んがお工房の桜めぐり
2019年桜追い@
岐阜の桜たち
2019年の1月2月は新潟の平野部では記録的な暖冬だった。とにかく雪が降らない。ほぼ積雪しない。今まで雪の少ない年もあったが、これほどいつまでも積雪しないのも珍しかった。 こんなに暖冬であるなら、きっと春も早いだろう。 実際、早春は早く訪れた。里の雪割草たちは例年よりも2週間ほど早く見ごろになって、3月中旬から「あったかいね、」と、言いながらかわいい花たちを楽しんだ。 順調に春が進めば、桜も早いだろう。関東では3月のうちに満開になった桜のニュースが流れたし。 いつもの年であれば、4月の一番最初のお休みには雪割草を見に行くのが定番になっていたが、今年はもう見終わってしまった。が、近場の桜はまだまだつぼみ。 私とダンナがそろって土日とお休みになるのは珍しい週末、どう過ごすか悩めるところだ。関東の桜は散っている。では、今見ごろの桜はないものか。 ありましたとさ。 なんと、薄墨桜が見ごろというのだ。 薄墨桜だって? 岐阜県だろう、それ。いくらなんでも遠くないか? 週末には必ず老母の手伝いに行かなくてはならないので、泊まるわけにはいかない。日帰りできる距離ではないだろう。 しかし、見たい気持ちもあった。 薄墨桜は過去に1回しか見たことがない。2003年なので、なんと、16年も前のことになる。 あの、懸命に生きているおばあちゃんが、その後どうなったか、気がかりでならない。 と、いうことで、行けるだろうという簡単な決断で行ってきましたよ、岐阜県。 |
中将姫請願桜 国指定天然記念物。 樹齢約1200年のヤマザクラの変異種。 名前の由来については、右欄をご覧下しさい。 丸く形作られる姿はやっぱりヤマザクラ。 花はこんな感じ。 20〜30数枚の花弁がつくそうだ。 葉っぱが赤い感じで風情がある。 こちらは、二世。 エンデバーで「きぼう」に運ばれた種から わずか2つだけ発芽したものだそうだ。 請願桜は実から発芽しない桜なので、 奇跡だと新聞記事になつていた。 でも、花は請願桜に似てないのよ。 一重なの。 ま、似てない親子もいるからな。 公園内のあちこちに咲いていたツツジ。 コバノミツバツツジというツツジだそうで、 大洞の群落は岐阜市の天然記念物になっている。 |
4月6日 どうせ岐阜に行くなら、岐阜県にある国の天然記念物の桜を見倒してこようという計画のもと、午前7時過ぎに自宅を出発。最近早起きがさらに苦手になってね〜。このスタートで回りきれるのかしらね。 まあ、13年前には全面開通していなかった東海北陸自動車道が開通しているのでいくらかは時間短縮できる。 とはいえ、やっぱり岐阜は遠かった。 関ICを降りて、最初の目的地である岐阜市大洞の願成寺に向かう。 我々はナビに案内してもらったが、ここがちょっとだけわかりづらい場所にあった。 ただ、さすがに桜の開花時だけあって、道路の脇に登りが立っている。それをたどれば行けないこともない。 国の指定天然記念物ということで、どれほど混雑しているかと構えて行ったが、願成寺前に着いたらそれほど自動車はなかった。 願成寺の駐車場というのがよくわからなかったので、そこから通じている大洞霊園方向に少しだけ走ったら数台自動車が止められているスペースがあったので、そこに駐車する。 願成寺前の道路はそのまま霊園へと通じていて、霊園そのものも大きな公園になっているらしかった。 自動車を降りて願成寺へ。 あれ、お寺と思ったがな、鳥居があるな。 鳥居をくぐらずにその向こう側にある石段に行く。なぜかと言えば、そっちに「中将姫請願桜」と書かれたのぼりがたくさん立っていたから。 まず鳥居が見える。 その隣に石段がある。。 説明看板。ものすごく詳しく書かれていた。 石段を登ると、あらまあ、すぐに桜があった。 思っていたよりも小さな桜の木だった。 ソメイヨシノではなくて、山桜系のこんもりと広がる形をしている。葉っぱも同時に出ているし。 三々五々人が桜を見に来ては見上げているが、実にのどかな感じだ。 桜の周りをぐるりと一周できるので、あちこちから堪能できる。 中将姫請願桜とは変わった名前だが、由来はこうである。 