2009年滝初め@2009年滝初めそのA華厳の滝、地蔵滝へ
松木渓谷 

2009/1/11 松木渓谷 栃木県日光市

毎年、正月、もしくは、成人の日の連休のうちに「滝初め」と称して滝めぐりをすることに決めている。
とはいえ、新潟県の1月は積雪があり、滝らしい滝にたどりつけない。いきおい、他県に遠出することになってしまう。
それであれば、どうせこの季節、凍る滝をめざすか、さもなくばできるだけめでたい滝をめざしたいものだ。
そんなこんなで、今年の滝はかなりめでたい感じのする「華厳の滝」にしようと決めた。せっかく行くのだから、華厳の滝だけでなくて、どこかいい滝はないものか、と、栃木在住の滝仲間である雪田爺さん(下野爺の写真帖)に教えを乞うことにして連絡をとってみると、あらまあ、爺さんはその日は松木渓谷に行く予定だったらしい。滝が凍っていると思うということで、何の考えもなしにほいほいついて行くことにしてしまった。
前日になって同じく滝仲間のなんちゃん(南風日和)も加わることになり、今年の滝初めはめでたいオフになることになりました。

さて、当日。1月11日は、山沿いに大雪が降ると天気予報で警告していた。それを見越して少し早めに家を出たのだが、やっぱり1区間大除雪軍団につかまって、ノロノロ運転になってしまった。もっとも、車線変更するだけで命が縮まる思いのする路面状況だったので、それほどスピードを出せる状態ではなかったのだが。
午前10時に松木渓谷の出発点である銅(あかがね)親水公園に集合という約束だったが、しっかり10分ほど遅刻。申し訳ないです。
かなり久しぶりの雪田爺さんと昨年春以来のなんちゃんと挨拶をかわして、雪田爺さんが作ってくれた本日の行程図を覗き込む。とりあえず川沿いを歩くのだな、ということだけは理解できた。

ここで松木渓谷について少しだけ。名まえのある滝があるわけではないこの渓谷は、県外の私にはまったくどこにある渓谷かもわからなかったので、事前にちょっと調べてみた。
日本のグランドキャニオンと呼ばれている渓谷で、川の両側から段々に積み重なったような岩盤が迫っている風景があのグランドキャニオンを彷彿とさせるらしい。
それよりもこの渓谷が興味深いのは、あの足尾銅山の史跡としての存在かもしれない。このあたりは、足尾銅山の杭木や燃料のために周囲の木を乱伐したり、硫酸を含んだ煤煙で木々が枯れ、禿山となってしまった。銅山が閉鉱した現在は、国土交通省をはじめとした各種団体の緑化運動で緑を取り戻しつつある。その過去と今がないまぜになっている場所を通っていくのである。
集合場所になった銅親水公園に着くまでに、渡良瀬川の向こう側に廃工場を見ながら進む。なんだか巨大なロボットの残骸のように見えた。

そんな知識を頭におきながら、銅親水公園を出発。すぐにゲートになる。ここから先は自動車では関係者以外入れない。が、すぐに我々の後ろから自動車が入って来た。緑化運動の人らしい。いいなぁ。でも歩かなくちゃ意味ないしなぁ。
     
   
足尾砂防ダム。綺麗な陶板のレリーフがある。右はダムの少し先にある渡良瀬川源流の碑。
  
公園の駐車場にあった、おそろしく簡単な松木渓谷の地図。
銅親水公園のそばの足尾砂防ダムは、久蔵沢、松木川、田元沢の3つが合流する場所で、松木川沿いに行くには、まず久蔵沢を渡る。仮設ではあるが自動車も通れる橋で渡り、その後も自動車が通れる道をてくてくと歩いて行く。
途中、緑化工事らしい重機が日曜日だというのに動いていたり、やはり緑化運動の人の自動車が通ったり、と、この季節にほとんど人なんかいないんじゃないか、と思っていたがそんなことはなかった。
     
