザクラ。
写真で見る限りではかなり立派な桜のはずだが、もちろんこっちも見頃は過ぎているだろうと予想できた。
その予想が大失敗を招いた。
いや、ちゃんとナビで観音堂という名称がある場所に行ったのよ。
ナビはちゃんとそこだって言ったのよ。
で、そこにもちゃんと見頃を終えたシダレザクラがあったのよ。
我々が大日向観音堂だと勘違いしていったのは、馬頭観世音でした〜。

  
  
実は当日は神社名すらよく確かめていなかった。馬頭観世音。

県道346号沿いにあるほんの小さな神社で、どうやって自動車で行くんだ、といった感じのほっそい道を無理やり入って、民家の庭なんじゃないかという参道を犬に吠えられながら歩いて、背の高い見頃を終えたシダレザクラを撮影して満足していた。
考えてみれば、今まで市の天然記念物の桜にはちゃんと説明看板があったじゃないか。でも、洞入観音堂の桜を見てしまったら、それとほぼ同レベルの桜だったもんで、きっとこれだと思いこんでしまったのだ。
あーあ、大失態。
ま、仕方ないか。どのみち見頃ではなかったし。
この次は見頃の時を狙って来ればいい。
ちなみに、大日向観音堂は、どちらかというと大日向神社で検索したほうがよいらしいです。
なんとも残念な締めくくりになってしまった豊丘五桜めぐりだった。


ところで、滝好きは桜で長野まで行ったついでにやっぱり滝を見に行っている。
須坂市にある米子大瀑布は前に来た時に5月にならないと林道が開通しないのを知っていたので、もちろん行かない。
ここまで来て、一番見ておきたい滝といえば、苗名滝である。
ちょっとだけ高速で新潟方向に進めばもう妙高だ。
雪解け時期の苗名滝はさぞ豪快に落ちていることであろう。
と、遊歩道を歩いて行く。さすがゴールデンウィーク、滝に向かう道には観光客の数も多い。
が、しかし、名物の滝前の吊り橋を渡ることができなかった。
というのも、吊り橋のかなり手前で積雪のため遊歩道が通行止めになっていたのである。
確かにその先はまったく手つかずになっていて、雪が積もったまんま。
今の季節であれば、雪もしまってハマってしまうこともないとは思うが、さすがに大勢の観光客の見ている前で強硬突破するつもりにもならずに、その場で見えるだけの苗名滝を撮影して退散した。
この季節の苗名滝には何度か来ているが、遊歩道が途中で行けなかったのはこれが初めてである。
やっぱり今年は山間部は積雪が多かったんだなぁ。


    
  通行止めになった場所からの苗名滝。まだ吊り橋にはかなり距離がある。

    
  中からもう積雪があって、雪の上を歩いた。これが通行止めのロープ。
    


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