んがお工房の桜めぐり
2014年迷走の桜追い
2014年の新潟の春は平野部に限って言えば、早めに来そうな感じだった。 と、いうのも、平野部は極端に積雪が少なく、2月であっても除雪さえしないでいい状況だった。 桜の開花も早めになるんじゃないか、と予想していた。 しかし、4月に入って、雪こそ降らないものの、氷点下になるくらいの寒い日が続いた。一挙に春が遠のいた。 3月下旬にすでに関東では桜が満開になっているというのに、新潟では開花の予想がまったくつけられない状態だった。 さらに付け加えて、4月の中ごろに私が母と姉の親娘旅行に出かけてしまうために、桜追いができない。 いったい、どうする、今年の桜。 とにかく、まずは咲いている場所に行こうではないか。 3月の東京の桜満開のニュースを聞きながら、各地の開花状況をにらみ、4月最初のお休みに行く桜を決定した。 根尾谷の薄墨桜。もうしばらくあの老桜に会っていない。どうやらいい具合に咲いているらしいし、日帰りでも行けるギリギリの距離だし。 よし、岐阜県に自動車を走らせよう。 |
山高神代桜 樹齢約2000年のエドヒガンザクラ。 国指定天然記念物。 保護のためにつけられていた 赤い屋根がはずされた姿を はじめて見た。 樹齢を感じさせる幹。 さまざまな樹勢回復措置がとられている。 2千歳でもこんなに見事に咲けるんです。 わに塚の桜 ちょっと雲が出ちゃった〜。 八ヶ岳も雲がかかってしまった。 王仁塚、とも鰐塚ともいうらしい。 諸説あるので、ここは、わに塚と ひらがなで表記。 青空がごちそうです。 桜としての姿が一番いいのは、 県道からの風景だと思うけど。 人と比較して、大きな桜だと分かる。 神田の大糸桜 見事に蕾固い状態でした〜。 前は少しは咲いていたと思うんだけどな。 わに塚の桜と開花が重なるのは 難しいのかもしれない。 こちらも樹勢回復中で、 何本か枝が切り落とされていた。 帰りに立ち寄った大滝神社。 ミズバショウ、咲いてました。 |
4月5日 ところが、実際この日に行ったのは、山梨県の神代桜だった。 と、いうのも、桜に青空という光景が見たかったのに、当日の根尾谷の天気予報は曇り。曇り空では桜は映えない。 探してみたら、山梨は晴れそうだし、神代桜もわに塚の桜もいい具合に咲いているらしい。 それであれば、岐阜よりは山梨のほうが断然近いので好都合だ。 しかも、薄墨桜と同じでこちらもほぼ10年ぶりの訪問になる。 山梨の有名桜たちは元気だろうか。 それほど早起きするでもなく高速に乗り、10時半すぎには北杜市の実相寺に到着。入り口付近で多少渋滞したが、それほど並ぶことなく自動的に有料の駐車場に導かれた。 あれ〜、こんなだったっけ〜といった感じのお寺までの入り口の道には、屋台やお土産屋や、果てはご当地演歌歌手まで来ていて、かなり賑やかだ。 花のお寺実相寺は、スイセンなどが咲きそろっていて、本当に綺麗だ。 塀越しに見るお寺の桜はまだつぼみのものが多いみたいだけれど、神代桜はどうだろう。 2004年、つまり10年前に見たころの桜と、今日の桜は同じものかな、と思うくらい大きさが違って見えた。 まず、古い幹の上にかぶせられていた屋根が今は無い。そのせいで幹の存在が増して、より太く見える。両側に張り出した枝もなんだか元気がいいみたいだぞ。 調べてみると、神代桜は樹勢回復のために色々と施されているようで、このおばあちゃんが元気よく見えるのも地元の人たちの努力の賜物というわけだ。 2千年以上この地にあって咲き続けてくれた桜を我々の代で枯死させてはいけない。 2千歳なんて、まだまだ若い桜だと言われるような時代になってほしい。 さて、次に向かうのは、わに塚の桜である。 この有名桜には何の説明もいらない感じだ。 北杜市から県道12号を南下して韮崎市に入る。そろそろ桜だな、と思ったあたりで、左側の田んぼ道にわに塚の桜用の臨時駐車スペースがあった。 小さな空地に自動車が10台くらいとめられるスペースだが、道路に駐車されるよりマシだろう。 ここからだと、少し歩くことになる。が、遠くから山を背景にした桜を見ることができる。実を言えば、八ヶ岳を背景にした姿より桜としてはこっちのほうが綺麗に見えるんじゃないかと思うくらい、いい眺めだ。 