んがお工房の桜めぐり


2025年桜追いA
福島市周辺の桜たち

2025年の桜追いの第二弾、ここしばらくの桜の開花状況の例に習えば、4月の第二週目の週末は、新潟県の我が家の近隣の桜が満開になり、福島、長野の主だったところの桜もいい具合に咲く頃である。
そのため、予定では近場の桜をサクっと見られる週末になる予定だった。
だというのに、寒の戻りである。
こいつのせいで、2025年は桜の開花が全国的に遅れていた。
頑張って予定を考えなくても福島や長野ならたくさん一本桜がある。ということで本当に全くどこに行くか考えていなかった。
4月12日。
咲いてなかった。
近隣の桜はまだ見ごろではなかった。
なんてこった。今咲いている桜はどこだ。
大慌てで探しまくる。
幸い、福島県内でも比較的早めの開花になる福島市の桜が見ごろだった。
しかし、福島市、どんな桜があるんだ?
慌ててほぼ前日にリストをあげて、桜追いを開始することにした。
ところで、福島市は、新潟県からすると比較的遠いほうの福島県である。
真ん中に磐梯山や吾妻山があるので、ぐるっと回らなくてはならないのである。
ルートとしては、磐越道で郡山まで行き、東北道で北上して福島市に入るのが一番当たり前になるだろう。
だが、当日、なんと東北道が工事渋滞の情報が入った。
磐越道を走っているうちに、東北道の工事渋滞の距離がどんどん伸びて行く。
マズいなぁ、渋滞にハマるのか?
いや、しかし、福島市に行くのは、別のルートもあるのだ。
磐越道を猪苗代高原で下りて、国道115号を利用して土湯トンネルを通り抜けて行くルートである。
もちろん、高速道路ではないので、時間はかかる。
渋滞にハマるか、一般道の最短ルートを使うか。
後者を選びました。
いや、もしかしたら、早かったのかもな、こっちのほうが。
そう信じることにしよう。






慈徳寺の枝垂れ桜
市指定天然記念物。
樹齢約250年のしだれ桜。
お寺の敷地に立っているが、
お寺が高台なので、枝垂れた枝が
自分の立つ根本よりも下に下っている。
その分、とても大きな桜に見える。



花。
愛らしい丸みを帯びた花たち。



みっしり咲いていましたよ。



下の菜の花から見る。
というアングルを狙っている
カメラマンが多数いた。



幹。
意外に細い。



見上げる。
枝の曲がり具合が雪国だと物語る。



支柱で枝が支えられている。


4月12日
国道115号を選んだため、桜めぐりの予定が多少変わった。
福島市で一番の桜の名所といえば花見山で、この日も満開状態。
たぶん、福島市で最も混雑する花の名所である。
その名所に立ち寄る予定はなかったが、その名所を別の場所から見下ろせる公園があるらしく、まだ混雑が多少少ないであろう午前中のうちにそこに行く予定でいた。
そのそばには「茶屋の桜」という一本桜もあるはずだし。
まず最初にそちらに行くためにルートを考えていたのだが、福島市に入るのが国道115号からになった。
ということは、実は余裕があれば立ち寄るつもりだった慈徳寺がルート上にあることになる。
よし、まずそこに立ち寄ってしまえ。
お寺なので、ナビに入れれば案内してくれる。
ナビの案内通りに自動車を進めると、おや、山の麓あたりが黄色く染まっているぞ。
その上に桜のピンクが見えるぞ。
あの桜かしらん。
いや、枝垂れ桜のはずだ。
その黄色い菜の花を縫うように道が坂を登り先にお寺があった。

  
  まず見えた風景。お寺の桜はこの中にない。

  
  菜の花にすっくと立つ桜。

  
  お寺に向かって遊歩道も伸びている。真ん中がしだれ桜。

広い駐車場の上あたりに大きなしだれ桜が枝をたらしていた。
間違いない、これが慈徳寺の枝垂れ桜だ。
すごい木だ。
これを見ないで帰る予定だったか、この私の計画は。
怪我の功名とはいえ、見ることができて、本当によかった。
数台の自動車がすでに来ていて、桜を堪能している。
お寺への階段を登って行くと、桜を見に来た人たちにお茶がふるまわれていた。
檀家さんなのか、とても楽しいお話をしている女性がいて、桜を見に来た人たちが笑いながら聞いている。
なんだか、のどかな風景だ。
お寺から自動車の通らない細い道で菜の花の中に歩いて行ける。
のんびりと歩いて、春を楽しめる。

