んがお工房の桜めぐり


2025年桜追いB
宇木の古代桜

4月の週末、2週に渡って桜を追って、しばらく歩いていない。
登山らしい登山もしていないので、体がなまりきっている。
いよいよ第三週となり、いいかげん登山したくなってきた。
サクっと登れて、ついでにサクっと桜を見て回れるいい場所はないものだろうか。
前々から長野県の光城山の桜には興味があった。
桜めぐりで松本などに行った際には、高速道路から桜のピンクの帯が山頂まで一直線に続いている山があるのを見ていたのだ。
あの山ならサクっと登れて、松本だから桜も咲いているだろう。
と、いうことで探してみたが、松本の桜は実は数年前に巡っているのだ。
せっかく長野に行くのに、一度見た桜を見るのはもったいないなぁ。
このあたりで桜が満開で、こじんまりとした場所にいい感じの桜が集まっている場所はないかなぁ。
むむ、あったぞ。
宇木の古代桜。
山ノ内町の宇木地区に大きな古木が5本あるらしい。
同じ地区に5本とはお得な。
これならサクっと回れる。
ということで、光城山に登って帰りしなに山之内町に立ち寄ろうと思っていた。
が、光城山に登るためだけに松本は遠すぎやしないか。もっと山之内町に近い、手ごろな山は無いものか。
そう思案したところ、ダンナが見つけ出してきてくれた。
箱山、という山である。よく分からないが城跡で、今の季節はシュンランが見られるらしい。
近いならいいか。
最初の取り付きだったはずの光城山はすっかり消えてなくなり、山之内町のおとなりの中野市にある箱山に登ることになってしまった。
そんなこんなで、思いもよらず予想よりもハードな登山をして、午後の日差しの中、山ノ内町に向かった。
いや、向かおうとしたんだけど。
宇木の古代桜の住所とか、名称とか書いたメモ用紙がどこかに行ってしまった。
まずい。
ナビ頼りの我々だ。この場所からどうやって桜を探せばいいのだ。
万事休す。
うろ覚えの「宇木の千歳桜」という名前でとにかくナビに入れてみた。
あったよ〜。いつもはあてにならないナビなのだが、この時は心底頼りになると思った。
場所も分かったことだし、1本しか見られなくてもそれはそれで仕方ない。
とにかく、宇木に向かって出発だ。





隆谷寺の桜
樹齢約400年のしだれ桜。
何よりお地蔵さんがポイント高い。


お堂もまるで日本昔はなし風である。


花。
みっちりと咲いている。満開だ。


見上げると花だらけになる。


その奥に小さなお堂もある。
枝はたくさんの支柱に支えられている。


幹。


別方向から見ると、かなり痛んでいる。
空洞なんじゃないかとさえ見えるが、
花の咲き具合からして、
樹勢は衰えていないみたいだ。

4月19日
ナビの案内するままに山ノ内町に入り、国道403号から宇木地区へ入る。
県道434号らしい。
このまままっすぐ進めば千歳桜になるらしい。
が、その手前にでっかい宇木の古代桜というイラストマップが目に入った。
交通量が少ないのが幸いして、その場に自動車を止める。
ラッキー、5本の桜が全部書かれている。
ってか、そばにパンフレットが自由にお持ちください状態で置かれている。
なんて桜追いに優しい土地なんだ。
それを手にとると、県道434号沿いにちょっと進むと桜めぐりのための駐車場があるらしい。
とりあえずそこに入れよう。
けっこう広い駐車場なのだが、1台くらいしか自動車が止まっていない。

  
  目立つ場所に案内看板。

  
  ピンクののぼりと案内してくれる看板もある。

さてさて、ここから歩いて桜をめぐるのか。
パンフレットを広げてみる。
歩いて巡ると65分。約4200mだそうだ。
ハードな登山の後ではちょっとキツい。
自動車にしよう、と決意するのに時間はいらなかった。
というとで、さっきのイラスト看板のある角まで行く。
その先に隆谷寺があるのである。
細い坂を登って行くとほぼ正面にお寺はある。
駐車スペースくらいあるだろう、と通り過ぎたら、無かった。
いや、本当になかった。
仕方ないので、ギリギリの道幅の所をUターンして、お寺の前の空き地まで行く。そこには自動車が1台駐車していて、入ってもダメとは言わないだろうという雰囲気があった。
邪魔にならないように駐車して、お寺に向かう。