ただし、あいかわらず電線は桜の後ろを横切っているんだけれど。 見物人の数もそこそこ多く、例によって、田んぼを挟んだカメラマンスポットにはたくさんのカメラマンが三脚をしつらえて八ヶ岳を背景にした桜を狙っていた。 晴れ予想の山梨だったが、雲のおおい晴れという空模様で、意外にも青い空と光を受けた桜がなかなかとらえられない。太陽が当たると、カメラマンたちがどわっと声をあげてシャッターを切るのか、けっこうおもしろかった。 わに塚の桜はほぼ満開。一歩手前くらいかな。 足元のハマダイコンやスイセンがかわいらしかった。 さて、この後、我々は迷走する。 というのも、せっかくここまで来て、百選の滝の北精進ケ滝を見ないわけにはいかない。当然のように滝に向かって自動車を走らせた。 走らせたら、道は御座石鉱泉まで通じていたものの、そこから先は通行止めだった。 ならば反対側、見返り峠がわから行ってみよう、と、チャレンジ。やっぱり通行止めだった。 考えてみたら、山梨県はこの冬、とんでもない豪雪に襲われたのだった。普段それほど積もらない地域でも記録的な積雪になり、倒壊する家屋も多かった。 北精進ケ滝への道ももしかしたらその雪の影響で開通が遅れているのかもしれない。 えーん、新潟の平野部は雪が少なかったのにぃ。 まったく想定していない事態に困り果ててしまった。 滝前で食べるつもりだった昼食も仕方がないので、適当な河原で食べた。寒かったですぅ。 滝にフラれて、仕方なしに帰路につくことにする。 どうせなので、帰りの駄賃で、小淵沢の名水百選「大滝神社」の湧水を汲んで帰ることにした。さらについでに近くの大糸桜を見てみたがこちらはまだつぼみも固く、見物人も全くいなかった。 ひさしぶりに山梨の桜を見たが、大きな被害をもたらせたこの冬の大雪にも耐えて綺麗な花を見せてくれた姿に感謝したいと思った。 |
4月12日、13日 翌週、新潟の桜が開花して、ほぼ満開になった。しかし、依然として気温の低い状態が続いていた。 せっかく満開になった新潟の桜を見ずに、この週末、私は状況。母を連れて、姉と三人でバス旅行である。今回は日帰りのバス旅行なので、前日の土曜日に東京スカイツリーに連れて行ってもらった。 東京の桜はすっかり葉桜になっていたが、スカイツリーには桜がチラホラ。 これはエレベーターの一つ、春をモチーフにした内装。桜いっぱい。 エレベーターを下りたら、ソラカラちゃんも桜のなかで笑っていた。 13日は、新宿発のバスツアーで山梨の(考えてみたら、先週に引き続き山梨だ)忍野八海へ向かう。あいにくの曇り空で、おひざ元に行ったにもかかわらず、富士山は空に溶け込むくらいにしか見えなかった。 昼食のバイキングのレストランで大きなしだれ桜が何本もあり、予定では満開の桜の向こうに富士山、という構図になるはずだったが、まだつぼみ状態。ちょっと桜に見放されたバスツアーになった。 ホテルの展望階からの富士山。うっすらとしか見えないし、桜もつぼみ。 近づくとなんとか咲いていたんですけどね。 |
弥彦神社の桜 裏側の鳥居。 このすぐそばが桜園。 駐車場の桜。 まさに満開。 これも駐車場。 これも駐車場。 いちばん桜がたくさんあったりして。 弥彦神社がわからもみじ谷に向かう道。 両側から桜がトンネルを作る。 |
4月20日 今年の新潟の春は本当に寒くて、朝晩などは10度に満たない日が続いた。にもかかわらず、よく晴れて、日照時間はかなりあった。 そんなワケで桜が長持ちして、先週に続いて今週も桜の見ごろは続いていた。 日曜1日しかお休みがなく、用事もあったのでそれほど時間がとれずに、近くの桜の名所である弥彦神社に行くことにした。 競輪場がわの駐車場に入れると、すぐに神社の裏側の桜園になる。 ここにはたくさんの種類の桜が植えられていて、桜の色々な表情を楽しむことができる。 弥彦神社にはこれという桜はない。桜園の桜か、弥彦駅近くにある公園の桜を楽しむ程度だ。 しかし、一番の圧巻は、実は競輪場がわの駐車場で、ここの両側をずらっとソメイヨシノが縁どっている。 満開のこの日、自動車からおりただけであっという間にお花見気分にさせてもらえた。 |