  
  お寺から菜の花の中を歩ける。

  ニリンソウが咲いていた。

福島市に来て最初に見た桜がこの桜でよかった。
さて、慈徳寺にはもう一本エドヒガンがあるはずだが、それがどの木なのやら、立派な桜が多すぎてよく分からない。
とりあえず、お寺の奥にあった観音堂の桜を撮影。
いや、これは枝垂れ桜らしいので、違うな。
もしかしたら、菜の花の中に立っていた桜かもしれない。
いや、あれはけっこう若い桜みたいだった。
桜が多すぎて分からないっていうのは、とても贅沢な話なのかもしれない。

  
  観音堂の桜。これもけっこう大きな桜だ。

  
  観音堂はお寺のさらに上にある。。





小倉寺稚児桜
樹齢約250年の山桜。
説明看板によると、
南北朝時代、蔵主和尚さんが鎌倉に帰る際に
ぜひ尋ねて来るようにといわれて、
尋ねに行った白菊丸とい人物が
会えなかったのを悲しんで
江の島の稚児が淵に身を沈めてしまった。
それを哀れに思って
菩提を弔うためにここに桜を植えた、
ということだ。


花はこんな感じ。
なんとか咲き残っていてくれたものを撮影。
すでに葉っぱも出ていた。




本堂の前くらいにある桜の木。


これもけっこう古そうだが、
樹齢300年の木ではない。
どうも、その木はさらに奥にある
観音堂の参道にあるらしい。
出来れば早い時間のうちに花見山の近くに行きたいところだが、花見山に行く道の途中に2か所、見たい桜がある。
その一つが小倉寺の桜だ。
この桜には名前がついている。
稚児桜。
なんとも可憐な名前じゃないか。
さて、これもお寺なのでナビに入れたら案内してくれる。
してくれる、のだが、えーと、なんだこの道は。
どんどん山を登って行くぞ。
お墓の間を通る道になり、どうやらこのあたりにお寺がありそうなのに、ナビはさらに上に行けという。
どこなんだよ、小倉寺。
小倉寺、という名前ではあるが、大蔵寺というお寺でもある。
けっこう大きなお寺っぽいけどなぁ。
と、思いながら、ほぼ山の林道という感じの道を登って行くと、突然前にピンク色になった。
おおおお、桜の園だ。
こんな山の中に桜がたくさんあるなんて。
どうやらここが小倉寺らしかった。
数台とめられそうなスペースが寺の案内看板の前にあるのだが、満車。
花見客なのかな。
よく見ると、そこからやや下に下った場所に10台以上とめられそうなスペースがあった。
そこもほぼ満車だったが、なんとか駐車することができた。
お寺の案内の通りに歩いて行く。
駐車場からそれほど遠くない場所に小さなお寺があった。
うーむ、想像とかなり違うぞ。
いや、しかし、稚児桜はどこだ。
右手に古そうな桜の木がある。これか?
いや、違う。
もう少し奥に柵で囲われた小さめの桜の木があった。
立札のような説明看板もついている。
これだ、これが稚児桜だ。
もうほとんど散ってしまっているし、木としても樹勢が豊がではない感じだ。
それに。
その奥にある八幡神社でブルーシートを広げて何やら大がかりな作業をしている。

  
  ブルーシートを広げて作業中。

たくさんの人たちがしているのは、おお、しめ縄の張り替えらしい。
そうか、そのせいで下の駐車場は満車近かったのか。
よりによってそんな日に来てしまって、なんだかじっくりと桜を鑑賞したり、大蔵寺の中を見て歩く雰囲気ではない。
いかにも邪魔者のような感じで狭い境内をウロウロして、とにかくさっさと桜を撮影し終えなくてはならない雰囲気だった。
この境内にはもう1本樹齢300年の枝垂れ桜があるはずなのだが、探すこともできなかった。
とりあえず、途中にあった古そうな桜を撮影。
だが、ここの魅力は駐車場近くの桜の園だろう。
色とりどりの桜が咲いていて、静かで、とても雰囲気がいい。
細くて曲がりくねった林道のような道を厭わなければ、ここは花見をするにいい場所だと思う。
一本桜もいいが、こんなふうにふんわりと咲いていてくれると、たくさんの桜もいいものだ、と思った。