  
  この看板は各桜に立てられているらしい。

  
  レンギョウなども咲いている。

桜はすでに目立つ形で見えていた。
綺麗なしだれ桜である。
しかも、なんというか、日本昔話に出て来るようないかにものどかな田舎の建物といった感じのお堂やら桜の奥の小さなお堂やら。とにかく絵に描いたような田舎の春なのだ。
ズラリと並んだお地蔵さんとそれを守る赤い屋根。
その上にふうわりとかかるしだれ桜の淡いピンク。
今が令和の世の中であるということを忘れてしまいそうだ。
先客がいて、桜の下にもぐって何枚も写真を撮影している。
この桜は、このお寺全部を含めて、知ってもらいたい風景だな、と思った。

  




区民会館前の桜
樹齢約300年のしだれ桜。
とにかく堂々とした印象のある桜だ。
墓を守ることに一生懸命な感じがする。


花。満開です。


足元にお地蔵さん。


見上げる。


あ、枝が折れた場所もある。


でも、わんさか咲いている。

次に向かうのは、区民会館前の桜。
県道434号沿いにある。
とにかく桜追いには優しい地区なので、桜のある場所には目立つピンクののぼりがある。
すぐに分かった。
また、これが公民館の前にある桜なので、公民館に駐車できる。
これまた立派な桜だった。
墓守桜である。
この桜に守られている墓は安心だろうな、と思えるくらい堂々とした桜だ。
見ると、足元にお地蔵さんがあった。
太く、ゴツゴツとした幹にお地蔵さんの丸いフォルムがなんとなく愛おしく見えた。
お墓の中なので、そんなにじっくりと見ていられない。
さっと撮影して、次の桜に向かった。

  
  ちゃんと説明看板もある。

  
  区民会館にも桜がある。。

  
  その区民会館から桜を見下ろしてみた。





千歳桜
長野県指定天然記念物。
樹齢850年のエドヒガンザクラ。
宇喜の千歳桜、という名前らしい。
月見桜、見帰り桜とも呼ばれていたという。



背後の山々にはまだ雪が残っている。


石碑には「宇喜」の文字。


花。
ほぼ満開。


幹。
いや、太いです。
今までの桜に比べると、
役者が違う感じ。


見上げる。
四方に枝を延ばして、
咲き誇っている。

えーと、次に近いのは、大日庵の源平しだれ桜だそうだ。
ということで、そちらに向かって自動車を走らせる。
走らせて・・・あれか?
通り過ぎてしまった。
県道沿いではなく、県道から少し脇に入った道にあるのである。
入り口の案内も目立たなく、あっという間に通り過ぎた。
ここの角にはピンクののぼりが無かった。
Uターンする場所もなく走って行ったら、すぐに千歳桜に出てしまった。
わぁ、デカい。
さすが長野県指定天然記念物。
格が違う。
なんか、たくさん人が見ているし。
やっぱり主人公なのかな、駐車できるかな、と思っていたら、また通り過ぎてしまった。
駐車スペースが無いのである。
本当にない。
全くない。
少し通り過ぎた路肩のやや広い場所に1台自動車が止まっていたので、我々もそれに習って路上駐車させてもらった。
桜までちょっと歩くことになったが、致し方ない。
ってか、桜前にたくさん人がいたんだけど、あの人たちはどこに自動車をとめて見ているんだ。
近づくにつれ、あの人だかりが桜鑑賞ではなく、何か別のものだと分かってきた。
え、神主さんいるし。
え、正装している人たくさんいるし。
なにがしかの神事が行われているようだった。
満開の日に神事か。
いや、桜が御神体としたら、そりゃ満開の日にしたくなるだろう、神事。
こりゃ、桜鑑賞の観光客はいらぬ存在だなぁ。
でも、ここまで来てごめんなさい出直しますというワケにはいかないので、人の後ろ側から桜を撮影した。