伊佐沢の久保桜 樹齢約1200年のエドヒガン。 国の天然記念物。 現在樹勢回復中だ。 満開だったんだけどな〜。 いやでも切られた枝が目立つ。 釜の越桜 樹齢約800年のエドヒガン。 痛々しいよね、この姿。 勝彌桜と二世桜がいて、やっと桜っぽくなる。 足元には義経が兵糧を炊いたかまどという 伝説のある大きな石が3つ立っている。 公園はこんな感じ。 のんびりお弁当食べている人もたくさんいた。 薬師桜 樹齢約1200年のエドヒガン。 あいかわらず、盆栽みたいな桜だ。 三度目にしてやっとじっくり見た幹。 意外に太くて、盆栽返上。 草岡の大明神桜 この角度からの大明神桜は初めて。 貼り紙の撮影スポットという文字にひかれて 行ってみて正解だった。 桜の大きさが改めてわかる。 こっちがいつも見る駐車スペースがわの姿。 で、これが正面。 行ってみるとわかるが、 ホントに農家の畑の真ん中にある。 |
4月27日 今年は曜日の配列が悪く、GWの前半はうまい具合に長い連休にはならなかった。 そのおかげで無理やり遠出をしないで、最後の桜めぐりをしよう、ということになった。 今桜が満開なのは、新潟より北か、さもなくば標高の高い地域である。 探すと、ありました、満開の有名どころ。 置賜桜回廊だ。 2012年の5月に行って、すっかり終わりかかっていた桜を見て以来である。 三度目となると、勝手知ったる桜回廊で、もはや小さな桜を拾う気にはならない。あ、いや、いちいち桜たちを拾って歩くのも楽しいのだけれど、今回は有名どころをかいつまんで見てまわった。 置賜桜回廊は、山形県の置賜地方を走るフラワー長井線沿いの南陽市、長井市、白鷹町にわたる桜の名所の総称で、樹齢1000年以上の桜の木が何本もある。 パンフレットはこれらの古木を古典桜、と呼んでいた。 その古典桜のうち、今回は伊佐沢の久保桜、草岡の大明神桜、その近くにある薬師桜、最後に釜の越桜を見ることにした。 さて、最初は伊佐沢の久保桜である。 ナビの案内の通りに進むと、また例のこどとく建設会社の資材置き場をお借りしました的な駐車スペースに導かれ、資材と資材の間に駐車させられた。満開というから、見物人も多いが、それでも渋滞はしていなかったので、東北の桜はのどかなものである。 学校のグラウンド周りの桜が綺麗に咲いているのを見ながら進むと、屋台やらお土産屋やらが並んでいる道になり、少し進むと久保桜だ。 さあ、前回は葉桜になってしまっていた久保桜、今回は? あらららら〜。 なんだか、みすぼらしい桜が広場の中心に立っていた。 バッサバッサと枝を切り落とされて、花の咲いている枝がほんのちょっとしか残っていない。 おととしは花が終わってしまったからさみしい状況なのだと納得した姿だったが、今回は満開の状態でこのありさま。 ここまで枝を切り落とさないと樹勢回復はできなかったのだろうか、と気の毒になるくらいスカスカの状態だった。 満開でこれではあまりにも悲しい。 それでも、久保桜の周りには若いソメイヨシノがたくさんあって、今まさに満開状態だった。 その満開の力に支えられて、久保桜ばあちゃんの元気が蘇り、またふんわりとした姿を見せてくれるように祈らずにはいられない。 咲いている花を見ると元気。 見上げてみる。 若い木はこんもりと満開。 次に向かうのは、釜の越桜。 こちらもおととし、葉桜になりかかっているからスカスカに見えたと納得した木だけに、ちょっと心配になった。 心配は的中した。 もう、ほとんど桜ではない姿に成り果ててしまっていた。 かろうじて少しだけ花のついている枝があるので、桜なんじゃないかな〜と推測ができる程度である。 満開の勝彌桜と二世桜が背後にあるのでどうにか桜の名所としての面目は保っている感じではあるのだが、これはむしろ痛々しい。 樹勢回復のためとはいえ、これほどの大手術が必要だったのだろうか。それほど釜の越桜は瀕死だったのだろうか。 2005年の姿を今いちど確認したが、確かにそれほど豊かな桜ではなかったが、もうちょっと花はついていた。 久保桜にせよ、釜の越桜にせよ、これほど桜がブームになる前に見ておいてよかった。特に久保桜は、我々が見たほどの桜に戻るまでには我々の命のほうが尽きてしまうだろう。 