  
  駐車場の上の広場や近くの道路わきは桜だらけ。

  
  濃いピンクの桜などもあり、とても綺麗だ。


  
  お花見にはうってつけ。





安洞院のしだれ桜
福島市指定保存樹。
樹齢約380年のしだれ桜。
見ごろを終えて葉っぱが出てきている。


腰の曲がったおばあちゃんみたいだ。


花はこんな感じ。


幹。
風雪に耐えた曲がり具合だ。
すぐ下が道路なのが分かると思う。
崖に立っている感じである。

道の組み立てから行くと、この先は花見山公園に行くのがベストである。
まだ午前中なので、混雑していないといいのだが。
混雑を見越して、花見山公園そのものではなく、隣の生け花の里という公園の展望台に徒歩で登ってみることにしていたのである。
しかし、考えが甘かった。
まず交通規制があって、花見山どころか生け花の里の駐車場にも近づけなかった。
仕方なく、そのすぐそばにあるはずの「茶屋の桜」という一本桜を見ることにして、自動車をそちらに向けた。
そこには茶屋沼という沼があり、公園になっている。
なんとそこの駐車場さえ満車で、茶屋の桜さえも諦めざるを得なくなってしまった。
万事休す。
しばらく登山していないので、ここで歩くつもりだったのにな。
Uターンするにも道が狭く、花見山から溢れた自動車が次々来るので、国道115号方面に逃げるしかなくなってしまった。
ところが、この道、とてもよかったです。
細いみちが山の中からちょっと開けた場所に出るのだが、どこもかしこも花だらけ。
桜や花桃、レンギョウなど色とりどりの花が各家庭に植えられていて、ここは桃源郷かしらん、と思うくらいの風景だった。
花見山の駐車場に入れられずに諦めた人、そのまま戻らずにちょっと周辺の農村をゆっくりドライブしてみるのもいいかもしれない。
福島、すごいすごい、と大騒ぎしながら国道115号にエスケープした。
さて、ここまで来たら仕方がないので、次に予定していたお寺の枝垂れ桜を見に行く。
お寺は名前さえ分かっていればナビに入れられるので安心だ。
と思ってナビに従って進んだから、あらまあ、とんでもない大墓地に来てしまった。
自動車のまま入れる巨大な山門をくぐって、どこまでもどこまでも続く大きな墓地の中の坂道を登って行く。
えーと、この中で桜を探すのか?
とりあえず、どこか社務所とかないものか。
と、ありました、駐車場。
そこに入れてみたが、どうも墓参り用の場所らしく、さらに上に社務所がある様子だった。
そちらに進んで行くと、あ、あれだな、とすぐに分かった。
巨大な墓地の案内も兼ねている社務所なので、駐車場もちゃんとある。
そこに入れさせてもらって、社務所のほぼ前にある桜を見学した。
この桜もすでに見ごろを終えていて、葉っぱが出ている感じだ。
樹齢300年を超えているわりに細い幹と枝。
しかし、枝はだいぶ折れてしまっているのじゃなかろうか。
社務所の敷地内に立ってはいるが、道路の法面のすぐ上でもあり、根っこは広がっていない感じもする。
説明看板でもあるのかな、と思っていたが、この桜には何の説明もなかった。
ただ樹高12メートル、幹周1.9メートルとだけある。
せめて、樹齢を書いておいて、推定でもいいから。
階段を下って、下の道路から見上げることもできる。
たくさんのお墓を作るためにつけられた道路なのか、それとも、もともとあった道路なのかは分からないが、もしかしたら昔は坂道を歩いて登って、見上げた先にしだれ桜があったのかもしれない。

  
  少し離れて撮影すると、枝がかなり広がっているのが分かる。。

  
  階段を下りて撮影。




秋山の駒桜
川俣町指定天然記念物。
樹齢約400年のエドヒガンザクラ。
イメージとしては、この三角形の形の桜なのだが。


見る方向によっては丸く見える。
とにかく樹勢豊かで、
存在感のある一本桜だ。


花。
満開ですな。



青空も味方する。


下からも見られるし、


横からも見られる。


支柱で支えられた枝の下には、


カタクリや、


石仏などが並んでいる。


どっしりとした幹だ。

今回の桜追いの事実上のメインは秋山の駒桜になった。
この桜は過去何度も見に来ているのだが、福島市から来たことはなかった。
というか、福島市に近い場所だという認識がなかった。
だが、地図上で桜をチェックしていたら、本当に通りすがりに見られる場所にこの桜があった。
ならば見ないわけにはいかない。
ところで、生け花の里公園で適当なお昼を食べるつもりだったのが、駐車できなくて昼食難民になってしまっていた。
どこかでお昼を食べなくちゃ。
幸いなことに道の駅伊達の里りょうぜんというのができていて、とても綺麗な道の駅でご飯を食べることができた。
土地の者でないと、本当に道の駅の存在はありがたい。
お腹も満たされ、県道51号を南下する。
秋山の駒桜の駐車場はどうだろう。
今まで来たことのある方向とは反対がわから入る。
幸いなことに、駐車場にも待たずに入ることができた。
説明の必要のないほど、この桜は見事だ。
駐車場からやや歩いて行くのだが、その道すがら、菜の花が植えられていて、菜の花越しの桜も見られる。
桜に近づき、ぐるりと周りを歩いて堪能することもできる。
足元のちいさなカタクリもかわいらしいし。
おまけに青空まで見えて、百点満点だ。

