そのA「飛竜」賀老の滝へ2007年初夏の北海道B
   インクラの滝 


インクラの滝へは、現在落石等の危険のため、
立ち入りは禁止になっています。
我々は自己責任で行きましたが、
決してお勧めできるものではありません。





インクラの滝
別々川の滝なので、
別々の滝とも言う。

インクラとは、
かつて御料林だったこのあたりの木を運ぶ施設
インクラインからきたものらしい。
てっきりアイヌ語かと思ったが、
そうではない。
雨だったわりに、水量は少ない。
この写真は、最も近づいて撮影。
がんばれば滝のかかる岩盤まで
行けそうだったが、
飛沫がすごすぎて断念。



やや離れて撮影すると、まん前に大岩が入る。
だが、この図が一番インクラの滝らしい気がする。
実はどの写真集を見ても
滝に向かって左側に
岩盤から湧き出ている水の流れが1本
あるはずなのだが、
この日はシミしかなかった。




大岩の大きさはこんなもん。
岩の左側にダンナがいる。
この岩、上から落ちて来た岩ですかねぇ。




上の写真だと滝の大きさが
かえって分からなくなるかも。
赤い矢印の先に100円雨合羽装着の
ダンナがいる。
ここから岩をよじ登って滝に近づく。




落ち口。
ほぼまっ平らに見えるが、
古い写真などは、水流を大きく2つに分ける
岩が上流にぼこっとあるので、
それが落ちてしまったのかも。
なんか、まっすぐに落ちずに
末広がりに落ちているのも、
古い写真とは印象が違う。




滝つぼ、というか水の落下地点。
沢山の大岩が水を受け止めている。
どんどんと岩が増えて行って、
滝の落差が小さくなっている
ような気さえしてくる。


2007/7/15   インクラの滝(落差45m)
         
午前8時過ぎに日本海側の島牧村にある賀老の滝の駐車場を後にした我々は、2台のカーナビに導かれながら内浦湾(噴火湾)のさらに向こう太平洋沿いの白老町にあるインクラの滝を目指すことにした。
そこまでの間にいくつも滝があるのだが、今回は百選の滝2つに標準を絞っている。その2つの距離が離れていようがなんだろうが、1日に回れる距離なら行ってしまうつもりだ。
ところが、日本海を離れて、県道523号に入ったあたりで雲行きがおかしくなった。いきなり黒い雲が上空に現れたのである。振り返ると日本海側はとても明るくて青い空青い海が見えたりするのだが、前方はどう見ても雨だ。
こりゃあ、太平洋側は台風の影響で雨かもしれない。
牧場の真ん中を通る県道523号にはほとんど自動車も通らずに、見えるのは牛くらいのものだ。が、どうも観光客馴れしているらしいキツネが姿を現した。自動車に近づいて来るのでとても危ない。とりあえず写真だけ撮影して何も与えずに通過。
  
なんかくれ〜。やらないよぉ。
それにしても、びしょ濡れのキツネの写真でもわかるように、かなり激しい雨になってきていた。
この時点ですでにインクラの滝へは行けないと半ば諦めていた。というのも、インクラの滝へは大岩のゴロゴロする道を約30分歩かなければならない。しかも、実は少し前からインクラの滝への道は落石等の危険があるために立ち入り禁止になっている。そこをあえて自己責任で行ってしまおうというつもりの計画だ。だが、そんな場所に激しい雨の時に行くほど無謀きわまりない人間でもないつもりだ。
さりとて、インクラの滝に行かなかった場合の計画はたてていないので、とりあえず高速道路に乗って、白老を目指す以外に無かった。
果たして、高速道路に乗っても、雨になったり晴れてみたり、激しく天候は変化した。ただ、今雨が降っていても、目指す方向は明るかったりするのである。
もしもっと激しく雨が降り続いていたら、そのまま札幌方面まで行ってしまって、二度目ではあるが比較的手軽に見ることができる百選の滝、アシリベツの滝を見に行ってもよかったのだ。
だが、しっかり高速を白老で下りてしまった。まだぽつりぽつりと雨が降っている状態である。まあ、行かないまでも、入り口くらいはカメラに収めたいから。
白老で下りて、そういえば昼食のおにぎりはあるものの飲み物が無いのに気がついた。どこかのコンビニでお茶でも買おう。そう思って商店街方面に自動車を進めたところ、あら、100円ショップがある。都合がいいじゃないの。
で、あらまあ不思議、カゴの中にお茶と一緒にビニールの合羽が2人分入っているじゃありませんか。ついでに川を渡渉するかもしれないなんて、ビーチサンダルまで入っているじゃありませんか〜。
何度も書く。まだ雨、降ってますってば。
どうしよう、行くのか行かないのか、迷っているような口調で話しながら2人とも行く気満々だ。いや、あそこに100円ショップがなかったら、たぶん行っていないと思う。神様のめぐり合わせなんだと思う。