他の桜についても、我々のあとから見る人たちに、心無い人が踏み荒らしたからこんなみすぼらしい桜しか見られなくなったんだ、と思われないように、大事に見守りたいものだ。 花の数も少ないかな〜。 以前来た時に気がつかなかったのだが、釜の越桜から遊歩道が伸びていて、歩いて薬師桜に行くことができる。 薬師桜は県道沿いの民家の間にある小さなお堂の前にある桜なので、見るためには路駐ダッシュしかないと思っていた。 今回は遊歩道を歩き、畑のエンゴサクを見たり民家の庭の立派な桜を見たりしながら5分かからずに薬師堂に着く。 路駐じゃないのでゆっくりと見ることができる。 はじめて薬師桜の周りの木道をぐるりと回ってみた。 ぐるりと回ってみたら、意外にも幹が太くて、しかも真ん中にぽっかり穴が開いていることが分かった。 こんな住宅街や道路沿いじゃなかったら、もうちょっと大きくなれたかしらん、などと思ったりして。 釜の越桜から薬師桜への道。 幹に空洞あります。 ちょうどお昼となったので、我々は例によって近くの滝でも見ながらおにぎりを頬張るつもりだった。 毎回三階滝という長井市にある滝に行くのだが、今回は別の滝に行ってみることにした。白鷹町にある滝で竜門の滝という。瑞竜院というお寺の奥にある滝というから、それほど行くのも大変じゃないだろう。 滝の前で昼食にするつもりだった。 ところが、その滝、どうも水害か何かにあったらしく、道が崩落していた。昼食はまたしても、適当な河原でするハメになった。(滝のレポートはこちら)かろうじて滝を見ることはできたのだが、この春は滝めぐりを災害に阻まれるケースが続いている。 再び桜回廊に戻り、最後に草岡の大明神桜を見ることに。 午後3時を回って少し肌寒くなって、駐車スペースに駐車している自動車もまばらだった。 大明神桜は見事に開いていて、今日見た古典桜たちのなかで一番立派だった。 この桜を最後にしてよかったなぁ。 そうでなかったら、長く生きることにちょっと絶望したかもしれないものなぁ。 民家の畑みたいな場所にスックと立っている姿は実に巨大だ。 幹回りで日本2番目というが、樹高でもかなりのものじゃないかしらん。 いつものとおり、黒い石碑のある正面とおぼしき場所まで行って写真を撮影していると、あれ、ヘンな貼り紙があるぞ。 正面からさらに先に進んだ場所に撮影スポットがあるという。 畑1枚向こう側といった感じの場所でそれほど遠くではない。 そこまで行って桜を振り返ると、おお、本当にここから見た大明神桜が一番見事じゃないか。 今まで見上げるばかりの背の高い桜だという印象が強かった大明神桜だが、ここから見ると横にも大きく枝が張り出しているのが分かる。 しかも、背後に杉の林があるので、桜のピンクがよく映える。 よくここを教えてくれたなぁ。 畑を踏み荒らされる危険もあるのになぁ。 地元の人に感謝である。 公園化されたりしないで、民家の畑の真ん中にあるこの桜が一番樹勢が豊かであるのがなんとなく皮肉な感じがする。 が、最後に1200年生きたって見事に花を咲かせられるのよ、と胸を張っている姿を見せてもらえてよかった。 置賜桜回廊の古典桜たちはしばらく静養が必要だろうが、あと20年くらいしたら、今よりきっと元気になっているだろう。 千年も生き続けてきた力をここで失うことなく、これからも咲き続けていてほしいものである。 |
そんなこんなで、2014年の桜追いは終了した。 有名桜を見にいったわりに、どれといって印象に残った桜はなかった感じがしないでもない。 しかも、樹勢回復というキイワードに一喜一憂させられた桜追いになった。 桜がこれからも咲き続けるために、桜のためにできることを人はしなくてはならない。桜は人とともにある樹木だ。 ただひたすら、きれいだね、と見上げられる一週間のために、桜は生き、人は桜を愛する。 花は人のためにあるんじゃないよ、という意見ももちろん頷けるが、こと桜に関してはとにかく人と関わりが深すぎる樹木だと思う。 それだからこそ、今ある桜をここで殺してはならない。 そのためにできるだけのことはしようよ。と、わずかばかりの募金しかできない私は思うのだった。 |