   
最初のゲートをくぐる。それから久蔵沢を仮設っぽい橋で渡る。
左手に松木川を見て進む。
すぐに右手の急斜面に動くものがあった。鹿だ。2、3頭が急な斜面を駆け上がっていく。わぁ、鹿がこんな場所にいるんだ。
少し進むと右手は、広々とした平らな土地と、削られた山になった。ナントカという黒い産業廃棄物の砂の山もある。朝の雪がうっすらと積もって青空と赤い山と黒い山と白い山と、なんだかとても妙な景色に見えた。
しかし、雪のせいで、荒れ果てた荒涼とした風景には見えなかった。もとより冬枯れする季節なので、緑が全くなくなってしまった場所であるという感じも受けない。しまった、社会見学のつもりであれば、真冬に来ても意味は無い。だって、奇妙な風景ではあるけれど、綺麗に見えてしまったんだもの。
もっとも、私達は社会見学にこの土地に来たわけではない。んがお工房としては、滝初めの一環として来たのである。だから、足尾銅山の功と罪への意見を書くことができなくてもご勘弁願いたい。
     
   
右に産業廃棄物の黒い砂。うっすらと雪の積もった風景が広がる。
  
青と茶と白と黒。青空がとにかく綺麗。
しばらく歩くと、またまた鹿が現れた。
げ、多い。これはもしかしたら鹿牧場?と思うくらいわらわらと鹿がいる。こんな場所で何食べてんの、あんたたち。われわれが近づくと、キィともピィともつかない甲高い声をあげて警戒する。全部が頭をあげて、じっとこっちを見る。
ここに何度も来たことがある雪田爺さんもこれほど沢山の鹿を見たことが無いという。日光のほうから追われて来たのかもしれないとのこと。
この鹿たちがせっかく植えた緑化運動の木を食べてしまうのを防ぐために、木には1本1本保護のための網が巻かれていた。そんな苦労もあるんだ。
     
   
植林が進んだあたりに鹿の群れ。木々には保護のための網が巻かれている。
  
50分ほどでもう一つのゲートに到着。許可を得た自動車が入れるのはここまでで、ここから先は徒歩になる。
ここまで道は雪が固まった圧雪状態だったが、2台ほどバイクが来ていた。あとはもう1台自動車が止まっているだけだ。雪田爺さんが休憩しますかと聞いてきたが、ここまではそれほど大変でもない平坦な道だったので、疲れていない。休憩ナシで先に進むことにした。
マイナス4度という気温だったが、晴天の青空、直射日光のもと歩いたのでかなりあったかい気分だった。
     
   
第二のゲートのあたりはけっこうな雪。崩落した場所を慎重に歩く。
     
   
このあたりから日本のグランドキャニオン的な風景になってくる。
ゲートから10分ほどで道を崩落した岩がふさいでいる場所に出る。そこを雪の踏み跡をたどりつつ石と石の間に足を落とさないように通過する。さらにそこから10分ほどで川の対岸に氷瀑があると雪田爺さんが指さした。
今までも対岸に氷はあった。だが、氷が岩にへばりついている状態で、イマイチ氷瀑らしくなかった。
今回のは、ちゃんと氷の下に流れがあって、なかなか綺麗な凍り具合である。
近くに行ってみよう、ということになった。
ところが、松木川の河原はやたらに広い。一面の銀世界で、足跡ひとつ無い。どこをどう通ってもいいというが、ちょっと怖いじゃないですか。私は雪田爺さんの足跡をたどってついて行った。川自体はそれほど深くない。長靴なので楽に渡れる。近づいて、しばらく撮影。
雪田爺さんからどの沢の滝なのか教えてもらったはずだが、すっかり忘れてしまった。すみません〜。
     