  
  駐車場からすでにピンクの塊が見える。

  
  菜の花ごし。

  
  のどかでしょ。

  
  丸い形に見えたり。

  
  三角に見えたりする。





行屋の桜
樹齢約250年のエドヒガンザクラ。
室町時代にこの場所に修験僧の道場があり、
修験僧は井戸で体を清め、
桜の木の下の行屋でおこもりをして、
赤岩山山頂にある羽山さまにお参りしたことから、
行屋の桜と呼ばれるようになった。とのこと。


花。
白っぽい花だ。


幹。
小さいなぁ。
かなり折れてしまっているのかも。


上写真では分かりづらいだろうが、
となりに立派な若い木がある。
行屋の桜は手前の小さいほう。


アングルの妙なんだけど、
これくらい差のある木ですよ。
右のちっさいのが行屋の桜。


見上げると立派です。


タンポポも一緒。

ちょっぴり福島市から出てしまったが、ルートを福島市に戻そう。
駒桜のある川俣町にもたくさん桜があるが、福島県はよくばってしまったら拾いきれないほどのたくさんの桜がある。
今日は福島市と決めている。
まずはごく近い場所に2本あるはずの桜を探す。
一つは行屋上の桜。
住所は分かっているので、とりあえずナビにその住所を入れて大雑把でも場所に案内してもらう。
と、え、この道?というくらい細い生活道路に案内されてしまった。
どうやら県道39号と平行している古い道らしい。
咲いていてくれれば、古い桜はみつけることはたやすい。
しかし、咲いていなければ、なかなか見つけられない。
このあたりの住所のはずだとウロウロして、住宅街から少し山手に入った道を選んでここを進んでみよう、と奥に行ってみた。
ビンゴ。
畑の連なる道のほぼ突端に桜が立っていた。
桜よりむしろ立て看板のほうが目立つくらいの桜だ。
行屋の桜。
この桜は、たぶんみつけられないだろうな、と思っていた桜だけにとても嬉しかった。
ちょうど農作業をしている人がいて、親切にも空いている土地にそこに駐車していいよ、と言ってくれたので、自動車を入れさせてもらう。
むむ、2本並んでいるぞ。
どっちが行屋の桜なんだ。
疑問を持つまでもない。
手前の小さな桜が、古い木の持つ風格がある。
しかし、奥の大きな桜の花のピンク色が濃くて、行屋の桜を引き立てているように見える。
畑を見下ろすような場所にあるので、周りに人工物がない。
それがまた桜を綺麗に見せていた。
桜の周りをまわることができる。
小さなおばあちゃんを守る若い木のような感じがしてほほえましかった。
しかし、この桜の前に立っている看板の「さくらマップ8」って何よ。
そんなマップあるなら手に入れたいものだ。
しかも「8」って。
いったい何番まであるのよ。

  
  近くには双子みたいな桜もある。

  
  こちらは、行屋の桜から県道31号方向を見た山の麓の風景。花だらけ。

 




赤岩種まき桜
樹齢不明のエドヒガンザクラ。
説明看板がそばにあるのだが、
赤岩についての説明で、
桜にはふれられていなかった。
八幡太郎義家が木幡山から石を投げて、
それが落ちた所が赤岩山。
落ちた石から火花が出て、岩が赤くなったそうな。



ね、岩からにょきっと出ているような桜でしょ。



花。
高い位置にある花なので撮影が大変。



岩の上には祠。



でも、岩から生えているわけではない。
岩のすぐそばから生えている。
よく生き残っていると思う。



見上げると岩と桜。

行屋の桜のごく近い場所に赤岩の種まき桜があるはずである。
こっちのほうが実はちょっと迷った。
しばらくウロウロした。
そして、どうも妙な自動車がずっと駐車している小道を発見した。
この季節、必ず桜追いはいる。
桜追いは、時折、不思議な場所で駐車する。
たぶん、あの自動車はそうなんじゃないかな。
その自動車のそばには立派な桜の木があるし。
あれなんじゃないかな。
行ってみた。
違った。
遠くから見えた桜の木は赤岩の種まき桜ではなかった。
だが、どうも自動車の持ち主は桜追いらしかった。
声はかけなかったけどね。
一応、その間違った桜を撮影しようと自動車を下りて、少し歩いて気がついた。小さな看板だ。
本当に小さな看板が赤岩、と書かれている。
赤岩じゃないか〜っ。
矢印は、農道のような舗装されていない道の方向に向かっている。
あっちに赤岩があるのだ。
結局我々も道路の脇に駐車して、徒歩で赤岩に向かうことになった。
自動車で入れないことはない道ではある。
だが、スイセンなどが植えられていているし、5分とかからない道なので歩くのもいいだろう。