あるところにとても美しい中将姫という姫がいたが、嫁入り先の姑がたいそう意地悪であまりにつらく当たるのでこのままでは殺されてしまうと逃げ出し、諸国を転々としていた。そんななか願成寺にたどり着いてしばらく逗留したが、長旅からか婦人科系の病気になった。そんな折、寺の観音様に祈ったところ、すっかり完治したので、お礼にと桜を植えて、私の代わりにずっと観音様を守ってくれと何日も祈ったそうだ。 姫は同時に菩薩さまにはこの桜の花や葉をもつ婦人確認゛あれば女にしかわからない心身の悩みから解放してやってくれ、と願ったのだそうで。 このお話、現代にもう少しクローズアップされてもいいんじゃないか、と思うくらい感銘を受けるものだと思った。なにせ、千年の昔に女特有の悩みがあるからそれから解放させてやってくれと願っているのだ。すごい。 ちなみに、請願桜は今では天然記念物なので花も葉っぱも取ってはいけなくて、開花時に寺が採取して後日お守りにするのだそうです。悩みのある女性は問い合わせてもいいかも。 しばらく写真を撮影して、ダンナがまだ熱心に撮影しているのを見て、私は気になるものに向かった。 立った一つだけ出店が出ていたのよ。 きれいな和菓子の出店。 これがまたおいしそうで。 イチゴ大福をはじめとして、数種類の和菓子があって、つい買ってしまいましたとさ。うふふ。花より団子だわね。 その出店の裏側方向に1本の若い桜が植えてある。たぶん地元じゃ有名な話なんだろうが、これが宇宙に行った請願桜の二世だそうだ。 あれ、請願桜は八重なのに、こいつは八重じゃないじゃない。 あとあと調べたら、そもそも請願桜は変異種なので、二世の花びらの数が違うのは当たり前らしい。ちゃんとDNA鑑定して二世とはっきりわかっているんだって。 時刻は願成寺に到着した時点でもう正午をだいぶ回っている。そろそろお昼にしないと。 長距離の桜遠征なので出費を抑えるためにおにぎりを持参している。 どこか食べられる場所はないかな。 どうも、霊園の奥に展望台というのがあるらしいぞ。 大洞霊園を含んだ大きな土地が公園になっているらしく、自動車でずんずん登って行くと展望台近くの駐車場になった。あちこちに紫のツツジが咲いている。 少しだけ徒歩で登ると、鉄筋の展望台が出現。ベンチもあって、ランチにはちょうどいいではないか。 展望台とはいえ、樹木であまりよく景色は見えなかった。 お昼とさっきの和菓子も半分食べて、実に満ち足りた気分になった。よし、エネルギーも充填したし、次は薄墨桜だ。 展望台。 おにぎり、ラーメン、いちご大福、ピーナツ餅、しょうゆ大福、豆大福。美味、美味。 |
根尾谷薄墨桜 国指定天然記念物。 樹齢約1500年以上の彼岸桜。 学者さんによって、品種の鑑定が違うそうで、 ムレヒガン、エドヒガン、ウバヒガン、 と様々。 国指定天然記念物のマークの入った 立派な銘碑。 この幹のすごさは、滝桜や神代桜と同じ 年月の重みを感じさせる。 支柱の多さも薄墨桜の特徴だ。 なにせ、雪深い場所なのだ。 それでも、我々が行った直後に雪が降り、 根尾谷でも積雪した。 開花していたので雪の重みが増し、 大きな枝が折れてしまったそうだ。 がんばれ、ばあちゃん。 花が終わりかかると、薄墨色になるそうだ。 よくも名付けたり。 これはたぶん、正面寄りかな。 こっちは裏側。 観音堂の近くから撮影。 満開ですわよ。 見事。 |
さすがに薄墨桜さまは天下の名木、渋滞は必至だ。 しかし、三春の滝桜などもそうなのだが、有名であればあるほど、交通や駐車場のさばき方もうまいもので、案外ストレスなく行きつくことができる。 一度来たことがあるにしても、16年前。行き方も周辺の様子もすっかり忘れているので、ナビに任せる。 岐阜市から本巣市に向かうので国道157号を利用するが、薄墨桜の公園に入る橋までは本当に渋滞していなかった。根尾川を渡る橋でピタッと止まったが、もっとひどい渋滞を覚悟していたのでそれほど焦らない。 少しずつ進んで行き、けっこう近くの駐車場に入ることができた。協力金500円を支払って駐車。 そこから坂を上って、いろいろな屋台が並んでいる一角になって、初めて、あ、こんな感じの場所だったな、と思い出した。 屋台を通り抜けると、緑の芝生が広がり、すぐに薄墨桜が見通せる。 