そのA秋保大滝へ2007年初秋の南東北BそのC鳳鳴四十八滝へ
   姉滝と妹滝 



姉滝
国指定天然記念物である。
長くなるがなぜ天然記念物なのかを説明する。
まず、落ち口の手前に甌穴のある滝があった。
その滝は、滝の後ろを侵食し続けて、
裏見の滝の形となった。
侵食部分が甌穴の下に及び、
やがて甌穴の底がぬけて、穴から水が落ちる
とても珍しい形の滝になった。
穴からの水と本来の落ち口の水との
二条の滝だったらしい。
とても珍しいので天然記念物になったのだ。
ところが、穴と落ち口の間の岩が崩落して、
穴が穴でなくなって、現在の形になってしまった。
と、いうワケで現在ではよくある形の滝になっている。
しかし、地形や地質の勉強にはもってこいの滝といえる。
もともと穴滝だったのが転化して
姉滝になったのかもしれない。



で、これが昔甌穴だった部分。
滝にはこういう形の落ち口の滝がけっこうあるので、
そういった形成のされ方をしているのだと
こんなところで勉強してしまった。



滝つぼ。
大きな魚が気持ちよさそうに泳いでいた。
もちろん禁漁区なんだろうなぁ。





妹滝
いもたき、とも、いもうとたき、とも紹介されている。
こちらは、「姉滝」と看板のあった場所からの
滝見台から見た横顔である。
恐らく、多くの人があの滝見台から見える
この横顔を姉滝と信じて
帰ってしまっているのだと思う。


こちらは、正面。
途中から角度が変わっていて、
直瀑の姉滝とはまた別の表情のある滝だ。



落ち口。
なだらかに下ってから、
一気に落ちていく感じである。



二口自然歩道から少しだけ遡った場所から撮影。
赤茶けた川底のところは滑らないので、
川に入って行けば右となりに姉滝が見えるはずだ。





ダンナの広角レンズで撮影。
右が姉で左が妹。
水に入らないと撮影場所が限られていて、
これがギリギリのツーショット。




上の写真を撮影しているダンナと二つの滝の位置関係。
この写真は2枚を合成しました。






二口自然歩道で橋に着く前にも名取川は
立派な滝状になっている。
落差は3メートルあるかないかだけど、
早瀬というより滝という流れだ。
2007/9/15   姉滝(落差15m)
            妹滝(落差15m)

今回の東北の滝めぐりは、どれもこれも自動車を降りて徒歩10分以内のお手軽滝ばかりを選んで計画していた。
もし時間に余裕があるのなら、片道徒歩50分という白滝に行ければラッキーという予定だった。
ただ、天候の関係で2日目に予定していた蔵王の滝たちを1日目に変更。つまりその分たっぷり時間が後ろに回って、すだれ滝を出た段階でこの白滝は無理だろうと思っていた。
すだれ滝をあとにして、二口(秋保)街道を山形方面にさらに進む。
かなり広い道だったはずなのに途中からいきなり道が未舗装になり、林道のようになってしまった。しかも、「キャンプ場までは通れます」なんて看板が出ている。つまり、その先は山形まで抜けていないってことかしらん。
心配しながら二口キャンプ場を通り抜ける。大丈夫、向こう側から自動車が来ているっていうことは、この先も進める。
未舗装とはいえ、自動車が楽にすれ違える道なので、それほど苦労なく姉滝と大きな看板が出ている場所に来た。
駐車スペースは路肩だが、駐車すると通行が困難になるわけではない広さがある。
  
滝見台への入口。
ちょっと道を下ると、もう滝が見えた。あ、あれが姉滝なのね。
なんだか木々の間から見えているので全貌がよくわからない。
それに隣に妹滝というのがあって、ほぼ並んで落ちているはずなのだが。
  
ゆるやかに下りて行く。

  
木々の間に滝が。
道は少しすると階段になり、下に下れるようになっている。そこまで行けば両方の滝が見られるんだろうか。角度的に無理な感じもするのだが。
ちょっと滑る階段を下りて行くと、途中でぶっちり切れていて、岩の上に飛び降りなさいという感じになっていた。不親切だ〜。
    