  
  地域の人達が集まって、神事が執り行われていた。

  
  真新しいしめ縄だらけ。

  
  神事の参加者は、すぐ脇の小路に路駐していたらしい。

それにしても、神様が宿りそうなすごい木だ。
幸いなことに神事はちょうど終わって、参加者が帰って行くところだった。
なので、木に近づいて、見上げることも可能だった。
真新しいしめ縄がかけられた古木を見上げる。
この土地で農業や養蚕を見守ってきたという。
これからもずっと、この土地を見守るのだろう。
時がゆっくり流れるようなこの宇木地区を。





大久保の桜
樹齢約150年の枝垂れ桜。
いや、150年くらいの樹齢ではないと思う。
とにかく大きな桜だ。


まず目に入るのは、
菜の花ごしの姿だ。


花。
小振りの花が密生する。
ほぼ満開。


幹。
不思議な編み目のような幹だった。
150年ではこうはいかないと思うけど。


すぐ近くから見上げた図。


こちらは坂の下から見上げた図。


近寄るとこの冬に折れたとおぼしき跡が。
これほど大きくなるのは、
いかに大変なのかを物語る。

宇木の古代桜の5本のうちの主人公である千歳桜を見たあとは、さっき通り過ぎてしまった源平桜に戻るつもりだった。
しかし、考えてみたら、源平桜に向かう脇道は、千歳桜がわから行くと、ものすごく侵入しづらい角度なのだ。
ここまで来たら、千歳桜前の小道に入って、さらに先にある大久保の桜を見てから、侵入しやすい角度から源平桜に行ったほうがいいだろう。
そう判断して、自動車まで戻り、まだあたりに駐車している千歳桜の神事に参加した人たちの自動車の脇を通って小道に入った。
本当にこの道かな、と思いながら、手元のパンフレットの示す道を進む。
なぜこの道なのかと不安になったかというと、ものすごく細いのである。
なんだか、集落の家と家の間を縫う道なのだが、もしここを歩いて桜に向かったとしたら、とんでもなく不安になりはしないか、といった感じの道なのである。
だが、桜めぐりに優しい宇木だ。
ちゃんとピンクののぼりが立っていて、この道で間違いないと示している。
曲がり角にはのぼりがあり、こっちがわだと教えてくれているのだ。
いや、それにしても距離がある。
細い道なので、自動車でもスピードが出せないのだが、それにしてもかなりの距離を走る。
パンフレットによれば、千歳桜から大久保の桜までの距離は1300m。20分かかるらしい。
いや、もっとあるような感じがするけど。
しばらく走って、角に「大久保桜休憩所」と書かれた小屋のようなものが見えた。
若い桜の木に守られている。
よくよく見たら奥にお地蔵さんがいらっしゃって、案内書の看板には「豆地蔵尊保存会」と書かれていた。

  
  この小屋の奥にお地蔵さんがいらっしゃる。。

  
  休憩所、道、駐車した場所、奥に桜が見える。

となると、大久保桜はすぐそばのはず。
首を左に向けると、うわぁ、すごい桜があるぞ、と声をあげるくらいの桜が立っていた。
地蔵尊からは坂を登って行く先に菜の花の黄色が見え、その上にふわっとしたしだれ桜が立っていた。
道は細い。
左折して桜に近づくが、途中にやはり桜めぐりらしい自動車がいて、進めそうもない。
ちょうど地蔵尊の向かい側に畑の余白のような小さな土地があり、そこに2台自動車が止まっていた。
たぶん、桜めぐりの人のものだ。
我々は軽自動車なので、その自動車の隣にギリギリ駐車することができた。
桜に近づく。
坂を登って行く。
何人かが桜を撮影していた。
大きな自動車が道をふさいでいるが、この大きさの自動車で宇木の桜めぐりはなかなか大変だと思う。
どうやってUターンするのかな、と思うくらい狭い道なのだ。
人の心配はいいとして、桜だ。
坂の下から菜の花ごしに見る。定番の美しさだ。

  
  たぶん桃の畑ごしの桜。桃が咲いたらさらにきれい。

桜の下から桜を通り越して坂を登って行くと、桜に近づく感じの道がついていた。
ちゃんと説明看板もある。
そこまで行って、この桜も墓守の桜だと分かった。
この高台に墓を守ってすっくと立っている。