こんな坂、あったっけ〜と歩く。 あ、咲いてる咲いてる。 わあ、満開だよ。 見事だな、おばあちゃん。 まだまだ元気だねぇ。 たくさんの人たちが公園になっている薄墨桜の周りにいて、ゆっくりとくつろいてい゛る。いいねぇ、おばあちゃん。咲いた甲斐があるでしょう。 時刻はすでに午後3時。 春とはいえ、まだ4月のはじめなので、そろそろ太陽の光が夕日の色を帯びてきている。 それがまた薄墨桜の花を温かみのある色にしてくれているようだった。 この桜のいいところは、ぐるりと一周できること。 全方位から見ることができる。 どの角度の姿が一番好きか人それぞれの好みが分かれそうだ。 桜の背後に神社があって、神社と桜の間にあたる場所にもう一本大きな桜の木がある。 大正12年の観音堂建立の際に植えられた薄墨桜の二世だそうで、さすがに若いだけあって勢いがある。おばあちゃんの後ろにすっくと立って、おばあちゃんを豊かに支えている感じだ。 二世桜。この子の幹には触れる。 右側の高い位置にあるのが二世桜。いいコンビだと思うよ。。 しばらく桜を堪能して、ベンチで大福の残りを食べて、この場は撤収。次は揖斐二度咲き桜だ。 絵画を描いている人もいた。 |
揖斐二度ザクラ 国指定天然記念物。 樹齢は不明。 一代目は1833年に暴風雨で倒れ その根元から生えた二代目が 国の天然記念物に指定されたが 1934年に枯れてしまった。 現在その二代目の根元から生まれた 若木を育てた4本があるが、 平成21年に育成地と育成地内の 同種の桜すべてが天然記念物に 追加指定された。 周辺は公園になっていて、 大切に育てられた二度桜が植えられていた。 これは一重の桜。 これは一重と八重の間みたい。 大野町の二度ザクラのページはこちら |
実は以前に来た時に二度ザクラは見ていたような気がしていた。うっすらと、とても小さな1本の木が道路の脇にただ立っているだけ、という印象があったのだ。たぶん、それはどこかの別の桜だったのだろう。 今回来てみて、来たことないな、ここは、と思った。 しかし、二度ザクラはやっぱり小さかった。決して巨木ではない。 巨木ではないが、1本でもなかった。 何本かの桜の木が道路わきの小さな公園的な場所に立っている。 どれが二度ザクラよ? 説明看板があった。 二度桜を探したい人はこの看板をよーく読むといいです。 よーく読まないとわからないのだが、最初の天然記念物に指定された木はもうなくて、その子孫が4本あるそうだ。 そして、根元から若木が生まれるので、育成地を整備して、さらに同種の桜を増やした。平成21年に4本に加えて育成地と育成地内の同種の桜も天然記念物に追加指定された、とある。 追加指定か。それはよいことだ。 ならば、金沢の兼六園にある兼六園菊桜は本当になぜ国の指定から外れてしまったのかよくわからない。 さておき、二度ザクラの意味とは。 この桜は珍しい桜で、一本の木に八重や一重、二重の桜が同時に咲く。 その中でも八重桜の中心部分にさらにつぼみがポツンとできているものがあるのだ。いわゆる二段咲きで、外側の花が終わる頃内側のつぼみが開き、小さな花を咲かせるのだそうだ。 町のホームページによれば、遅咲きの八重の中にまれにあるそうで、年によって現れるのが多い年と少ない年があるそうだ。また、だいたいこの枝の花に現れるという傾向もあるらしい。 これなんか、八重なんだけどな〜。偶然写っていないかと写真をよくよく調べてみたが写っていなかった。 我々が行ったときにも数組の人が二段咲きの桜を探していたが、なかなかないようだった。地元のおばさんが見たことがあるのよ、本当にぽつんとつぼみが中のあるの、と言って一生懸命探していた。 地元の人でもなかなか見つけられないとは、今年はあまり出現しない年なのかもしれない。というか、我々の行ったときはまだ遅咲きの八重が咲いていないときだったかもね。そのへんの情報をきっちりと勉強していかないと、貴重なものは得ることはできないのだろう。 時刻は午後四時を大きく回り、もう日没も近くなってきた。実はまだあと一つ予定している桜があるのだ。 日が暮れる前に行かなくちゃ。 |