そんな言い訳をしながら、カーナビの示すとおりの道を進んで、JR室蘭本線社台駅近くの林道に入る。牧草をはむ馬なんかいたりして、なかなかいい感じの道だ。相変わらずの北海道の林道で、アップダウンもカーブもない、未舗装なだけの快適な道である。
 
雨なんで暗いけど、馬です。
最初平らだなぁと思っていた道もだんだんと山っぽくなってきて、両側の木々が迫るようになってきた。雨はぽつぽつどころか、かなり激しくなってきている。
しばらく走ると、左側にけっこう広い駐車場と仮設のようなトイレのある場所に出た。軽トラが1台とまっている。
はて、ここがインクラの滝への入り口なんだろうか。
あらかじめ調べておいた資料には、滝見台みたいなのがあるはずなのだが、ここにはない。ウロウロしても仕方がないので、軽トラの運転手のおじさんに聞いてみることにした。
ここからすぐ先に数台とめられるスペースがあって、そこで林道は通行止めになっているとのこと。インクラの滝へは立ち入り禁止になってはいるが、行けるよ、と言ってくれた。
地元の人のオッケーが出たような気分だった。
駐車場からほんのちょっとだけ先に簡単な木組みの滝見台のある場所に出た。確かにそこから先の林道はゲートが閉じられていて行くことができない。
 
滝見台。まず滝は見えない。しかも、誰のものかわからないリュックがポツリとあって、怖いので登らなかった。
雨がざーざー降っている。
ま、とりあえず昼食にしよう。自動車の中でおにぎりを食べ、雨が小止みになるのを待った。が、やみそうもなかった。
仕方がなかった。見ずに帰るか、雨に濡れるか、2つに一つである。
となると、前者を選ばないのが我々だった。
ああ、なんていうこと、無謀きわまりない人間にランクが下がってしまった。
どうぞみなさん、これを読んで雨でも大丈夫な場所だとか、危険の無い場所だとか思わないでください。
わざわざ新潟から高い航空券を使って行ったのが惜しかっただけですぅ。

そんなわけで、100円の雨合羽を着て、できるだけ手軽な荷物で出かけることにした。
滝見台の裏あたりに看板があり、インクラの滝の説明と滝へのアプローチの説明がある。さらに入り口には立ち入り禁止になっているとの看板もあった。
自己責任で突破である。
 
かつて、行けた時に必要だった「ご注意」

 
立ち入り禁止の貼り紙。

   
  
赤い矢印の先が入り口。100円雨合羽装着で出発。
その入り口を突破して、いきなりびびった。道が背丈ほどもあるクマザサで覆われている。右からも左からもクマザサ。こりゃあもし雨がやんでいたところで、葉っぱについていたしずくで濡れ鼠になったことだろう。100円雨合羽ありがとう。
川まで到達すると、砂防ダムになったのだが、いくつも踏み跡があり、どっちがどっちかわからなくなってしまった。とにかく川の上流に進む。
 