  
  これが遠目で見えた桜。杉木立の手前にあるのが赤岩の種まき桜。

  
  舗装道路が大きく左にカーブするあたりに小さな看板と農道のような道。

  
  そこを歩いて行くとこんなふうに見える。

  
  スイセンなんかが咲いている。

  
  赤岩の隣には鳥居。赤岩稲荷神社。

しかし、赤岩って。
行ってみてびっくりした。
岩だ。
間違いなく岩で、遠目にはその岩からにょきっと桜が生えているように見える。
実際はそういうことではないのだが、このビジュアルは印象的だ。
すぐそばには神社の鳥居などがあり、なんだか神聖な場所のような空気がした。
岩の上に生えているのかと思ったが、岩のすぐそばから伸びている桜で、かなり高い場所に花を咲かせている。
まさか、祠のある岩の上までよじ登るわけにもいかず、とにかく首を延ばして桜を見た。
ちなみに、この桜は「さくらマップ7」である。
振り返ると、我々を導いてくれた桜が見通せて、さらに奥に桃源郷のような花の連なりがあり、福島の桜の季節の幸せを味わったような感じがした。

  
  右の端っこの桜が案内してくれた桜。





荒井の種まき桜
樹齢約200年のエドヒガンザクラ。
ただし、現在の木は二代目。
普通の桜より一週間早く開花するので、
地域の農作業の目安となった桜だとか。


花。
みっしり咲いている。


幹。
二代目というが、近くの切り株は、
一代目のものかしらん。


椿などが周りに植えられている。


見上げると背の高い桜と分かる。

さて、なぜこの桜を探す気になったのか、実はよく分からない。
一応住所が分かっているので、簡単に見られると思っていたのだと思う。
ナビに案内してもらったら、とんでもない山の中だった。
一応、地図上では、上の赤岩の種まき桜から一山向こう側くらいの直線で結べば近い場所ではある。
しかし、ホントーにこの道を進むのか?という道をウロウロさせられることになってしまった。
ピンクの塊をみつけてはあっちじゃないかと走り、さらに曲がり角をみつけてはこっちじゃないかと走る。
お寺などなら名称でナビも案内できるのだが、ざっくりとした住所ではお手上げだ。
仕方なく、ダンナのスマホナビの登場になった。
たぶん、この道だ、という場所で何度もすれ違っている見覚えのある自動車を見た。
うーむ、彼らも桜追いなのだろう。
迷っているな。
かなり細い道に入り込み、あっと見つけることができたのは、例のさくらマップの立て看板である。
桜マップ2、矢印はなんと完全に民家に通じる小路の先を示している。
しかし、そういう看板が立っているからには、見に行っていいということだろう。
せっかく探して来たのだ、遠慮なく自動車を進めた。

  
  これが看板と民家への小道。

本当に民家だった。
たぶんそこの家の住民の自動車なんだな、という自動車の横に車をとめさせてもらう。
農機具などを入れる小屋などがあり、広い敷地ではあるが、何台も自動車をとめられるようなスペースではない。
これはもう、大急ぎで写真撮影してしまわなくては。
小屋の奥にやや広い緑の土地があり、そこに背の高い桜が立っていた。
説明看板がある。
地域の稲作作業の目安になった桜だという。
一週間ほど早く咲く桜らしいが、今年はまだまだ満開状態だった。
周りを木立で囲われているために、道路などからはほとんど見えない。
種まき桜というからには、もうちょっと目だってもいいんだけど。
探すのに苦労させられた。
ちょうど民家の人が買い物から帰って来たところに出会い、桜を見させてもらいました、すぐに帰りますので、というと、笑顔でありがとう、といわれてしまった。
気をつけて、とまで言われて、なんだか申し訳ない気持ちになった。