  
  この角度が一番桜の姿がよ。


実はこの角度からの桜が下から見上げる桜よりずっと形がいいのかもしれない。
道は桜のすぐそばまで行けるようになつていて、近寄って見上げることができる。
なんだか編み込まれたような幹が高く伸びて、四方に枝を延ばして墓を守っている。
墓はほぼ桜の枝の下になるような感じだ。
説明看板に樹齢約150年と書かれていたが、それは嘘だろう、と思ってしまった。
それほどに立派な桜なのだ。
風でゆらゆらと揺れて、高台から下の平野を見下ろしている。
昔だったら、平野のどこからでもこれが見えただろう。
見ると、この冬の雪のためか、大きな枝が折れたあとがあった。
どうか、これからもずっと風雪に負けずに下の平野を見下ろしていてほしいものだ。
 




大日庵の
源平しだれ桜

樹齢約300年のエドヒガンンシダレザクラ。
山ノ内町指定天然記念物。
この地にあった大日庵というお寺に
植えられた紅白2本の桜のうち、
紅桜(平家桜)は枯死してしまい、
今は白い桜(源氏桜)のみが残っているという。


花。
もう葉っぱが出ていた


だが、遠くから見た感じよりもずっと
咲いていてくれた。
白いほうの桜が残ったとのことだが、
確かに白っぽい花だ。


お地蔵さんから桜が見える。


桜の向こうは善光寺平だ。


階段がわからの桜。
幹はわりに太い。

大久保の桜をあとにして、そのまままっすぐに区民会館まで下る道で県道に出る。
県道に右折で入って、少し走れば源平しだれ桜に入る脇道になるはずだ。
しっかり分かっていたはずなんだがな。
また見落とした。
いや、細いのよ。
しかも、案内看板が目立たないのよ。
さらに、桜の姿も奥なのよ。
ということで、もう観念してUターン、細い道に入り込まずに県道に路駐して歩いて桜に行くことにした。
実際、道が細かったので、その道に入り込んでも駐車できる場所がなかったかもしれない。

  
  この看板が自動車からは見つけづらい。。

  
  県道からこの小道に入って行く。奥に桜。。

  
  道わきの緑の土手みたいな場所に入って行く。。

小道を徒歩で歩くと、緑色の土手みたいな場所の上に桜は立っていた。
ちょっと見たらもう葉桜になっているように見えたのだが、近づくとまだ咲いているのが分かった。
土手の緑に桜に近づける踏み跡があったので、そこから近づかせてもらう。
実は舗装された道はまだ先に続いていて、坂を登りながら大きく右にカーブ、桜の上のほうまで続いているのだが。
桜に近づく。
そばに若い桜木があるので、その空間はなかなか華やかなものになっている。
源平桜、いや、赤い平家桜は枯死してしまい、今は白い源氏桜のみが残っているので、源氏桜は、古木の持つ威厳のようなものがあった。
ちょっとだけ満開を過ぎて、葉っぱが出てきているので、なおのこと幽玄な雰囲気になっていた。
桜をぐるりと回ってみることもできる。
と、桜の背後に階段をみつけた。
県道から入り込んだ細い舗装の小路がぐるっと坂で登っていて、この階段はその道に続いているようだ。
登ってみる。
道に出ると、あらまあ、ここでもお地蔵さんが並んで祀られていた。
どうやらこちらのほうが古い大日庵の正式な入り口らしかった。
下に源氏桜が見える。
その向こうに広々とした平野が広がっている。
昔から、この風景は変わっていないんだろうなぁ。

  
  この看板も徒歩で桜めぐりする人のためのものと思う。

自動車に戻り、ふと見ると県道の道端に「善光寺平の眺望」という看板が立っていた。
北信五岳、北アルプス、善光寺平(長野盆地のこと)を縦断する千曲川が一望できます、と書かれていたが、この日は春霞がすごくて眺望はイマイチだった。
これで本日の桜追いは終了である。
桜追いに優しい宇木の印象はとてもいい。
ただ、駐車できる場所が少ないのが難点。
徒歩での桜めぐりを推奨しているのがよく分かる。
仕方ないとはいえ、ほんの2週間くらいなので、自動車のとめられる場所は各桜に用意してもらえるといいんだがな。
それでも宇木の古代桜を5本、全部見ることができて、大満足である。
よく新潟からも近い北信のこの桜たちに今まで気がつかなかったな。
長野、本当に桜追いには宝の山みたいな土地である。

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