いきなりほぼヤブ漕ぎ。白いのが雨合羽を着たダンナ。

 
川に着いたところにあった砂防ダム。ほぼヤブの中。
夏草が繁茂してはいるのだが、よーく探すと川を右側に見る形で踏み跡が上流に向かってついているのがわかる。渡渉があると思ったが、ついに1度も本流の川は渡らずにすんだ。
だが、この道のり、思った以上にとんでもなかった。
雨のほうは、もちろん濡れはしたものの、うっそうと生えた木々のおかげでそれほど困りはしなかった。が、岩である。
本当に大きな岩がゴロゴロしていて、これを回避するルートがあちこちに分離している。このルートをとり間違えるとちょっと困難な道になったりすることもある。困難ではあるが、なんとか上流を目指せる道になっていることは確かだ。
30分ほどジタバタとササをかきわけたり、岩を登ったりしながら進むと、いきなり植物のない場所に出た。どうも大きく崩落した場所らしい。
滝自体にも崩落があったらしいのだが、滝へのアプローチでも常に落石の危険がある道であることは確かだ。
 
川を右に見ながら進む。

 
だいたい80%がこんな感じの道のり。あとの10%がヤブ。もう10%がもっとでっかい岩。

 
崩落地点。まだ崩れている最中みたいだった。
それからまたジタバタと15分ほど歩いて、目の前に巨大な岩が出現。これはどっちに行けばいいのだ?
右側に行って川の間の岩を飛びながら行くコースにも踏み跡があるし。しかし、よく見ると、左側の滑り台みたいになっている岩に滑ったような跡がある。どうやら左側から巻くのが正解らしい。巨岩と滑り台岩の間のわずかな足場をつかってよじ登り、巨岩の裏側からぬけると、おお、木々の間に滝の頭が見えた。
特徴的な岩盤の横のラインも見える。
滝さえ見えれば我々は元気百倍になる。そこから5分もしないで滝下にたどりついた。
 
木々の間にあの特徴的な岩盤が見える。
滝前はやはり雨だった。
いや、雨なんだか滝の飛沫なんだかさっぱりわからない状態だった。
だが、雨合羽の気持ち悪いこと。
とにかく脱いでしまう。
それから、滝前にドサンドサンと巨人が積み上げたような巨岩を行ける場所までよじ登ってみた。
うおー、すごいぞ、インクラの滝。
近寄ると飛沫でびしょ濡れになる。
末広がりに落ちてくる水が全部自分に向かって来る見たいだ。
滝もすごいんだが、この雨のなか、デロデロになりながらたどり着いた自分たちもとんでもないぞ。
いつもなら滝に感動するところなのだが、今回ばかりは自分たちに感動していた。

雨だし、飛沫もすごいし、危険な場所でもあるので、早々に滝前から退散した。とはいえ、20分近く滝前にいたのだけど。
ダンナの100円雨合羽は木だの岩だのにひっかかって、ボロボロですでに使い物にならない。帰り道に大雨でも降ったら大変である。
行ったとおりのルートを通ったのか通らなかったのか、そのへんはさっぱり分からないのだが、とにかくがんばって帰路を急ぎ、40分で戻って来た。行きが50分だったので、下りとはいえかなり急いだと思う。
自動車にたどりついたのは、午後1時35分。全行程2時間の滝行きだった。
まだしっかり雨は降っていて、全身びしょ濡れの我々はどうせ人目も無いことだから、自動車の中で着替えてしまった。上から下までずぶぬれになったのは、2005年の夏に福島の竜の門の滝で夕立にあって以来である。これじゃあ川に落ちたも同じである。
幸い旅行者なので着替えはきっちりあった。
下の駐車場に戻ったらまだ軽トラがとまっていて、教えてくれたおじさんもしっかりいた。もしかしたら、我々を心配して待っていたのかもしれない。だとしたら、ありがたいことだ。
交通
  インクラの滝  最寄ICは道央自動車道白老IC。もしくは、苫小牧西IC。国道36号線に出て、ちょうど苫小牧市と白老町の境目にある林道に入って行く。白老ICがわから行くと案内看板が見えづらいのだが、苫小牧がわから行くと曲がり角に案内看板が出ているはずだ。線路を渡り、高速道路をくぐると完全に林道になり、未舗装になる。ここにも案内があるので、安心できる。
ここから先は1本道なので間違わない。
とにかく行き止まりまで行けばよろしい。
林道がゲートによって閉められている手前に滝見台がある。
その滝見台の後ろ方面にいくつか案内看板がある。いかにもという感じの立ち入り禁止の貼り紙のあるあたりが入り口だ。
そこからヤブ漕ぎ、大岩登り等を経て、1時間かからないくらいで滝前に出る。
とりあえず我々の行ったルートでは川は渡らない。滝を対岸から見るつもりであれば、渡渉できる準備も必要である。