   
小さく写っていますが、なかなかの氷瀑。雪が積もっていなければ、綺麗な氷が見えたかも。
     
   
雪原に足跡を残して進む。右は氷瀑撮影中の面々。
撮影後、また道に復帰。
この道は、遠い昔は自動車も通れたようだが、今ではすっかりあちこちに落石があり徒歩でも大変な感じだ。我々が通った時も小さな石が落ちて来たりして、危険でもある。幸い、踏み跡があったので、それを頼りに歩けばズボッと落ち込まなくてすむのでよかった。
凍っていた沢から10分も歩かずに右手から沢が合流する。雪田爺さんが指差すほうを見ると、いい落差の滝が凍りかけていた。上には2段ほどなめ滝が見えるし、道をはずれてちょっと高い場所に行くと、一番下にも滝があるのが見てとれる。
爺さんの話によれば、かなりがんばってこの滝を登ると、さらに上に滝があるそうなのだが、この真冬に行く場所ではない。
とりあえず道から見える範囲で我慢して、撮影。あまりによく晴れていたので、どうにも滝全体をうまく捉えることができなかった。
     
   
分かりづらいが氷瀑。近くまで行けるとの話だったが、やめておいた。
     
   
下のほうにももう一段滝がある。が、日陰で真っ暗になるので、全体として撮影不可。右は、上のなめ滝の部分。
さらに先に進む。
松木川の対岸には細い沢が流れ込んでいて、どれも凍りついている。あそこにも氷、ここにも氷、という状態の中、立派な氷瀑出現。げ、なんか、その真ん中で動いている。げげ、人間じゃありませんか。
アイスクライマーたちだ。こんな場所まで来て、あんなにすごい氷瀑を登っているのか。
惜しいことに、ちょうど中段の氷ではない場所に全員到着して、休憩しているらしかった。氷にとりついている姿は見えない。彼らの上にはまだ壁のような氷瀑があるので、これからそこにとりつくのか、それともいい時間なので昼食休憩するのか。
     
   
赤い→のあたりにアイスクライマーがいる。そのアップが右。
     
   
右の岩盤にも左の岩盤にも氷が貼り付いている。
じっと見ているわけにもいかないので、我々も先に進んだ。
このあたりになると、両側の岩盤がそそり立って、道が陰になる。日光が全くあたらなくなると、めちゃくちゃ寒くなってきた。風の通りもよくなり、びゅーびゅーと吹いて来る。とにかく寒い。
最終目的地だった堰堤が見えてきたが、すっかり日陰で、そこで昼食にするにはあまりにも寒そうだった。
それに、松木川でいつでも手に入るということで、今回は水を持参していなかった。水を汲むには堰堤の先の河原に出やすい場所でないとならない。と、いうことで、少し進んで、河原まで下りる。
  
あの砂防ダムの向こうの陽だまりで昼食だ。
下りて、困った。
川が堰堤より下流よりもはるかに水量が無く、ほぼ凍っていた。上に乗っても足踏みしても割れない。ようやく割れても下に水が無い。どーすんの、水が無くちゃお湯が沸かせないじゃないの。
もう少し歩いて、なんとか氷とも水ともつかない場所を発見して、ほぼ0度の水を汲むことができた。よかった〜。
    
   
え、ダムの上流は流れが無い。右は川の上を歩く人。
  
雪田爺さんからいただきました。水を探して氷をつつく夫婦。
それから日光の当たっている場所に向かって河原から出て、昼食にする。
日光が当たっているだけで暖かい。暖かい?いや、ものすごい風が吹いて、寒いのなんのって。
その寒さのおかげで、風除けの岩とかザックとか人の影で着火したバーナーもとてつもなく火力が弱い。0度の水を沸かすのに、途方も無い時間がかかりそうだった。なにせんがお工房アウトドア史上、最寒の場所である。まともにお湯さえ沸かない。(どーも沸点の低くないガスだったらしいです)
仕方がないので、おにぎりだけでラーメンはあきらめ、まだ沸騰していないがなんとか飲める程度に温まった水でコーヒーを入れて4人で飲んだ。冷え切ってしまって、ぬるいんだかあったかいんだかさっぱり分からなかった。
雪田爺さん、なんちゃん、申し訳ありませんでした。栃木の山奥の寒さをナメてました。
  