桜会館の枝垂れ桜 樹齢は不明。 霞間ケ渓で唯一開花時にライトアップされる木。 何本もの支柱に支えられていて、 けっこうな老木だと思われる 夕暮れ時に見に行ったので、 幽玄に見えた。 芝桜がわから全体が見える。 幹はそんなに太くない。 手前が桜会館。 斜面に立っているので、満開なら 手に取れる場所に花が来るだろう。 まだまだ花は咲いていたんですけどね。 足元にはサクラソウ。可憐。 池田町の霞間ケ渓のページはこちら。 |
最後の目的地は霞間ケ渓の桜だ。「かまがたに」と読む。 こちらは、多くの天然変異種を含む桜の植生地として国の天然記念物に指定されている。 さらに国の名勝にも指定されている場所である。 だから、行けばわかると思っていた。 きっとたくさん人が行っているはずだ。 えーと、わかりませんでした。 実は国指定の天然記念物にありがちなのだが、きれいだとかでっかい、とか樹齢がかさんでいるとか、そういう桜ではないことが多い。ほかに無い、というのが指定される大きな理由になっている。 つまり、人が見てもすごいなぁ、と思えるものは少ないのだ。 霞間ケ渓もそうだったか・・・ 行けばわかる、という我が家の理念のもと、とりあえず近くであるはずの道の駅池田温泉に行く。 いろいろなお店のある道の駅でなかなか楽しそうだったが、観光案内的なものが見つからず、そこから歩いて行けるのだという事前のざっとした下調べからこっちの方向じゃないの、という方向に歩いてみた。 あれ〜。 なぜかどんどん山を登って行くのだが、まったく桜の名所的な場所に出ない。池田温泉の本館らしい建物を通り過ぎてもまだまだ山。 もう一度戻って、よくよく探してなんとか地図を入手。えーと、道の駅の手前の道を曲がってかなり進む。ってことは、自動車でないと無理だ。 どこにあったんだ道の駅から歩いて行けるみたいな情報は。 とにかく自動車に乗り込んで、地図の案内どおり、池田ふれあい街道というほっそい道に入り進む。これがけっこう進む。どんどん進む。 ええーー。桜なんかあるのか〜? ありましたよ。 進んで行くにつれ、だんだんと山っぽくなり、さらに進むと左側が市街に向かって下がる斜面になっていて、ほぼお茶畑。右側が芝桜が植えられた開けた場所になった。 茶畑。奥に消防の煙が見える。 自動車が路肩に駐車されていて、どうやらここが霞間ケ渓らしかった。 きれいに区画された駐車場もないので、とにかくほかの自動車のとめられている場所に我々も入り込んだ。 桜は? 芝桜あるけど。 夕暮れの薄闇の中、目をこらすと、斜面の上のほうに桜の木があった。大きな枝垂れ桜の木だが、もう見ごろを過ぎている。 だが、あれがシンボル的な桜会館の枝垂れ桜だろう。 足元の芝桜がイマイチまだ満開といいかないのが惜しいが、これが満開で芝桜もきれいならとてもきれいだろうと思う。 芝桜と桜の樹林。 枝垂れ桜の下まで行ってみたら、その足元にはサクラソウらしき花が楚々と咲いていた。桜の足元はダイコンソウかカタクリと思っている私には新鮮だった。 いやしかし、これだけじゃないはずなんだか。 桜の樹林があるんじゃないのか。 うろうろしていると、茶畑のほうで地元の消防団が焚火だかキャンプファイヤーだかを消化していたりして、消防車などが道路わきに止まっている。その陰になって、指定名勝の看板が立っていた。 ちゃんと看板には国の名勝と書かれている。 消防車に隠されていたか〜。 ってか、暗くなってしまって、桜の樹林の桜がわからなかったのだ。 そもそも自生桜樹林ってば、意外と中に入ってしまっては桜そのものがわからないのだ。新潟の栃平桜樹林や小山田桜樹林だって、遠くから見たほうがきれいじゃないか。 で、これが看板の奥の桜樹林。桜っぽくないじゃん〜っ。 ま、ここは、とりあえず岐阜の国天を見倒すためのスタンプの一つと考えよう。 めでたくスタンプを押し終えて、あとはお風呂に入ってご飯を食べて新潟に戻るだけである。 お風呂といえば、もう池田温泉しかないでしょう。また来た道を戻って池田温泉でそこで晩御飯も食べてしまって、一気に新潟に向かった。 家に着いたのはぎりぎりその日のうちでしたとさ。ああ、疲れた疲れた。 でも、新潟ではなかなか見られない花たちを見たわよ。 池田温泉のHPはこちら |