  
  こんな風に、実はこのあたりの集落からはよく見える。





 とある墓地の桜
もはやどこの墓地の桜やら。
探し探して、ほぼ迷っていたところでみつけた。


とても立派な桜で、樹齢もかなりのものかと。

続いて、斎伝の桜という桜を探すことにした。
これも、住所は分かっている。
しかし、不思議なことに住所が2つある。
つまり、説が2つあるのだ。
前もって調べた住所2か所をウロウロした。
見事になかった。
いや、本当になかった。
途中、あれじゃないか、という桜があった。
墓地の真ん中に立っている。
斎伝というからには、なにか「いつき」に関わる場所にある桜なんじゃないか。
行ってみたら、看板が立っているんじゃないか。
というので、お墓参り用の駐車スペースらしい場所に入れて、桜の元に行ってみた。
何もなかった。
ただ、凛と桜が立っているだけだった。
数ある福島の墓守桜の一つである。
それにしても、大きな桜だ。
高台から墓を守っている。
これはこれで、名前がなくても、樹齢が分からなくても、古くても若くても、満開を見られてよかった。
あとあと調べてみたら、斎伝の桜は民家の桜で、民家の庭の奥にあり、その住民の許可を得なくては見られない桜らしい。
探してもないわけである。
ここで飯野町エリアの桜から離れる。
あとあと、家で調べたら、「さくらマップ」というのは、飯野町観光ガイドの会が発行した桜のマップで、どうやら23箇所の桜があるらしい。
回れないぞ、そんなに。
いや、そのうち回ってやるぞ。うん。




 芳水の桜
福島市指定保存樹。
樹齢約150年の枝垂れ桜。
個人所有の桜だそうで、
姿を映す池も農業用の用水池だそうだ。
この日は風もなく、水面に綺麗に桜が写った。
時々予告なくライトアップするそうだ。


花。
若い桜だけあって、勢いのある咲き方だ。


どうよ、とばかりに
みっしりと咲いている。


鏡のようだ。


幹。
細いなぁ。
隣にあるのは、平たい石。
切り株かと思ったが、石だった。


水面に枝を延ばしている。

次の桜は実はちょっと楽しみにしていた。
水面に映る姿が綺麗らしい。
ちょっとした有名桜の部類になる。
なので、迷わずに行けた。
ナビの案内のまま国道4号のガードをくぐる。
くぐって、げっとなる。
路肩に自動車がズラっと並んでいる。
そうか、この桜、駐車場がないのか。
いったん桜を通り越し、Uターン。
それから、路肩のあいている場所に縦列駐車することになった。
けっこう遠い場所から桜まで歩くことになってしまった。
まあ、それでも5分も歩かない。
近づくにつれ、桜の美しさが迫って来る。
おや、この桜の前には、福島花回廊、SHU×YUデジタルラリーというイベントのポスターが設置されているぞ。
ラインのアカウントの企画で、デジタルスタンプを集めると景品が当たるチャンスがある、というものらしい。
それが目当てというわけではないだろうが、かなりたくさんの人がスタンプにスマホをかざしていた。
今まで訪れた桜たちにも設置されていたみたいだが、ここほど観光客は多くなかったので、気がつかなかった。

  
  これ、国道4号がわから見た姿。これはこれで綺麗だ。

  
  芳水の桜の名前と、右端にデジタルスタンプラリーのポスター。

さて、芳水の桜。
まず、国道がわから池を挟んで対岸に行くと、水面を大きくとって、それに映った桜を撮影する。
こちらがわには三脚をしつらえたカメラマンたちが陣取っている。
池は、特に柵などもなく、ちょっと高い土手のような場所から水面近くの地面といった足場で、土手から下って写真を撮影しようとすると、勢いあまって池に落ちてしまう人もいるかもな、といった感じである。

  
  一段下から撮影。手前に雑木があるのだが、それも風情。

桜の真正面の対岸は樹木があって、そこまでは立ち入れない感じである。
そちらから桜に近づいて行く。
ずっと水面に桜が映っている。
花の下に来ると、本当に勢いのある桜だとわかる。
おお、池の水に太陽が反射して、水面ギリギリまで垂れ下がった桜の花を照らしているぞ。
レフ板みたいに花を綺麗に見せている。
水と太陽は花を美しくする。
この桜は確かに人を呼ぶ桜である。
水と太陽を味方にしている。

  
  レフ板を当てられて輝く女優さん。

  
  これ、池の撮影スポットの向かい側から見た桜。





 諏訪山のしだれ桜
樹齢約400年の枝垂れ桜。
福島県緑の文化財。
柵で囲われて守られている。
伊達政宗が江戸で買った大量の桜の苗を
仙台まで運ぶ途中、この地で休憩した際、
宿場の人が懇願して3本分けてもらった。
そのうちの1本だそうだ。