この陽だまりで昼食。太陽ってあったかい。
とにかく、それで昼食を終了して、帰り道につく。
真冬は右岸の岩壁の向こう側を低い太陽が回るらしくて、ずっと日陰だ。しかも、午後からは風が強くなるという雪田爺さんの話どおり、とんでもない風が吹いてくる。さ、さみ〜。
救いといえば、その風が上流から吹き付けるので、背中を押す風になるくらいである。
風に後を押されて、雪をキシキシ言わせながら戻る。
しばらく戻ると、あのアイスクライマーたちが登っていた氷瀑に着いた。あらまあ、クライマーたちは、氷の壁を登りきっていた。またしても登っている最中は見ることができなかった。彼らはあそこからまた上に行くのかしらん。それとも下るのかしらん。風が強いから事故がありませんように。
  
上の段も登ってしまっていたアイスクライマー。
歩いているうちになんとか寒くはなくなった。
50分かけて中間のゲートに到着。ここまで来ると風もそれほど吹かず、気温も心なしか高くなったような気がする。道も歩きやすくなる。
途中、またもや群れと呼ぶにふさわしい鹿たちを見ながら、観光客が写真なんか撮っている銅親水公園に到着。午後3時少し前だった。

ここから我々は華厳の滝を見て帰るつもりだ。自動車で小一時間かかるというので、すでに日没とのレースになってきている。
ゆっくり滝談議、というワケにもいかず、そそくさと記念写真を撮影してそれぞれの自動車へ。挨拶もそこそこに分かれたのだった。
それにつけても、元気なお2人と1年のスタートを切れてよかった。ことし1年元気にずんずん歩いて行けそうな気がする。
お2人とも、これに懲りずに何かあったら誘ってくださいね。
   
記念写真。ご苦労様でした〜。
                                                   2009年滝初めそのA地蔵滝、華厳の滝へ
交通
  松木渓谷  行き方は色々あるが、我々が行ったのは、北関東自動車道伊勢崎ICをおり、県道73号で大間々へ。そこで国道122号に乗り、草木ダムの脇を通って足尾に入る。足尾の町並みを左眼下に通り過ぎ、田元交差点で国道122号は右方向に曲がる感じだが、直進して県道250号に入る。わたらせ渓谷鉄道間藤駅を通り過ぎ、細い道を進み、左手川の向こうに精錬所跡の姿を見て、廃線となった踏み切りを渡り、少し進むと、左手下に大きな砂防ダムが見える。それが足尾砂防ダム。その手前に銅親水公園がある。そこの駐車場に自動車をとめて、あとは徒歩で進む。
松木渓谷への進み方は、駐車場に本文中の写真のとおりの簡単な案内図があるので、参考にしよう。
説明すると、駐車場から道に戻り、少し上流方向に進むとゲートがある。これをくぐって、もう少し進むと、川に向かって下りる道がある。ここで川に向かい、仮設っぽい橋を渡り、道なりに左に。すると正面に川がある。これが松木川。松木川を左手に見ながら林道をてくてく歩く。
我々の足で50分で自動車で進める林道の終点に着く。ここにもゲートがある。ここから先は落石の多い歩きづらい道だ。が、ここから先が日本のグランドキャニオン的な風景になる。我々はここから水を汲んだり写真を撮ったりウロウロしながら小一時間上流まで歩いた。
真冬はとにかく防寒対策が必要。また、踏み固められた雪、圧雪の道になるので、滑り止めもあったほうが無難。

2009年滝初めそのA地蔵滝、華厳の滝へ

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