  
階段は濡れて滑るし、途中で岩になってるし・・・。
行ってみると、予想どおり、もう一方の滝の落ち口の上である。確かに木々の間からしか見えなかった滝は横顔を覗くことができるのだが、もう一方は落ち口しか見えない。落ち口では滝にならないじゃないの。
しかし、どう見ても滝下に下れる道は無い。
  
  
手前が落ち口だけしか見えない滝。向こうの滝は横顔だけ。
ヘンだなぁ。写真集にはちゃんと両方の滝が出ていたし、確か姉滝は綺麗な直瀑だったはずだし。
なんだか納得いかないまま自動車に戻った。
自動車に乗せてある写真集を見てみると、真っ先に目に入った滝のほうが妹滝とわかった。落ち口しか見えないのが姉滝である。
おいおい、じゃあこの入り口の看板には偽りがあるじゃないの。姉滝の落ち口から見える妹滝としなくちゃならないでしょう。
国の天然記念物というから、保護のために見られないようにしたのだろうか。いや、看板のすぐそばに設置されている説明板によると、天然記念物になったのは、甌穴の底がぬけて穴から落ちる形になったのが珍しいからとある。その甌穴も先端部分が崩れ落ちたので今は穴から落ちているわけではない。つまり、保護すべき形はすでに無くなっているのである。
ヘンだなぁ、おかしいなぁと思いながら、仕方がないと自動車の中でこれからの計画をたてた。
この先の白糸の滝に行くか行かないか。もう時間は3時少し前。これから少し北にある鳳鳴四十八滝を見て宿のある東鳴子温泉に行かなくてはならない。東鳴子は少し遠いので高速道路を利用しても時間がかかるだろう。この先の二口街道は道が未舗装で思ったほどすぐには白糸の滝にはつかないはずだ。
仕方がない、白糸の滝も諦めるか。
明るいうちに東鳴子に行ければ、川渡温泉の近くにある白糸の滝を見てしまうこともできるし。
そう結論づけて自動車をUターンさせた。
ところが、少し走ったところで遊歩道っぽい地図の書いてある看板を発見。
あ、どうもあの遊歩道は川まで下っているらしいぞ。
通り過ぎてしまったのだがまた戻って看板を確認した。
  
この看板こそ姉滝への道。
二口峡谷自然遊歩道と書かれている看板には、道が名取川まで下っていって、川を渡り、山を登って二口キャンプ場に至る図が描かれている。
その名取川を渡る橋からすぐに姉滝が見えるみたいにもかかれているじゃないですか。
なんだ、あの写真はこの自然歩道から撮影したものなのか。
もちろん、すぐさま自然歩道に下りた。
ちょっと滑りがちな道を3分も下らないで川に到着し、橋に出た。
喜んで橋の上に立ち、姉滝のある上流を見る。
  
すぐに名取川に出る。

  橋から上流を見て考察。
あららららら、見えないじゃないの。
かろうじて妹滝だけが遠くに見える。
姉滝〜。結局見えないのか〜。
ところが、ダンナが「行けるなぁ」と判断。
なんと、橋のたもとには上流がわにも河原におりる階段がついていて、いかにもここから上流に進んで姉滝を見てね、という感じになっているのである。
河原に下りて見ると、実におもしろい景観だった。
川底がきれいにみがかれた感じの茶色いなだらかな縞模様になっている。滑るかしらん、と思ったが、その茶色い部分は砂っぽい感じで滑らなかった。
水か少なく、浅い部分を選べば濡れずにかなり進めた。
  
いざ、遡行開始。

  
浅い所を選んであちこち行く。遠くに妹滝が見える。
妹滝の少し手前に来たところで、どうやっても靴を濡らさないと先に進めない場所に出た。川底は滑らないし、イザとなったら靴を脱いではだしになってもいいかな、と思ったが、ダンナは右側の草ぼうぼうの斜面を選択。斜面といっても崖ほどの角度はないので、草さえ厭わなければ足場は充分確保できる。
なんとなくではあるが、そうやって進んだ人もいるのかもしれないくらいのわずかな踏み跡もあるようだった。
万事休すといった感じの大岩もあったのだが、うまく足場になる流木がひっかかっていて、よじ登ることができた。
    