花。綺麗なピンクだ。


満開状態。


幹。
かなり痛んでいる感じがする。
400年の重みか。


別の方向からの桜。
幹がやっぱり痛んで見えるなぁ。



拝殿の隣の桜2本。
こちらも樹齢200年から250年だそうだ。

芳水の桜から松川町地区に入っている。
次に向かうのは、諏訪山のしだれ桜。
諏訪神社にあるので、これもナビの道案内に心配はなかった。
が、予想よりもかなり町中で目的地です、と言われて驚いた。
県道52号から神社を目指したのだが、県道114号に突き当たる交差点でナビは案内を終了してしまった。
ええええ、諏訪神社どこよ。
真正面でした。
正面に「こらんしょ諏訪山の桜」というピンクののぼりがいくつも立っていて、見間違いも見落としもない感じだった。
まさに交差点のど真ん中に諏訪神社があり、本当に交差点に面した場所に小さい駐車場があった。
道はさらに先に進んで、石段があるが、自動車はこの交差点沿いの場所に入れるしかなさそうだ。
すでに3台自動車がとまっていて、ちょっと入れない感じだったが、幸いなことに1台出ていってくれて、入れることができた。
階段を登って行くと、上のほうの桜のピンクが降るように見える。

  
  鳥居まで石段を登る。

  
  鳥居の向こうは桜。

  
  正面に拝殿。 

さて、樹齢400年の桜はどこだ。
探すまでもない。
入って右手に太くて黒々とした幹が目立つ老木が立っていた。
これが諏訪山のしだれ桜だ。
主幹の片方が無くなっているので、これがあればもっと大きな桜木だったと思う。
氏子とおぼしきおじいちゃんたちが桜を見守っていて、写真を撮影する人たちにパンフレットを配っていた。
私ももらう。
どこから来たのかと訊かれたので、新潟からだと答える。新潟は雪がすごかったでしょう、そうですね、福島は本当にどこに行っても桜が綺麗ですね。
おじいちゃんはにこにこ笑っていた。
向こうの桜も樹齢200年以上なのだ、と拝殿の右側の2本を示したので、そちらに見に行く。
すると、別のおじいちゃんが近づいて来て、本殿の彫刻を見たか、と訊いて来た。
否、と答える。
ならば、と、なんと案内してくれましたよ。
どれほどこの諏訪神社を愛しているのか、地元のおじいちゃんたち。
色々と欅づくりの彫刻の説明をしてくれて、最後にやっぱりどこから来たのか尋ねられた。
新潟からだと言うと、自分も新潟に住んでいたのだ、とのこと。
おじいちゃんに説明してもらわなかったら、桜だけ見て通り過ぎるところだったぞ、諏訪神社。
小さな神社に歴史や芸術があるものだなぁ。

  
  北がわの鬼面。

  
  南側の鬼面。

  
  拝殿の奥に本殿。他にもたくさんの彫刻があった。






 西郷の夫婦桜
樹齢約750年のシダレサクラ。
こちらは、女桜。
こっちのほうが太くて大きい。
鎌倉時代の初期、源頼朝公の
奥州征伐の際に宿地千軒の大集落を
通り抜けなくてはならない難関があり、
それを突破できた成果報告と感謝のために
狐水稲荷神社にシダレザクラと
エドヒガンを夫婦に見立てて植えた
と、説明看板にあった。(意訳)