ただし、
本当に危険な状況の滝であることを認識して行動してほしい
というのも、このレポートを書くにあたって、いくつもの写真集の古い写真を見返したり、他の滝好きの方のサイトを見たりしたのだが、我々の見た滝とは形状が違う。つまり、崩落し続けているのである。
ある程度の準備と覚悟、それからインクラの滝に行くという告知を家族にしてから行ってほしい。
まかりまちがっても、雨の日は行かないほうがよい。地盤が緩んでいる可能性が高い。
決して我々の真似はしないように。
我々は幸いにも何もなかったし、もし何かあったとしても、ラッキーなことに軽トラのおじさんが目撃者になってくれている。
そうそうラッキーは転がっていないと思ってほしい。
実は、写真を検証していて、ダンナが横にいる大岩がごく最近落ちたものかもしれないと分かって、後になって鳥肌をたてているのである。
この後、実は札幌の宿に行くまでに滝をいくつか見る予定だったが、もうどうでもよくなってしまった。さっさと風呂に入ってゆっくりしたい気分だ。
雨に濡れてダメになった靴を買い換えてから(買い換えるまでの間、100円のビーチサンダルが活躍してくれた)本来の目的である墓参りを済ませ、まだ明るいうちに札幌に到着。あらかじめ調べておいた日帰り温泉に入って、疲れを癒した。(温泉のレポはこちら
そこからススキノにごく近いビジネスホテルに行き、ススキノの居酒屋で夕食。ああ、北海道の海の幸、美味でした。
ちなみに、そのビジネスホテルにはコインランドリーがあったので、雨に濡れた衣服を洗濯して乾燥させてしまった。
翌朝は早々に起きて、中央卸売り市場の場外売り場でお土産を買って、午前10時半に出発する新潟便に間に合うように千歳空港に向かった。
千歳空港のそばには名水百選の水であるナイベツ川湧水があるので、立ち入り禁止の湧水を再現しているという公園に寄って見てこようと思ったが、公園の開園時間がまだだった。職員は来ていたのでかけあってみたが、決まりなので、という一言で入れてもらえなかった。ま、千歳ならこれから何度か行くだろうので、あっさりと諦める。
まだ少し時間があったので、ちょっと支笏湖まで足を伸ばしてから空港に向かった。
空港近くのレンタカー店に行き、北海道にいる間めいっぱいお世話になった「道子」ちゃんとお別れする。いったいどこに行って来たんだと疑われるくらい、泥だらけになっていた。全部インクラの滝のせいです。
    
  
午前6時の場外市場。名水ふれあい公園は午前9時でなければあけてくれません〜。
 
今回の北海道の最後の風景、支笏湖。きれいな青だった。
さて、付け加えになるのだが、この日は7月16日。新潟便の出発は午前10時30分。
我々は出発ロビーまで行き、今まさに飛行機に乗り込もうとしている時だった。ロビーがざわつき、出発案内が定刻を過ぎても出ない。おかしいと思っていたら、新潟に震度6強の地震があったことがわかった。中越沖地震である。
遠い土地で住んでいる場所が大変なことになっているかもしれない、と思う恐怖を始めて味わった。
幸いにも我々の住んでいるあたりにはそれほどの被害もなく、家を守る猫たちも無事だった。
飛行機も小一時間滑走路の点検のために遅れたくらいで、無事に新潟に着いた。
今後、北海道の滝の思い出は、雨のインクラの滝と中越沖地震がセットになってしまうなぁ。
そんなこんなで、本当に忘れられない44時間滞在の北海道になった。他に目もくれず、ガンガン高速をすっ飛ばせば、44時間しか滞在しなくても、めぼしい滝が見られることも判明。いや、そんな判明しなくてもいいんだけど。
何はともあれ、無事に終わって本当によかった。

2007年初夏の北海道その@横滝、藻岩の滝へ
2007年初夏の北海道そのA「飛竜」賀老の滝へ


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