  
川底は茶色と黒の縞。あまり滑らない。大岩を乗り越えて近づく。
その大岩をよじ登ると、正面に姉滝が見えた。
おお、見事な直瀑。
やっぱり滝は下から見ないと。
すぐ隣に妹滝もある。本当に並んでいる。ここまで来ないと並んだ姿は見られないのだ。
足場は濡れていてちょっと滑りやすいのだが、それでもここまで来てよかった。
天然記念物になったという、昔甌穴だった落ち口の様子もよくわかる。
それに、水のなんて綺麗なことか。
滝つぼの底まで見えて、30センチくらいありそうな魚が泳いでいるのが手にとるようにわかる。
それにしても、なんで二口街道にある姉滝の看板はあんな場所にたてて、あんな無用な滝見台を作ったのだろう。
あんなもん作るくらいなら、この二口自然歩道のほうをここまで伸ばせ。そのほうがずっと地形の勉強になると思うけど。
さて、滝も堪能したので、戻ることにした。
ダンナが先に滑りやすい岩場を行く。
来る時にここで苦労したんだよなぁという大岩を慎重に下りていたダンナがいきなりドサっと落ちた。げ、落ちた!?
なんだかジタバタしている。
「大丈夫っ!?」
「大丈夫。眼鏡が」
「眼鏡?壊れたの?」
「あった、あった。割れていない」
「カメラはっ!?」
ダンナの身よりカメラを心配する女房もひどいもんだが、何よりお高いのでご勘弁ください。
カメラもちゃんと動いて、ダンナもちょっと体を打ったくらいだった。
何が起きたのかと思ったら、登る時に足場にした流木がバキっとはずれたのだそうだ。登る時には私もとてもガッシリとしているとさんざん確認した流木である。体重のかかる角度ではずれたのかもしれない。
その流木がなければ登れなかった大岩だが、下りる時はずるずる滑ればいいので、私は無事に下りられた。
あとで分かったのだか、この時どう打ち付けたのか、ダンナの持っていた三脚の足の1本がつぶれてしまって使用不能に。この後のダンナの写真はほぼ手持ちです。
なんとか戻って、橋まで来た。
橋の付近に栗を丸々とさせてとんがり部分をなくしたような実(たぶんトチの実)がたくさん落ちていて、これを狙って熊や猿が来るかもしれないなぁとちょっと怖くなった。
そこまで来たら我々よりちょっと若いカップルが自然歩道を下りて来た。あ、よかった、河原を歩いているところを見られなくて。あっちにも行けるなんて思わせたら、無駄に怪我させるかもしれないし。
別段犯罪をしたわけではないのだが、そそくさとその場を去った。
それにしても、お手軽滝ばかりのはずだった今回の滝めぐり、結局また冒険してしまった。
どうも滝めぐりには大なり小なりの冒険はつきものらしい。
これからは覚悟して、装備一式自動車に積んで行こう。

    そのC鳳鳴四十八滝へ
交通
  姉滝、妹滝  秋保大滝レストハウスからさらに山形方面へと県道62号(二口(秋保)街道)を進む。途中、秋保ビジターセンターあたりからは未舗装になる。この先は季節や天候によって通行止めになる可能性があるので注意。
未舗装の道をしばらく進む。左側(名取川方向)を注意して進むと、本文中にある二口峡谷自然歩道の看板があるので、そこに駐車。自然歩道で川まで下りて、橋の手前がわのたもとから川を上流に進む。10分も進まずに滝前に着く。
水量にもよるが長靴などがあれば、川の中に入り、もう少し近寄った形の姉滝妹滝のツーショットを撮影できると思う。
長靴が無い場合は岩を登るので軍手は必携。
ちなみに、これより上流の「姉滝」と書かれた看板からの滝見台からは、妹滝の横顔と、姉滝の落ち口しか見えない。

2007年初秋の南東北@蔵王エコーラインの滝(三階滝他)
2007年初秋の南東北A秋保大滝周辺の滝
2007年初秋の南東北C鳳鳴四十八滝
2007年初秋の南東北D鳴子付近の滝(白糸の滝、不老の滝)
2007年初秋の南東北E白糸の滝、七ツ滝

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