太い主峰。
しかし、完全に途中からなくなっていて、
屋根が被せられている。


しかし、残っている主峰はしっかりとしていて、
とても元気そうだ。


反対の角度から。
花より幹が目立つ。


花。
ピンクが濃くて、かわいらしい。


満開だった。


残っている枝の元気なこと。

続いて、かなり古い桜なのでぜひ見てみたいと思ったのが西郷の夫婦桜だ。
ぜひ見ておきたいと思ったわりに、実は見事に見落としたことがある。
夫婦桜というから2本あるのは分かり切っているのに、1本しか着目していなかったのである。
だって、もう1本が地味なんですものぉ。
もとい、西郷の枝垂れ桜も住所が分かっていたので、自動車のナビに案内してもらう。
田んぼの真ん中の道をずんずんと進み、集落に入ったと思ったら、小さな神社の角に到着した。
駐車スベースが無いので、細い道の路肩に駐車することになる。
すでに2台ほど駐車していた。
小さな赤い鳥居があり、それを覆うように見事な桜が立っている。
これだ、これだ。
これが西郷の夫婦桜だ。
さすが700年以上の風格のある桜木である。
主幹が途中からバッツリと無くなっているが、その無くなっている部分に屋根がつけられている。
ずっと昔の山梨の山高神代桜を思い起させる。
ぐるっと一周桜の周りを歩けるので、あらゆる角度から桜を見ることができる。
主幹を失っていても、太い枝が広がり、見ごたえのある桜になっている。
なんという生命力だろう。
その生命力に圧倒されて、つい、男桜のほうを忘れてしまいましたとさ。
いや、ちゃんと目には入っていたのだ。
自動車は男桜の方向から神社に着いたので、まず目についたのが男桜のほうだった。
これがまた、おもしろい形をした桜なのだ。
1本の木なのかよく分からない幹をしている。
何本もの幹が組み合わさっているようにも見える。
ヘンな木だね、と言いながら、すっかり巨木の女桜のほうに気が向いてしまった。
それに、意外と距離があるのだ、この夫婦。
真ん中にこの神社のお祭りに使われる山車を入れてあるとおぼしき小屋があり、それを挟んだ感じで立っているのである。
なんか、添え物みたいに見えるじゃないの。
女桜は巨木のうえに鳥居というポイントまでついている。
そんなワケで、すみません、下が夫たるエドヒガン、男桜です。

  
  すいません、これが男桜。
  同じくらいの樹齢のエドヒガン。
  実は幹がおもしろく輪っかのようになっている。
  あまりに目立たないので、
  見落とすところだった。


  
  1本なんだか何本なんだか分からない幹。

  
   見る方向によっては、エックスの文字に見える。

  
  
女桜とのツーショットが無い。右端が山車の小屋で、その隣が男桜。

  
  
左下に山車の小屋。その奥に男桜がある。






 右輪台山のしだれ桜
約500メートルの道の両側に
108本の枝垂れ桜が並んでいる。
ぼんぼりなども並べられていて、
ライトアップも行われているようだ。
この図が一番きれいだった。
あえての観光客も入れてあるのだが、
顔を隠した加工をしたため、少し無粋。
すみません。


見た目ではほぼ蕾だった。
写真にしたら、けっこう綺麗に写っていて、
むしろびっくり。


花。
咲いているのを探して撮影。


八重の枝垂れ桜だ。

最後に向かったのは、1本桜ではない。
右輪台山のしだれ桜並木。

実は、まだ開花していないとの情報があったのだが、今日一日とても暖かく、少しでも咲いていないか、と最後に立ち寄ることにしたのだ。
どうやら交通規制があるようで、ナビに案内された道ではない方向に案内看板の矢印が出ていた。
ここは地元の看板の矢印に沿う。
細い民家の間の道をゆるゆると登って行く感じだ。
次第に坂の両側にしだれ桜の木が目だってきたが、どれも蕾の状態。
ああ、やっぱり早かったか。
でも、一応行ってみよう。
幸いなことに、一番手前の駐車場で1台が出て行き、そこにすっぽり入ることができた。
あとから続いた自動車は少し待たされたようだ。
自動車を下りる。
両側に確かにまだ蕾の状態の枝垂れ桜がズラリと並んでいた。
いや、しかし、蕾でも見ごたえがあるぞ。
辺り一面がピンクに見える。
駐車場から少し歩くと、キッチンカーが1台の広場があり、夕方なのでもう店じまいしそうだった。
どこまで並木なのか、歩いて行く。
知らなかったが、縄文時代の遺跡のある山だそうで、竪穴式住居を再現したものもあった。
いや、桜並木と合うかどうかは、別問題なんだけどね。

  
  これが縄文の竪穴式住居。。

自動車は一方通行のようで、ゆっくりとこの並木道を自動車で通り抜けることもできる。
同じ福島県の喜多方市にある枝垂れ桜並木は徒歩でしか鑑賞できないので、足腰の弱い人や歩きたくない人も並木を堪能できる。
つまり、ここの枝垂れ桜は背が高く、自動車が通り抜けられるくらいなのだ。
2か所の枝垂れ桜並木を知っていると、枝垂れ桜好きは色々楽しめるな、と思った。
ただ、歩道がつけられているわけではないので、通行には注意が必要である。

  
  自動車で入ってきた方向を撮影。この向こうは下り坂になっている。。

端っこまで歩いて、駐車場まで戻って、本日の桜めぐりを締めくくった。

慌てて計画して、慌てて調べて、慌てて巡った福島市の桜。
人気観光地花見山は見くびってしまって立ち寄ることができなかったが、それ以上にこの季節の福島市周辺の花の美しさを発見することができた。
観光地ではなくても、民家の庭もとても綺麗だ。
目的地を決めずに、ただ春の空気を感じるために福島市をドライブしてもいいかも。
オススメである。




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